上 下
352 / 850
第十一章

大自然の力?(天竜過去編)

しおりを挟む
 大自然て? リーウ 魅音ミオンは何を言いたいのだ? こんな空気も水も無い月面で……

 彼女はさらに話を続けた。

「今、私達は月の夜の側にいます。でも、もうすぐ夜明けです」

 夜明け? それが何か……そうか!

月噴水ムーンファンテンを利用するの!?」
「はい。チャン君、よく分かりましたね」

 月面では、太陽光の当たる昼の部分と当たらない夜の部分の境目では常に砂嵐が起きている。大気のない月で砂嵐などあるはずないと思うかもしれないが、月面の昼と夜の境界面では、静電気によってレゴリスが舞い上がる現象が起きているのだ。この砂嵐は、月噴水ムーンファンテン、または地平線光ホライズングローと呼ばれている。
 
 つまり柳 魅音の作戦はその砂嵐に紛れて攻撃しようというのだ。

「だけど、レゴリスの砂嵐で、レーザーを遮れるかしら?」

 アーニャの心配はもっともだな。
 それなら、実験してみればいい。ここから東へ移動すれば昼と夜の境目、明暗境界線があるはず。そこでは常に砂嵐が起きているはずだ。
 その砂嵐の中でレーザーを照射してみれば、実際にどの程度威力が落ちるか確認できる。
 効果があるなら、僕達は砂嵐と一緒に移動してここを攻撃すればいい。
 それに、これなら太陽を背にして戦える。

 その事を提案すると……

「いいと思うけど、ここを空にしない方がいいと思うな」

 そう言ったのはマー 美玲メイリン

「敵は、ここに私達が来ている事はもう気が付いていると思う。その私達がいつまでも攻撃してこないでいると、東へ移動して攻撃してくる事に気づかれるかもしれないわ」

 なるほど……

「その場合、月面車なり宇宙機なり、移動できる攻撃手段で、背後に回り込まれる危険がある。だから、一人か二人はここに残って、山の稜線から牽制攻撃をかけ続けていた方がいいと私は思うわ。まあ、敵に宇宙機や月面車が残っているか分からないけど」

 アーニャは少し考えてから答えた。

「確かに、敵に宇宙機や月面車がないと考える方が甘いわね。私達が東へ移動した事に気が付いたら、絶対背後に回り込まれる。馬 美玲さん、柳 魅音さん。あなた達は、ここに残って牽制攻撃をかけてもらっていいかしら?」
「もちろん、自分で言いだしたことだし」「牽制役は、私たちにまかせて下さい」
白龍パイロン君と趙 麗華さんは、私と一緒に東に回って攻撃に回ってもらっていいかしら?」

 僕はもちろんOK。趙 麗華は……

「私も……攻撃側でいいの?」
「もちろんよ。それとも、私と一緒に行動するのは嫌かしら?」
「べ……別に嫌じゃないわよ。アーニャが私と行動したいなら、付き合ってあげるわよ」
「よかった。私、あなたとは友達になりたいと思っていたの」
「そ……そうなの? 私は……アーニャとはもう、友達のつもりでいたわよ」

 こうして僕達三人は東に向かって飛び立った。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

別に要りませんけど?

ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」 そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。 「……別に要りませんけど?」 ※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。 ※なろうでも掲載中

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~

青空顎門
SF
病で余命宣告を受けた主人公。彼は介護用に購入した最愛のガイノイド(女性型アンドロイド)の腕の中で息絶えた……はずだったが、気づくと彼女と共に見知らぬ場所にいた。そこは遥か未来――時空間転移技術が暴走して崩壊した後の時代、宇宙の遥か彼方の辺境惑星だった。男はファンタジーの如く高度な技術の名残が散見される世界で、今度こそ彼女と添い遂げるために未来の超文明の遺跡を巡っていく。 ※小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様、ノベルバ様にも掲載しております。

処理中です...