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第十二章

絶対絶命……と思ったが……

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 これ以上ないくらい、マズい状況になった。

 なんで、ここにこいつらが……?

 後ろ手に縛られて、ベッドに並んで座らされている僕とミールの前にカミラが進み出た。

「君。日本人のようだけど、ナーモ語は分かるかしら?」
「ナーモ語は分かる」

 と、答えたけど、僕は今でも翻訳ディバイスなしにナーモ語は分からない。

 それはともかく、カミラは僕の事を知らなくて当然だが、僕を知っているはずのエラが、なぜ口を挟んでこないのだろう? てっきり『ここで会ったが百年目。ぶっ殺してやる!』とでも言って襲いかかってくると思っていたのだが……

 とりあえず、今のところエラはカミラの後ろから、僕を値踏みするような目で見ているだけだが敵意は感じない。

 カミラはミールの方に目を向けた。

「そっちの女の子はナーモ族だから、言葉の問題ないわね」
「え……ええ」

 ミールの声がひきつっていた。

 そうだろうな。今のところカミラは気が付いてないみたいだが、目の前にいる可愛らしい猫耳少女が、実はカミラを冤罪に陥れた張本人と知られたら……あまり想像したくない事になる。

「私の名前はカミラ・マイスキー。こちらはエラ・アレンスキー。彼女は帝国語しか話せないから、私が話をします。まず、最初に謝っておきましょう。これからお楽しみのところを邪魔してしまって申し訳ありません」

 え? 案外いい人みたいだな。

「私達は、事情があって帝国軍から追われている身。この部屋には一時的に身を隠していたのだけど、そこへ君達が来てしまった。だから、君達が大人しくしているなら、危害を加える気は、まったくないから安心して」

 いや、カミラ。あんたには危害を加える気はなくても、エラにはありまくりなんだけど……しかし、エラはなぜ黙っているのだろう? 返って不気味だ。

「見ての通り私達は帝国人だけど、さっきも言ったとおり帝国から追われる身です。よって、リトル東京の日本人ともナーモ族とも敵対するつもりはまったくありません。君達をこんな目に遭わせたのは、不幸な偶然の積み重ねです。無理かもしれないけど、悪く思わないでね」
「じゃ……冗談じゃありませんわ」

 声をひきつらせながらも、ミールは抗議する。

「こんな事をされて、『悪く思うな』なんて……」

 カミラが僕とミールの間に何かを置いた。

 これは……金貨? ベッドの上に金貨が五枚置かれていた。

「これは迷惑料です。私達は一時間ほどしたら、この部屋から出て行くので、それまで大人しくしていてくれから、もう五枚あげます」
「大人しくしてますぅ。お姉さま」

 お姉さまって……ミール……君って奴は……
 
「ねえ。カ……あなた、ここは大人しく、仲良くしていましょうね」

 ミールが僕にすり寄ってきた。身体が密着する。

「まって! ここで、そういう事は……」

 カミラが突然慌てだした。

 同時にエラが帝国語で何かを叫ぶ。

 そういえばこいつ、竜車の中でいちゃついたカップルに暴行したとか……

「きゃ!」

 ミールが、電撃を浴びてベッドの上に吹っ飛ぶ!

「ミ……!」

 いや待て。カミラにミールの名前を聞かれたら拙いかもしれない……

「やめろ! 彼女になにをする!」

 エラは僕の方を向いた。
 
 電撃を食らって、僕もミールの横に吹き飛ぶ。

 カミラが帝国語で何かを叫ぶと、エラは舌打ちをしてそれ以上はして来なかった。

 カミラは再び僕とミールの方を向き、ナーモ語で話しかける。

「君達。大丈夫?」
「な……なんとか」「大丈夫です。お姉さま」
「申し訳ないけど、エラの前でいちゃつくのはやめてほしいの。エラは病的なほど嫉妬深い女で、雷魔法の使い手。暴れ出したら、私でも宥められなくなるわ」

 カミラはチラっと、エラの方を見た。

「私とエラはバスルームで作業をしているから、くれぐれも大人しくしていてね」

 僕とミールが無言で頷くと、カミラはエラを連れてバスルームに行った。
 しかし、こいつらバスルームで何をする気だ?

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