上 下
398 / 842
第十二章

ばれていたか

しおりを挟む
 僕はミールの方を向いた。

「ミール聞いたか?」
「ええ」
「という事は、あいつらバスルームで回復薬を……」
「回復薬を作るには大量の水を使います。あたしがこの部屋で薬を作るとしたら、やはりバスルームを使うでしょう」

 再び意識を盗聴器に戻す。

『エラはおそらく薬を切らしていたのだろう。だから、この町に来た。薬を手に入れる前なら容易にエラを始末できるが、薬を手に入れた後では手に負えなくなる。ナルセ。君のところのロボットスーツで奴を片付けられるか?』
『難しいですね。リトル東京では、ロボットスーツが二体撃破されています。カルカでは北村君がエラを倒していますが、方法が分かりません。魔力切れを狙うしか』
『薬が大量にある状況で、魔力切れは期待できない。奴が薬を調合する前に捕まえようと、町中に兵士を放ったが……そろそろ時間切れだな』
『時間切れ?』
『奴がレッドドラゴンの肝を入手した時間から計算して、そろそろ薬が出来上がる頃だ』

 なに!? と言うことは、そろそろあいつらバスルームから出てくる。

『もう、兵士達は撤収させて、出航する事にするよ。ナルセ。君も出航準備をしてくれ』
『分かりました』
『ところで、カルカにいる君の友達に、エラの倒し方を聞く事はできないのか?』
『北村君は優しいからきっと教えてくれると思いますが、それはやめておいた方がいいですね』
『なぜだ?』
『私がまだ近くいると分かったら、彼はきっと私を奪いにやって来ますわ』

 人聞きの悪い。奪うのはマテリアル・カートリッジだ。あんたじゃなくて……

『奪いにくる? その男は、君に惚れているのか?』
『ええ。彼がエラに捕らえられている時に、傷の手当てをしてあげていたのですが、その時に私に一目惚れしたのか、いきなりキスを……』

 ブホ! 嘘を着くな! キスは君の方から……ハっ! ミールの視線が厳しい。

「ミール! 嘘だからな。第一、僕はあの時縛られていたんだ。できるわけないだろ」
「ええ、分かっていますわ。あの女が嘘をついているという事ぐらい。でも、この状況であの女がこんな事を言うという事は……」

 な……なんだ?

「気が付いているのではないでしょうか? あたし達に盗聴されているという事に……」
「え?」
「つまり、あたしとカイトさんにわざと聞かせる為に、こんな事を言ったのではないでしょうか?」

 まさか? いや、盗聴器から電波が出ているのだから、気づかれる可能性は十分にある。

『あら? 船長さん。背中に何かついていますわ』

 ベリ!

 盗聴器の剥がされた音! 

『北村君。こんな物を仕掛けたのは君でしょ? 他にできる人はいないし……』
 
 ばれていたか。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

ロボリース物件の中の少女たち

ジャン・幸田
キャラ文芸
高度なメタリックのロボットを貸す会社の物件には女の子が入っています! 彼女たちを巡る物語。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

悠久の機甲歩兵

竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。 ※現在毎日更新中

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...