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第十二章

緊急事態

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「緊急事態を報告する時は、ご主人様の目をまっすぐ見る必要がありますので……」

 いや……そんな必要ないだろ。

「緊急事態にかこつけて、あたしとカイトさんの愛を妨害したいのでしょう」
「そんな事はありません」
「嘘おっしゃい!」
「ミールさん。ロボットは嘘を付きません」
「Pちゃんは嘘を付けると、芽衣さんから聞きました」
「ちちい。芽衣様……余計な事を……」

 ええ! 切がない。

「それでPちゃん。緊急事態って、何があったの?」
「はい。偵察用ドローンが落とされました」
「ドローンが……まずったな。成瀬真須美に気づかれたかな? 僕らがロータスへ向かっている事に……」
「いえ、その心配はありせん。ドローンが落とされたのは、ロータスの十キロ手前です」
「十キロ? じゃあ、ロータスには到着していないうちに落とされたの?」
「はい。ロータスの東十キロ付近の荒野です」
「そんなところで? ドローンを落とした武器は何?」
「武器の特定はできていませんが、推測はできます」
「なんだって?」
「ドローンが落とされる直前に、ドローンのセンサーが一万度の高温を感知しました」
「ブッ!」

 思わず、お茶を吹き出してしまった。

「わあ! きたなーい」

 ミーチャの顔にモロに掛かってしまう。

 すまん。

「ミーチャ。大丈夫か? 今、拭いてあげるからな」

 キラが駆け寄って、ミーチャの顔をハンカチで拭った。

 ここぞとばかりに、優しいお姉さんアピールしたいのだな。

 しかし、一万度の高温って、まさか!?

「で……Pちゃんの推測は?」

 いや、聞くまでもない事だが……

「ご主人様。その付近に、エラ・アレンスキーがいるものと推測できます」

 まだ四人残っていたからな。その中の一人だろう。

「ひい! 向こうに、アレンスキー大尉がいるのですか!」

 エラの名前を聞いて、ミーチャの顔が恐怖に引きつっていた。この子は、僕なんかより、よっぽど酷いトラウマを抱えているからな。 

「安心しろ。ミーチャ。エラなんか来ても、お姉さんが守ってあげるから」

 怯えているミーチャを、キラが優しく抱きしめていた。だが、その顔はどっか嬉しそうだ。 

「ご主人様。追加のドローンを送りますか? その場合は、別ルートを使う事をお勧めします」

 ううん……どうするか? 今回送り出したのは、飛行船とステルス。飛行船タイプでステルスを吊り下げてロータスの近くまで行って、そこからステルスを切り離して、ロータス市内や港を偵察するはずだった。 
 ロータスへ向かうコースも、地形を考慮してロータスからのレーダーに捕まらないコースを選んだのだ。

 コースをおいそれと変える事はできない。

 では、レーダーには映らないステルスだけで行かせるかとなると、航続距離が足りない。

 さて、どうするか?

 バサ! バサ! バサ!

 考え込んでいる時、突然頭上から大きな羽音が聞こえてきた。
 上を見上げると、三頭のベジドラゴンの子供が宙を舞っている。
 その一頭には、頭に赤いリボンが付いていた。

「カイト! ドコヘ行クノ?」

 エシャー! いいところへ来てくれた。
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