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第十一章

足は飾りじゃない(天竜過去編)

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 東に向かって飛行していくうちに、やがてそれは見えてきた。
 砂嵐と言うより、光の壁だ。
 静電気によって舞い上がった塵に、太陽光が当たって輝いているのだ。
 しかし、電脳空間サイバースペースにいるときに、ライブラリーで月噴水ムーンファウンテンの立体映像を見たけど、それよりも規模が大きいな。
 ここは月と言っても、地球の月より少し重力が弱い。
 そのせいかもしれない。
 
 僕らは光の壁の前で一度着地した。

「綺麗!」

 チョウ 麗華リーホワが感嘆の声をあげたが、確かに思わず見とれてしまう美しさだ。
 しかし、これが原因で月面車が事故に遭ったという話も聞いたことがあるぞ。

「アーニャ。この宇宙機って、あれの中に入っても大丈夫なの?」
「大丈夫よ、白龍パイロン君。この機体は、静電気対策も粉塵対策も完璧だから」

 それなら、大丈夫か。

 月面に測定器を降ろしてから、僕達は砂嵐の中に突入した。
 砂嵐の中に入って分かったけど、ここではレーダーがほとんど効かない。
 隣にいるアーニャと趙 麗華の機体も見えないくらい視界も遮られている。
 ぶつからない様に気を付けないと……。

 程なくして、僕達は砂嵐を抜けた。

「レーザー攪乱膜に使えるかはともかく、身を隠すには使えそうね」

 アーニャは振り向きながらそう言うと、レーザーを砂嵐に向かって撃った。
 砂嵐の向こうに置いてきた測定器から送られてきデータによれば、レーザーの威力は十分の一以下に落ちている。

「これなら、レーザー攪乱膜としても十分に使えるわね」
「でも、アーニャ。こっちから攻撃する時はどうするの?」
「大丈夫よ、白龍君。カタログデータによるとレーザー地雷の出力は私達の百分の一の五百キロワット。さらに十分の一にまで削られたら、私達のホイップルバンパーは貫けない。でも、私達のレーザーの出力は五十メガワット。十分の一程度削られても、レーザー地雷を破壊するぐらいの威力は残るわ。その前に、敵は私達が砂嵐に隠れて近づいていることに気がつかないわね」
「なるほど」
「怖いのは敵が後に回り込んできた場合だけど、今のところ二人が上手く牽制しているみたいだし」
 
 後は、この砂嵐と一緒に移動して縦穴まで行くだけだな。
 僕達は砂嵐の動きに合わせ、西へ向かってゆっくりと移動していった。

 こういう時、宇宙機に足かキャタピラーでもあればな。

 少しだけ飛行して、砂嵐の前に着地。砂嵐が離れるのを待って、また飛行するという事の繰り返しは結構だるい。

 宇宙機に足は飾りじゃないよ。
 
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