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第十二章

ばれていたか

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 僕はミールの方を向いた。

「ミール聞いたか?」
「ええ」
「という事は、あいつらバスルームで回復薬を……」
「回復薬を作るには大量の水を使います。あたしがこの部屋で薬を作るとしたら、やはりバスルームを使うでしょう」

 再び意識を盗聴器に戻す。

『エラはおそらく薬を切らしていたのだろう。だから、この町に来た。薬を手に入れる前なら容易にエラを始末できるが、薬を手に入れた後では手に負えなくなる。ナルセ。君のところのロボットスーツで奴を片付けられるか?』
『難しいですね。リトル東京では、ロボットスーツが二体撃破されています。カルカでは北村君がエラを倒していますが、方法が分かりません。魔力切れを狙うしか』
『薬が大量にある状況で、魔力切れは期待できない。奴が薬を調合する前に捕まえようと、町中に兵士を放ったが……そろそろ時間切れだな』
『時間切れ?』
『奴がレッドドラゴンの肝を入手した時間から計算して、そろそろ薬が出来上がる頃だ』

 なに!? と言うことは、そろそろあいつらバスルームから出てくる。

『もう、兵士達は撤収させて、出航する事にするよ。ナルセ。君も出航準備をしてくれ』
『分かりました』
『ところで、カルカにいる君の友達に、エラの倒し方を聞く事はできないのか?』
『北村君は優しいからきっと教えてくれると思いますが、それはやめておいた方がいいですね』
『なぜだ?』
『私がまだ近くいると分かったら、彼はきっと私を奪いにやって来ますわ』

 人聞きの悪い。奪うのはマテリアル・カートリッジだ。あんたじゃなくて……

『奪いにくる? その男は、君に惚れているのか?』
『ええ。彼がエラに捕らえられている時に、傷の手当てをしてあげていたのですが、その時に私に一目惚れしたのか、いきなりキスを……』

 ブホ! 嘘を着くな! キスは君の方から……ハっ! ミールの視線が厳しい。

「ミール! 嘘だからな。第一、僕はあの時縛られていたんだ。できるわけないだろ」
「ええ、分かっていますわ。あの女が嘘をついているという事ぐらい。でも、この状況であの女がこんな事を言うという事は……」

 な……なんだ?

「気が付いているのではないでしょうか? あたし達に盗聴されているという事に……」
「え?」
「つまり、あたしとカイトさんにわざと聞かせる為に、こんな事を言ったのではないでしょうか?」

 まさか? いや、盗聴器から電波が出ているのだから、気づかれる可能性は十分にある。

『あら? 船長さん。背中に何かついていますわ』

 ベリ!

 盗聴器の剥がされた音! 

『北村君。こんな物を仕掛けたのは君でしょ? 他にできる人はいないし……』
 
 ばれていたか。
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