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第十二章

出航

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 《海龍》と《水龍》が出航したのは、その翌朝の事。
 前回と違って、今回は港を出るとすぐに浮上して水上航行に入った。

「あのう……こんなにノンビリしていて、いいのでしょうか?」

 ミーチャが不安そうに言ったのは、昼近くになって《海龍》甲板上での事。日の光を凹面鏡で集めてレットドラゴンの肉を炙っている僕の背後から声をかけてきたのだ。

 ちなみにこの肉は、塩湖から持ってきた最後の一かけら。
 出陣祝いの景気づけにと思って出してきた。

「大丈夫だよ。ミーチャ。お昼ご飯までに焼けるから。ガスや電気で焼くより、日の光で焼いた方が美味いんだぞ」
「いえ……僕が言いたいのは、お肉の焼け具合ではなくて……これから、戦いに出かけると言うのに、こんなにノンビリしていていいのですか? という事なのですけど」

 ミーチャの指差す先の甲板上にはサマーベッドが並び、ミール、ミク、キラ、芽衣ちゃんが水着姿で寝そべり、日光浴をしていた。
 さすがにPちゃんは、アンドロイドなのでそんな事はしていないが……

「ロータス到着は明日になるし、今から緊張していてもしょうがない。今のうちに英気を養っておくのさ」
「でも、休むなら潜水艦の中でもいいじゃないですか。こんな無防備な状態で、もし帝国軍の残党に襲撃されたら……」
「大丈夫だよ」

 僕は空を指差した。

「目には見えていないけど、上空ではドローンが警戒しているんだ」
「で……でも……」

 ミーチャは妙にモジモジしていた。

 ん? 顔が赤いぞ。どうしたのだ?

「せ……せめて服ぐらい着ても……」

 着ているだろ? 水着を……いや……ミーチャに、水着ギャルは刺激が強すぎたかな?
 確かに、中高生の頃の僕なら水着ギャルが並んでいる光景なんか見ると、目のやり場に困って赤面していたかも……
 
「ご主人様。なにミールさん達をジロジロ見ているのですか?」

 ギク!

 背後を振り向くと、トレイを持ったPちゃんが僕を睨みつけていた。

「え? いや……これはだな……」
「まったく、エッチなんだから……」

 酷い言われようだ。
 いや、これも虫除けプログラムのせいなのか? 

 Pちゃんはそのまま女子達の方へ歩いて行く。

「みなさん。冷えたジュースをお持ちしました」
「わあ! ありがとうメイドさん」「ありがとう。Pちゃん」

 それぞれが紙カップを受け取った後、Pちゃんはミールに声をかける。

「それはそうと、ミールさん。もう少し大人しい水着にしませんか?」

 ちなみにミールが着けているビキニのような水着は、普段からナーモ族が使っている物らしい。尻尾を出す穴も空いている。

「この水着のどこがいけないのですか?」
「ご主人様がさっきから、エッチな目でミールさんを見ています」

 う……嘘を付くな! 見てないぞ! チラっとは見たが……ガン見はしていない。

「ええ! お兄ちゃんのエッチ! あたしもエッチな目で見られていたの?」

 いや、ミク。おまえのまな板胸で、それはないから……

「P0371。失礼な事を言ってはいけません。北村さんは矢部さんと違います。女の子の嫌がるような事はしません」

 芽衣ちゃん、君だけは分かってくれるんだな。てか、なんでスクール水着? いや、コアなファンはいるけど……

「申し訳ありません。芽衣様」
「そうですよ。Pちゃん。それにあたしはカイトさんに見られているのではありません。見せつけて、悩殺しているのです」

 あのねえ……

「ミールさん。その水着で北村さんを悩殺するのは、ちょっと難しいかもしれませんよ」
「どうしてですか? 芽衣さん。あたしのこの絶妙のプロポーションで、悩殺できない殿方などいるわけありません」
「ですけど、その水着姿って、ミールさんの分身体が戦闘モードになった時の姿とあんまり変わらないのではないかと……」

 というより、戦闘モードのときのビキニアーマーの方がエロい。

「は! しまった! 日頃から見せつけていたから、今さらカイトさんには効果なかったのですね」

 まあ、確かに見慣れてしまっていたが……

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