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第十二章

桃色の小さなスキットル

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 作戦会議は二時間ほどで終了した。

 当初は盗賊団のアジトに、《イサナ》から誘導弾を投下して一気に殲滅する作戦も検討したが、アジト内には拉致被害者がいる事から断念。

 結局、エラを警戒しながら正攻法で戦う事になった。

 会議が終わり、明日に備えて休もうとしたとき……

「北村海斗君。ちょっといいかしら?」

 アーニャに呼び止められた。

「なんでしょう?」

 やっぱり、お説教する気か?

 ん? 彼女の手あるのは、桃色の小さな金属製水筒。これは、スキットルとかいう物では……

 という事は、あの中身は酒!

「どう? 今から甲板に上がって、一杯、付き合わない? 君もいける口でしょ」

 ううむ。明日に備えて寝なければならないのだが……

「それとも、オバさんが口をつけたものなんて嫌かな?」

 そんな事は考えてもいないけど……なにより酒に罪はない。

「いえ……そんな事はありませんが……ちなみにスキットルの中身はなんですか?」
「リトル東京から持ってきたウイスキーよ。このスキットルで最後だけど、一人で飲むのはもったいないなと思ってね」

 リトル東京では、ウイスキーを作っているのか? そういえば、カルカでも紹興酒シャオ シン チュー作っていたな。ナーモ族の酒も悪くないが、久しぶりに地球の酒を……しかし、寝なければならないし……いや、このままでは、緊張して眠れないかもしれない。

 だが、寝酒で緊張を解せば、ぐっすりと眠れる。

 ここで誘いに乗って、酒に付き合うのは正しい行動。

 自己正当化作業終了。

「いいですね。付き合いましょう」
 
 そう言った途端、左右の腕をガシっと掴まれた。

 え? え?

 右腕にミールが、左腕にPちゃんがしがみ付いていた。

「カイトさん。何につき合うのですか?」
「ええっと……」

 いや、まて! 僕は酒に付き合うだけで、オバさんは趣味じゃないから……などと口に出して言うのは失礼だし……

「ご主人様。明日は早いのです。お酒はいけません」

 戦闘開始は、昼だからいいじゃないか……

「カ・モ・ミールさん。心配しなくても、彼を盗ったりはしないわよ。それより、あなたもつき合わない?」

 ミールの手が緩んだ。

「いいのですか? あたしまで」
「ええ。元々、あなたにも声をかけるつもりだったのよ」
「そういう事でしたら」

 しかし、Pちゃんの手は緩まない。

 アーニャはPちゃんの方を向く。

「大丈夫よ。この小さなスキットルを三人で分けたら、味見程度にしかならないから。そんなに心配なら、チェイサーをたっぷり用意してくれる」
「分かりました」

 Pちゃんも手を離した。

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