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第十二章

カミラ。復讐の誓い。

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「薬はもう完成したのですか?」

 僕の質問にカミラは首を横に振る。

「今、丸薬を乾かしているところ。後、十分ほどで終わるから、もう少し待っていてね。それから、あなた達。協力してくれたお礼に教えてあげるけど、明日の昼までにこの町から逃げ出しなさい」
「なぜですか?」
「わけは言えない。だけど、明日の昼には大変な事になるの。それまでに逃げてほしいの」

 明日の昼には盗賊団がやってくるのか。それにしても、このカミラって人……良い人だな。

「カミラさん。聞いていいですか?」
「なあに?」
「あなたは、犯罪に手を染めるような人には見えない。なんで、こんな事をするのです?」
「そうね。私も本当は人に危害を加えるような事はしたくないの……ああ! エラは別よ。あいつは人を痛めつけるのが大好きな変態だから」

 知っている。

「でもね、私は復讐しなきゃならないの」

 復讐?

 自分を陥れたのが、ミールだという事を知ってしまったのか?

「私は、帝国に復讐してやるのよ」

 え? ミールに復讐するのではないの?

「私は元々、帝都で薬師をやっていたの」

 それも知っている。

「ある日、私に帝国軍から依頼が舞い込んだのよ。魔法回復薬を作ってほしいと。私は苦労の末に何とか薬を完成させたの。ところがその直後、私は冤罪で逮捕され投獄されたのよ」

 ミールを見ると、罪悪感に顔をひきつらせていた。

「どんなに無実を訴えても、信じてもらえなかった。私は終身刑を言い渡されて投獄されたわ。ところがある日、刑務所がゲリラに襲撃されたの」

 ゲリラ? 帝国内で反乱があったというのは聞いたけど、まだその時の勢力が残っていたのかな?

「刑務所には、ゲリラのリーダーがいたの。襲撃の目的はリーダーの救出。私は刑務所内でリーダーと仲良くなっていたので、ついでに救出されたのよ。でも、私を助けたのは、それだけじゃなかった。私が魔法回復薬を作れることを知って連れ出したのよ。ゲリラは帝国人だけでなく、ナーモ族の魔法使いもいたので薬師を欲しがっていたのよね。その後、私はゲリラ達と一緒にロータスの近くにまで逃げてきたわ。逃げる途中で、ゲリラ達から聞かされたの。私が投獄された後にあった事を」
「何があったのです?」
「別の薬師が、薬を完成させたのよ。でも、そいつは私の研究を盗んだのよ」
「なぜ……盗んだと?」
「そいつは、私の兄弟子だった男。でも、薬師としての才能はさっぱり。あいつに回復薬を開発できるはずないわ。私が投獄された後に、私の研究資料を盗んだのよ。そもそも、私に濡れ衣を着せたのもあいつだわ」
「そこまで……するかな」
「するのよ。あいつは、私のことを恨んでいるはずだから」
「何か、やったのですか?」
「プロポーズを断ったの」

 分かりやすい、恨みだ。でも、濡れ衣を着せたのはその人じゃないのだなあ。
 
「な……なんで、断ったのですか?」

 ミールはひきつった顔で質問した。

「無能なくせに、プライドだけは高い最低の男だからよ。あいつのプライドの源は才能ではなくて、皇帝の血筋というだけ。おまけに本当に高貴な血筋なのか疑いたくなるぐらいの醜男」

 顔で人を差別するのはよくないと思うけど……

「帝国は最初から、皇帝の血筋であるあの男に手柄を立てさせたかったのだわ。そのために、私に研究を命じた後、研究の完成間際で私を陥れたのよ。私が無実をいくら訴えても無駄だったはず。帝国がグルになって私を陥れただから。だから、私は帝国に復讐してやるのよ」

 凄い思い違い。たぶん、ゲリラも彼女を仲間に引き入れるために、色々とデマを吹き込んだのだな。
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