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第十一章

殲滅(天竜過去編)

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 柳 魅音はコクっと頷いた。

「でも、好きな人をなんで?」
「私と喧嘩しないで、私と王さんを引き離そうと考えたのだと思うわ」
「それじゃあ……肝心の王から嫌われちゃうけど……」
「そこまで、考えが回らなかったのだと……」

 恋は人を盲目にするか……

 おっと! こんな事、している場合じゃない。

 僕達は、攻撃準備に入った。
 重力も地面もないはずの宇宙空間で、みんなのアバターが腹這いになってライフルを構えている。
 アバターを消してみると、それぞれの球体機がスラスターを噴射して、砲口の微調整をしていた。

「青竜隊、配置完了」「白虎隊、配置完了」

 青竜隊、白虎隊、それぞれのリーダーの声が聞こえてきた。

「玄武隊、配置完了」

 この声はマー 美玲メイリン! あの子、隊長だったんだ。

「朱雀隊、配置完了」

 最後にアーニャの声。

「一斉射撃、ー!」

 楊さんの号令と同時に、僕達は射撃を開始した。
 四つの方向から、同時に着弾するタイミングで発射された弾丸は敵の球形陣に殺到する。
 さっきの様に、一つの方向から砲撃した場合、敵は反対方向に加速するなり、エアバックで受け止めるなり、味方の機体を盾にするなりして、防ぐ事ができた。
 しかし、複数の方向から同時に攻撃をかけられたら防ぎようがない。
 着弾までのカウントダウンが六十秒を切った。
 後、一分で当面の脅威はなくなる。敵は消え去る。僕達の勝利だ。
 敵に動きがあったのは、カウントダウンが四十五を切った時。
 突然、一機のレーザー機が加速して球形陣の外へ飛び出した。

 なんのつもりだ?

 飛び出したレーザー機が突然爆発した。いや……これは……
 僕の眼前にサポートAIからのメッセージが文字で表示される。

『《青竜》通信途絶』

 まさか!?

 さっきまで青竜隊の人達のアバターがいた方向に目を向けた。
 だが、そこにアバターは無く、ただ宇宙空間が広がっているだけ。《青竜》がやられた! 奴はグレーザー砲を母船攻撃に回してきたんだ。
 残った《白虎》《朱雀》《玄武》はレーザー攪乱膜を張りつつ回避運動を始めた。
 しかし、指向性核爆弾とも言うべきグレーザー砲相手に攪乱膜は紙のような物。
 僕の見ている前で白虎隊五人のアバターが一斉に消滅した。今、《白虎》が落とされたんだ!

 次は《朱雀》と《玄武》が狙われる。

 着弾まで十秒……逃げ切れるか?

「きゃあああ!」

 この悲鳴は、馬 美玲!

『《玄武》被弾、大破』

 次は僕達……

 カウントダウンは0になった。
 砲弾が爆発し、四方向からの爆散円が敵を包み込む。
 最後に残ったグレーザー砲が《朱雀》の方向を指向した時、爆散円が到達した。
 レーザーは来ない。映像を拡大すると、レーザー機は無数の破片となっていた。

 僕達は……《朱雀》は逃げ切れたようだ。 
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