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第十一章

単縦陣で突撃せよ(天竜過去編)

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 何もない宇宙空間を女の子が駆けてくるように見えるが、あくまでもアバター。試しにアバターを消してみると、本来の球体宇宙機が、メインエンジンをこっち向けて減速 をかけている様子が見えた。
 すぐ近くにいるように見えるが、実際には数キロ離れているはず。
 不意にメインエンジンの輝きが消えた。
 機体各部からスラスターが吹いて向きを変える。

 アバターを戻すと、さっきの女の子が僕たちの前に立っていた。

「こんにちは。玄武隊から来たマー 美玲メイリンでーす」

 元気のいい女の子だな。

「気が付いたら、私一人になっていて途方にくれました。朱雀隊の人達が四人残っていて、比較的近いところにいる事が分かったので、合流させてもらったのです」

 アーニャが握手を求める。

「朱雀隊の隊長アーニャ・マレンコフです。よろしく」
「アーニャさん、朱雀隊にいたのですね」
  
 馬 美玲はアーニャの手を握りしめた。

 しかし、実際に機体のマニピュレーター同士が握手しているのだろうか?

 アバターを消してみるとそんな事は無くて、アーニャの機体も馬 美玲の機体も数キロ離れたところにあり、マニピュレーターはピクリとも動いてなかった。

「ところでアーニャさん。提案があるのですけど」
「なんでしょう?」
「玄武隊で作戦案があったのですが、準備が整う前にやられちゃいました。朱雀隊は、まだ四機残っているから、その作戦が実行可能だと思うのです。だから、皆さんとの合流を願い出たのです」
「どんな作戦かしら?」
「五機の機体を一列縦隊にして……つまり単縦陣で、突撃するのです」
「単縦陣?」
「はい。そうすれば、先頭の機体が弾除けとなって、後の機体を守れます。被弾して限界が来たら、先頭の機体は列から離れて二機目が弾除けになります。それが被弾したら三機目が。そうやって行けば、一番後ろの機体だけは五十メガワット自由電子レーザー砲の射程内に飛び込めます」
「なるほど。レーザーなら、確実に仕留められるわね」
「ええ。機体を犠牲にすると言っても、オペレーターの私達は母船の中にいるから無事ですし……」

 そこまで言ったところで、チョウ 麗華リーホワが食ってかかってきた。

「あなたね! 母船の中なら安全だとでも思っているの!?」
「はあ?」

 馬 美玲は趙が何を怒っているのか分からず、キョトンとしていた。

 まあ、分かるわけ、ないよね。

「母船に中にいたってね。母船が攻撃されたら死ぬのよ」
「はあ? 分かっていますが」
「あんた、私の事を馬鹿にしているの!」
「いえ……滅相もない。何を怒っているのですか?」
「あんたね……モガモガ」

 最後のモガモガは、ワンが趙の口を押えたから。

 僕は馬 美玲の元に歩み寄って囁いた。

「ごめんね。この子ちょっと馬鹿で」
「はあ? そうですか……それで、さっきの話は?」

 馬 美玲はアーニャの方を向いた。

「私は馬さんの作戦を実行したいと思うけど、反対の人はいるかしら?」

 僕はもちろん賛成。王も……

「俺は賛成だ」

 趙は……

「反対する理由が思いつかないわ」
「よし! じゃあ俺が先頭だな。身体のデカい俺なら、いい盾になるだろう」

 そう言った王に、また趙が揶揄する。

「バッカじゃないの! 身体が大きいのは本人で、機体の大きさはみんな同じじゃない」
「うるせー! 気持ちの問題だ!」

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