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第十二章

潜水艦《海龍》2

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 レイホーも慌てて僕から離れた。

「カイトさん。あたし達にいろいろ頼みごとをしておいて、その間にレイホーさんと何をしていたのです?」

 ミールの手には、分身の憑代に使う木札が握られていた。

「よせ! ミール! 誤解だ!」
「レイホーさん」

 芽衣ちゃんが、レイホーの前に迫る。

「レイホーさん。やっぱり、逆NTRするつもりだったのですね」
「め……芽衣ちゃん。今の冗談ね……」
 
 ミクが僕の前に進み出た。その手には、式神の憑代に使う人型が握られている。

「お兄ちゃん」
「ミ……ミク……誤解だ! だから、ここでアクロを呼び出すな!」

 ミクは不意にニコっと笑ってから。憑代を地面に叩きつけた。

「出でよ! 式神!」

 うわわわわ!

 思わず目を瞑った。
 
「お久しぶりです。北村海斗様」

 この声は?

 目を開くと、僕の足元にウサギ式神の赤目がいた。

「赤目? ここしばらく、姿を見なかったけど……」
「僕は普段、姿は見えませんが皆様の近くにいるのですよ。今回は、主の命令で北村海斗様の後をつけていました」

 なんだって? 

「ですから、北村海斗様の潔白は僕が証明できます」

 よかった。 

 赤目のおかげで、何とか誤解は解けたが……

「お兄ちゃんに、その気がないのは分かったけど……」

 そう言って、ミクはレイホーの前に出る。

「レイホーさん。通路でお兄ちゃんの後をつけていたのは、どういうつもり?」

 え? つけられていたのか?

「いや……別につけてないね。ただ、お兄さんが前を歩いていただけね」

 いや、それ完全に尾行だから……

「いや……私はただ、港を向かっていたら、お兄さんが前にいたので」
「ここでカイトさんに会ったのは偶然だという事は分かりました。でも……」

 今度はミールが僕の右腕にしがみついてきた。てか、胸が当たってる!

「カイトさんに、こういう事をしていい女は、あたしだけですから……」
「あたしだって、権利あるもん……」

 左腕にはミクがしがみついて、胸を押しつけてきた。全然膨らんでいないまな板胸なので嬉しくないのだが……よせ! 僕を犯罪者にする気か!

「あなた達にも権利はありません。香子様が、病に臥せっているのをいい事に、ご主人様に手を出すんじゃありません!」

 Pちゃんが乱入して、ますます自体が泥沼化……誰か助けてくれ。

 …

 ……

 ………

「こちらが、貨物室になります」

 馬 美玲の案内で、僕達が《海龍》に入ったのは、それから三十分後の事だった。
 みんな物珍しげに《海龍》の中を、見回している。
 一人ミクだけが、気持ち悪そうな顔をしていた。

「ミク。辛いなら、外で待っていていいんだぞ」
「辛くないもん!」
「そ……そうか」

 それにしても、この潜水艦……ずいぶん中が広いな。
 これだけ広ければ着脱装置二台積めそうだけど……

「艦長さん。《海龍》は《水龍》の同型鑑と聞いているのですが、それにしては中が広いですね」
「これが本来の広さです。《水龍》は特殊な改造を施してあるので、狭くなったのですよ」
「特殊な改造?」
「垂直上昇用のロケットエンジンをつけたのです」
「そ……そういえば、なんで潜水艦にロケットエンジンなんかつけたのですか?」
「はあ。なんでも設計者が言うには、魚雷から防御にするのには、水上に飛び上がるのが最も確実だとか……」

 その設計者……沈○の艦○読んでいたな……
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