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第十二章
潜水艦《海龍》
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目をこすってみたが、やはり潜水艦が二隻ある。
なぜ増えた? いや、僕にとっては好都合だが……
「お兄さん。こんなところで、何してるね?」
ぼうっと見ていたら、背後から声をかけられた。振り向くとレイホーが立っている。
「レイホー。ちょっと《水龍》を見に来たのだよ。今回の事に使えないかと……」
「カートリッジ奪還作戦の事? 《水龍》を使うのは全然かまわないね」
「それは助かるのだが……ただ、作戦にはロボットスーツを二機持って行きたい。《水龍》に着脱装置を積める余剰スペースはないかと思って見に来たのだけど……潜水艦が、なぜ増えているの?」
「ああ! 遠征に行っていた《海龍》が帰って来たね」
「《海龍》?」
「《水龍》の同形艦ね。《海龍》も必要なら使っていいよ」
「それは助かるけど……それって、レイホーが決めていい事なの?」
「私に権限ないけど、お父さん助けるためなら、みんないいって言ってくれるはずだよ」
「そうか。ところで《海龍》は、今までどこに行っていたの?」
「帝国軍が来る前に、リトル東京を探しに出ていたね」
「カルカの人達は、前からリトル東京がある事には、気が付いていたのかい?」
「ナーモ族の商人から、北の方にそんな町ができたという話は以前から聞いていたね。《イサナ》の人達が降りてきたのではないかとみんな思っていたけど、そこまで行くには帝国領を越えなきゃならないね。だから、迂闊に探しに行けなかったね。だけど、香子さんと芽依ちゃんが来て、リトル東京の存在がはっきりして、しかも内海を通って行ける事が分かったね。だがら、カルカシェルターが包囲される前に、《海龍》を出航させたね」
「それが帰ってきたという事は、リトル東京との往復に成功したのか?」
レイホーはニッコリと頷いた。
「さっき、無線連絡があったばかりね。リトル東京を見つけたね」
潜水艦《海龍》のハッチが開いたのはその時。
中から乗組員が降りてくる。
東洋人の乗組員に混じって、一人だけ西洋人女性がいた。
歳の頃は四十代の金髪美女。エラのせいで金髪美女はトラウマになってしまったが……彼女は優しそうな顔をしている。
レイホーが彼女に向かって手を振った。
「アーニャさん! おかえり」
アーニャ!? という事は、彼女がアーニャ・マレンコフ?
アーニャも親しげに手を振り返す。
レイホーとの関係は良好そうだな。
という事は、章 白龍と修羅場になったわけではないのか?
いや、そもそも話を聞いた限りでは、二人は良い仲にはなっていたけど、別に恋人になったわけではない。
キスだって、事故だし……
「ただいま。レイホー。そちらのハンサムは?」
ハンサム? 誰の事だ? わ!
いきなりレイホーが僕の左腕にしがみ付いてきた。
「私の彼氏ね」
ちょ……ま……いきなり何を……
「そ……そうなの」
いや……アーニャさん。嘘だから……
「レイホー」
その声は潜水艦の甲板からだった。船長の帽子をかぶった中年女性がそこに立っている。
その女性にレイホーは微笑みかける。
「馬艦長、おかえりなさい」
馬艦長? ひょっとして彼女が馬 美玲?
「ただいま、レイホー。それはいいとして、今言った事が事実なら仕方ないとして、冗談なら、今すぐ止めた方がいいわよ。危険すぎるわ」
「え? 危険って? 何が?」
「いくらあなたが功夫の達人でも、四人一度に相手はできないんじゃないの?」
え? まさか!?
後を振り向いた。
うわわわわわわ!
Pちゃん、ミール、ミク、芽衣ちゃんが怖い顔でこっちを睨んでいた。
なぜ増えた? いや、僕にとっては好都合だが……
「お兄さん。こんなところで、何してるね?」
ぼうっと見ていたら、背後から声をかけられた。振り向くとレイホーが立っている。
「レイホー。ちょっと《水龍》を見に来たのだよ。今回の事に使えないかと……」
「カートリッジ奪還作戦の事? 《水龍》を使うのは全然かまわないね」
「それは助かるのだが……ただ、作戦にはロボットスーツを二機持って行きたい。《水龍》に着脱装置を積める余剰スペースはないかと思って見に来たのだけど……潜水艦が、なぜ増えているの?」
「ああ! 遠征に行っていた《海龍》が帰って来たね」
「《海龍》?」
「《水龍》の同形艦ね。《海龍》も必要なら使っていいよ」
「それは助かるけど……それって、レイホーが決めていい事なの?」
「私に権限ないけど、お父さん助けるためなら、みんないいって言ってくれるはずだよ」
「そうか。ところで《海龍》は、今までどこに行っていたの?」
「帝国軍が来る前に、リトル東京を探しに出ていたね」
「カルカの人達は、前からリトル東京がある事には、気が付いていたのかい?」
「ナーモ族の商人から、北の方にそんな町ができたという話は以前から聞いていたね。《イサナ》の人達が降りてきたのではないかとみんな思っていたけど、そこまで行くには帝国領を越えなきゃならないね。だから、迂闊に探しに行けなかったね。だけど、香子さんと芽依ちゃんが来て、リトル東京の存在がはっきりして、しかも内海を通って行ける事が分かったね。だがら、カルカシェルターが包囲される前に、《海龍》を出航させたね」
「それが帰ってきたという事は、リトル東京との往復に成功したのか?」
レイホーはニッコリと頷いた。
「さっき、無線連絡があったばかりね。リトル東京を見つけたね」
潜水艦《海龍》のハッチが開いたのはその時。
中から乗組員が降りてくる。
東洋人の乗組員に混じって、一人だけ西洋人女性がいた。
歳の頃は四十代の金髪美女。エラのせいで金髪美女はトラウマになってしまったが……彼女は優しそうな顔をしている。
レイホーが彼女に向かって手を振った。
「アーニャさん! おかえり」
アーニャ!? という事は、彼女がアーニャ・マレンコフ?
アーニャも親しげに手を振り返す。
レイホーとの関係は良好そうだな。
という事は、章 白龍と修羅場になったわけではないのか?
いや、そもそも話を聞いた限りでは、二人は良い仲にはなっていたけど、別に恋人になったわけではない。
キスだって、事故だし……
「ただいま。レイホー。そちらのハンサムは?」
ハンサム? 誰の事だ? わ!
いきなりレイホーが僕の左腕にしがみ付いてきた。
「私の彼氏ね」
ちょ……ま……いきなり何を……
「そ……そうなの」
いや……アーニャさん。嘘だから……
「レイホー」
その声は潜水艦の甲板からだった。船長の帽子をかぶった中年女性がそこに立っている。
その女性にレイホーは微笑みかける。
「馬艦長、おかえりなさい」
馬艦長? ひょっとして彼女が馬 美玲?
「ただいま、レイホー。それはいいとして、今言った事が事実なら仕方ないとして、冗談なら、今すぐ止めた方がいいわよ。危険すぎるわ」
「え? 危険って? 何が?」
「いくらあなたが功夫の達人でも、四人一度に相手はできないんじゃないの?」
え? まさか!?
後を振り向いた。
うわわわわわわ!
Pちゃん、ミール、ミク、芽衣ちゃんが怖い顔でこっちを睨んでいた。
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