上 下
359 / 848
第十一章

不時着2(天竜過去編)

しおりを挟む
 やはり、僕はレムとリンクしていたんだ。

「後で話すよ。それより、操縦室は見てきたの?」
「もちろん。でもヤンさんはいなかった。重力があるから、惑星に降りたというのは分かったわ。リンクする前に《朱雀》はバリュートを開いて惑星に降りるって言っていたしね。だから、みんな外へ出たと思って、私もエアロックから外へ出たわ。そしたら、外は砂漠だったのよ」
「空気は?」
「呼吸できた。でも、すごく暑くて。一度戻って簡易宇宙服で外へ出たのよ。《朱雀》は船体に亀裂が入っていたわ。壊れてなくても、地上に降りた以上、もう使い物にならないだろうけどね。とにかく、船体に登ってみんなの姿を探したの」
「見つかったの?」

 趙 麗華は首を横にふった。

「探すどころじゃなかった。船体の上に登ったら、目の前に砂嵐が迫っていたのよ」
「砂嵐?」
「ええ。慌てて船に戻ろうとしたけど、その前に砂嵐に追いつかれて。やっとの事で船内に入ったら、船内にも砂が入ってきていたわ。亀裂から入ってきたみたいね。亀裂の入った区画との隔壁を閉鎖してなんとか流入は止まったけど」
「それで、僕は砂に埋もれていたの?」
「そうよ。だから、私が砂に埋もれた君を掘り出してあげたの。感謝しなさい」

 高くつきそうだな……

「それより、章君こそ。今まで何をやっていたの?」
「その……」

 僕はレムの話をした。

「本当? 夢でも見たんじゃないの?」
「僕も夢かと思った。でも、僕は趙さんのすぐ後で機体とのリンクを切ったんだ。なのに、僕がリンクしていたままだったのを趙さんは確認しているんだよね」
「ええ。確かに章君はリンクしていた」
「いったい、僕は何とリンクしていたのだろう? 機体とのリンクは切ったはずなのに」
「じゃあ、本当にレムとリンクしていたとでも言うの?」
「それしか、考えられない」
「信じられない」
「でも、確認する方法がある。奴の言っている事が本当なら、《天竜》の首脳部はレムから降伏勧告があった事を隠しているはずだ」
「まさか」
「実は、前から一つ気になる事があったんだ」
「なに?」
「アーニャを回収した後で、《天竜》からこの惑星に偵察隊を出した。その偵察隊が、敵の宇宙機編隊とすれ違ったという報告を受けて戦闘準備を始めただろ」
「そうよ」
「だけど、敵の編隊と偵察隊はかなり離れた軌道を通っていた。近くをすれ違うはずはないんだよ」
「どういう事?」
「もし、レムから降伏勧告があったとしたら辻褄が合う。《天竜》が戦闘準備を始めたのは、偵察隊からの報告があったからではなく。降伏勧告を受けたからなんだ。ただ、首脳部はそれを隠していた」
「なぜ隠す必要があるのよ?」
「降伏勧告があったなんて発表したら、降伏しようなんて言いだす人がいるからじゃないかな」

 趙 麗華は暫く考え込んだ。

「あり得るわね。もちろん、私は降伏なんてまっぴらよ。そんな事をしたら、天竜のみんなもレムに取り込まれてしまうわ。でも、交渉すれば何とかなるなんて甘い事言っていた人がいたわ。あの人が騒ぎ出したら、厄介な事になっていたかも……」
「そんな厄介な人がいたの?」
「ええ。私の叔父だけど……」
「叔父さん?」
「私は大嫌いな人だけどね。一番ムカつくのは、私に嫌われている事に気が付かないで私に会うと猫なで声で話しかけてくるウザい人。私が宇宙機のオペレーターをやると知ったら、船長のところへ怒鳴り込んで、レムと和平交渉しろ言って来たのよ。船長は、レムはこちらの呼びかけに答えないと言っていたけど……あれは嘘だったのね」
「しかし、それなら趙さんがオペレーターを降りれば……」
「あの人の思い通りになるくらいなら、死んだ方がマシ!」

 そこまで嫌う……

「だから、私は船長に嘆願したの。絶対に私を降ろさないでって、降ろしたら、自殺しますって……まあ、自殺は本気じゃないけど……とにかく、叔父に騒がれるようなら、レムから連絡があったことは隠した方が良かった……きゃ!」

 突然、周囲が真っ暗になった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

タイムワープ艦隊2024

山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。 この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!

200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち

半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。 最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。 本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。 第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。 どうぞ、お楽しみください。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編をはじめる予定ですー!

2回目チート人生、まじですか

ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆ ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで! わっは!!!テンプレ!!!! じゃない!!!!なんで〝また!?〟 実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。 その時はしっかり魔王退治? しましたよ!! でもね 辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!! ということで2回目のチート人生。 勇者じゃなく自由に生きます?

神様のミスで女に転生したようです

結城はる
ファンタジー
 34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。  いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。  目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。  美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい  死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。  気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。  ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。  え……。  神様、私女になってるんですけどーーーー!!!  小説家になろうでも掲載しています。  URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」

ゲームで第二の人生を!~最強?チート?ユニークスキル無双で【最強の相棒】と一緒にのんびりまったりハチャメチャライフ!?~

俊郎
SF
『カスタムパートナーオンライン』。それは、唯一無二の相棒を自分好みにカスタマイズしていく、発表時点で大いに期待が寄せられた最新VRMMOだった。 が、リリース直前に運営会社は倒産。ゲームは秘密裏に、とある研究機関へ譲渡された。 現実世界に嫌気がさした松永雅夫はこのゲームを利用した実験へ誘われ、第二の人生を歩むべく参加を決めた。 しかし、雅夫の相棒は予期しないものになった。 相棒になった謎の物体にタマと名付け、第二の人生を開始した雅夫を待っていたのは、怒涛のようなユニークスキル無双。 チートとしか言えないような相乗効果を生み出すユニークスキルのお陰でステータスは異常な数値を突破して、スキルの倍率もおかしなことに。 強くなれば将来は安泰だと、困惑しながらも楽しくまったり暮らしていくお話。 この作品は小説家になろう様、ツギクル様、ノベルアップ様でも公開しています。 大体1話2000~3000字くらいでぼちぼち更新していきます。 初めてのVRMMOものなので応援よろしくお願いします。 基本コメディです。 あまり難しく考えずお読みください。 Twitterです。 更新情報等呟くと思います。良ければフォロー等宜しくお願いします。 https://twitter.com/shiroutotoshiro?s=09

処理中です...