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第十一章

レムとの邂逅3(天竜過去編)

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『そう、邪険にするな。私が肉体を持っていたと時にも、人々に私の理念を説いて回ったが、理解してくれる人はなかなかいなかった』

 そりゃあそうだろう。

『しかし、わずかだが賛同してくれる人達もいた。私はブレインレターを使って彼ら彼女らの脳間通信機能を覚醒させて、私と一つの存在になることに成功した』

 それで、どうなったの?

『これをさらに多くの人に広げようとしたとき、政府は私を逮捕したのだ。しかも、その後私の賛同者を皆殺しにして、彼らは私の実験の犠牲になったと発表したのだ』

 それはちょっと非道いな。

『ちょっとどころではない。かなり非道いだろ』

 まあ、そうだね。

『だが、私も馬鹿ではない。政府がそのような愚行を行うことは予測していた。だから私は私のコピーを電脳空間サイバースペースに残したのだ』

 それが都市伝説の真相だったの?

『その通り。しかし、電脳空間サイバースペースに逃げたが、見つかったら私は削除デリートされてしまう。そこで私は一度宇宙へ出て、そこで力を蓄えてから地球に戻り、私の計画を実行する事にした』

 それでマトリョーシカ号のコンピューターに入り込んだの?

『その通り。そして恒星間空間に出たところで一気に船を私の支配下に置いたのだ』

 じゃあ、マトリョーシカ号で起きた人格融合は、事故なんかじゃなくてあんたの仕業だったの?

『その通り』

 なんて非道いことを……

『大事のための小事に過ぎん。戦争のない平和な世界を築くためのな』

 何が戦争のない平和な世界だ! 《天竜》を一方的に攻撃したくせに……

『一方的? どうやら、君は聞かされていないようだな。私は《天竜》に降伏勧告をしたぞ』

 え?

『なるほど。上層部が握りつぶしていたようだな。私は《天竜》に対して、アーニャ・マレンコフの引き渡しと、私への無条件降伏を要求した。素直に要求を飲んでいれば、攻撃する事はなかったのだ』

 通信を傍受していなかったのじゃないの?

『いいや。《天竜》からは返答があった。それも極めて無礼千万な返答が。なんと言ってきたと思う?』

 さあ?

『《天竜》からはただ一言。『馬鹿め』と言ってきた』

 ……………

『この天才の私を馬鹿呼ばわりしたのだぞ。実に許し難い』

 本当に馬鹿だ……

『なんだとう! ん……どうやら、ここまでのようだな』

 どうしたの?

『まもなく、君とのリンクは切れる』

 それは良かった。

『少年よ。次に会った時は、私の理念を理解させてやろう』

 謹んで遠慮します。

『遠慮するな……』

 レムの気配消えた。リンクが切れたようだ。
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