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第十二章

そろそろ密談したいのですけど……

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 カフェに入ると、個室席に案内された。

「ごゆっくりして行って下さい」

 飲み物を運んできたウエートレスが、意味あり気な笑みを浮かべながら出ていく。

 鍵のかかる個室。窓のカーテンを閉じれば、外からは中で何をやっているかは分からない。カップルが男女の営みをするには好都合な店だ。同時に密談にも使える。今回はそのために入ったわけだが……
  
 カーテンの陰から、外の様子を伺うと、多くの人が行き交う通りが見下ろせた。ナーモ族が多いが、プシダー族、他にも種族名は知らないが、ケンタウルスのような半人半馬の種族や、大きな鳥のような種族も混じっている。
 それはいいが、帝国人はいないだろうか?

 いた!

 明らかに軍人と思われる一団が通り過ぎる。 
 素顔を晒している時にあれに見つかったら厄介だが、この部屋は三階なので、窓からのぞかれる心配はないだろう。
 
「ミール。今は、ホロマスクを切っても大丈夫だ」
「はーい」

 背後からミールの返事が聞こえる。

 さてと、僕もホロマスクを切って……あれ?

 テーブルを挟んで向かい側の席に座っていたミールの姿がない。
 そのまま自分の席に座る……ふか!

 なんだ!? この暖かくて柔らかい感触……ミール!
 窓の外を見ている間に、僕の席に移動していたのか。
 かなり大きな椅子だから、二人並んで座れないこともないが……

「ミール。いつのまに……」

 横からミールが僕に抱きついてきた。

「カイトさん。ここって、こういう事をする店だって知っていました?」
「知ってはいたが……僕達は、そう見せかけて密談を……」
「そう見せかけて密談をしようとしていると見破ったスパイが、立ち聞きをしているかもしれないじゃないですか。その裏をかいて、こういう事をしていれば、立ち聞きしているスパイはそのうち『ち! 聞いていられるか! リア充爆発しろ』と言って、立ち去っていくでしょう。その頃合いを見計らって、密談をするのです。完璧な作戦ですね」

 なんで、ミールが『リア充』なんて言葉を知っている……あれ?

「ところで、Pちゃんは?」
「あそこです」

 向かい側の席で、Pちゃんが紐で縛られ、猿ぐつわをされてジタバタしていた。

 Pちゃんの周囲では、身長三十センチの分身達ミールズ五体が見張っている。

「ちょっと、可哀相では……」
「大丈夫です。事が終わったら解いてあげますわ。それに、さっきのPちゃんのセリフは、少しムカつきましたので」

 ミールの顔が僕に迫る。

 …

 ……

 ………

「そろそろ、スパイもどこかへ行っちゃったでしょ」

 ミールがそう言ったのは、店員がドアをノックして『延長しますか?』と聞いてきた直後の事……そもそも、スパイだっていたのかどうか……
 
「二人とも、非道いです。私の見ている前であんな事を……」

 困った。Pちゃんが泣いている。

「Pちゃん……その……」

 なんて、声をかければ……

「ご主人様なんて嫌いです。不潔です。この惑星に来てから、ずっと親身になってお世話してきた私を助けてくれないなんて……」

 ううう……罪悪感が……

「カイトさん。Pちゃんの感情って、ある一定レベルまで高まると消えるのでは?」

 え?

 あ! Pちゃんの泣き声が止んだ。嘘泣きか。

「ふふふふふ。ミールさん、よくぞ私の嘘泣きを見破りましたね」
「純真なカイトさんは騙せても、あたしは騙せません」
「これで勝ったなどと思わないで下さいね」

 あの……そろそろ密談をしたいのですけど……その前に聞いておきたい事が……

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