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第十二章

Pちゃんが捕まった?

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 成瀬真須美はさらに話を続けた。

『北村君。こんな物を仕掛けたという事は、私を追いかけて来る気かな? でも、残念ね。聞いての通り私達はこれから出発するの。それと、聞いていたと思うけど、このロータスの町は盗賊団に狙われているのよね。それを帝国軍は見捨てて逃げると言うから、私としても心苦しかったのだけど、君がそれを知ってしまったのなら大丈夫よね。君ならまさか、町の人達を見捨てたりはしないわよね?』

 う……

『それとも『こんな町どうなろうと僕の知った事ではない』とでも言う? 言わないわよね。君は優しいから。盗賊団が攻め込んで来たら町は大変よ。建物には火をかけられ、男は皆殺し、女は凌辱され、子供は連れ去られて奴隷にされる。君はそれを、見て見ぬふり出来るかしら?』

 で……できん……

『じゃあ、盗賊団を倒したら、また追いかけてきてね』

 くそ! こうなったらエラだけでも、この場で……

「Pちゃん。盗聴はもういい。それより、僕らの縄をほどいてくれ」
「分かりました」

 Pちゃんはベッドに飛びあがってきた。

 その時……

 ガチャ

 浴室の扉が開く。

「Pちゃん。隠れろ」

 小声で支持すると、Pちゃんは僕のポケットに潜り込む。 

 バスルームから出てきたのは、カミラ一人。エラは出てこない。

「あなた達、小さな袋を持っていないかしら?」

 袋? 何に使うのだ?

「巾着のような物が、いいのだけど」

 カミラは室内を見回す。今、テーブルの下を見られるわけにはいかない。PCやアンテナが置きっぱなしだ。カミラの気を逸らさないと……

「ああ! そういえば、上着のポケットに入っていたかな」

 テーブルの下を見られるぐらいなら、ポケットを探られた方がまし。そこに見られて困るような物は……いかん! Pちゃんが入っていた!

 と、気が付いた時には、上着のポケットに手を入れられていた。

「ん?」

 ポケットから出たカミラの手には、Pちゃんが握られていた。

 怪訝な顔をしてから、カミラはPちゃんをポケットに戻すと僕の耳に口を寄せる。

「可愛いお人形さんね。彼女へのプレゼントかしら?」
「え? ああ、そうです」

 そういう事にしておこう。

「ごめんね。彼女には見られないように、ポケットに戻しておいたから」

 え?

「袋というのは、プレゼント様のかしら?」
「まあ……そうですけど……なかったですか?」

 元々、入ってないけどね。

「いいえ、そんな大切な物は使えないわ」

 そう言って、カミラはミールの方へ向かった。

「ちょっと! なにするのですか! 人のポケットに……」

 カミラは、ミールの上着のポケットに手を入れて、巾着袋を取り出した。

「返して! あたしの財布! どろぼう!」

 いや、ミール。その財布は元々、帝国兵から君が盗ったものだろう。

「中身は返すわ」

 カミラは巾着から銀貨、銅貨を出してベッドの上に積み上げた。
 さらに、自分の財布から銀貨二枚を取り出してミールの前に置く。

「これでもっと可愛い財布を買いなさい。こんな男物の財布、可愛い女の子には似合わないわ」
「どうぞ、使って下さい。お姉さま」

 ミール……君はつくづくお金に弱いな……

「ところで、お姉さま。その袋を何に使うのですか?」
「薬を入れるのよ」

 魔法回復薬用か。袋を探しにきたという事は、もう完成したのか?
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