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第十一章
キャビン(天竜過去編)
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船内のキャビンは、カーテンでいくつかの区画に仕切られるようになっていた。
楊さんが操縦室へ行くのを確認すると、趙は真ん中のカーテンを閉めてアーニャと柳を自分の方へ来るように促す。
「男はこっちへ来るんじゃないわよ! 良いわね!」
そう言って、趙はカーテンを閉めた。
「誰が行くか! この性悪女」
王もすっかり喧嘩腰だ。趙の方は言い返さず、ただカーテンの下から手を差し出してカーテンから延びている紐を床の突起に結びつけて固定していた。今、船は加速中なのでこのキャビンにも1Gの重力が作用しているが、エンジンが止まって慣性航行状態になればここは無重力だ。そのときにカーテンがまくれあがらないための処置らしい。
「麗華。何もこんな事しなくても……王さんは良い人よ」
カーテンの向こうから柳の声。
「魅音。あいつは良い人に見せかけていただけで、私達を襲う機会を狙っていたのよ」
「何かの間違えじゃないの?」
「間違えなんかじゃない……ちょっとアーニャ! そっちは男部屋よ」
カーテンが開いてアーニャが出てきた。
趙の方を振り向く。
「私、白龍君とお話がしたいから、こっちにいるわね。戦闘開始までそんなに時間ないし、着替える必要もないでしょ」
するとカーテンの向こうから趙が出てきて、僕を指差した。
「ダメよ! こんな女の子みたいな可愛い顔をしているけど、これだって男よ!」
これ!?……僕も、この女を嫌いになる事にしよう。
「白龍君は、私を襲ったりはしないわ」
「ダメダメ! 男はみんな狼なのよ」
「大丈夫よ。白龍君は、もう好きな女の子がいるから、私達に興味はないと思うわ」
その通り。特に趙 麗華。おまえにはない。
「男の子が怖いなら、あなた達はカーテンの向こうに隠れていれば。私は別に平気だから」
「アーニャ駄目よ。そっちへ行っては……」
「私は平気だと言っているのよ。それとも趙 麗華さん。あなたは他に私をこっちへ行かせたくない理由があるの?」
「な……ないわよ! そんなの」
趙は渋々カーテンを閉めた。
「私ね……」
アーニャは僕と向き合うように床に座り込んだ。
「嘘をついている人は分かるのよ」
え?
「別に超能力じゃないわ。嘘をついている人は、顔の表情とか見ていたら分かっちゃうの」
「俺が嘘をついているように見えるか?」
王はアーニャの前に顔をつきだした。アーニャは首を横にふる。
「もし、王君は嘘をついていると思ったら、私はこっちへ来ないわよ」
「そうか。じゃあ、アーニャは俺を信じてくれるんだな?」
「ええ。白龍君は?」
「僕は王を信じるよ。だって、あの趙 麗華って子、言っている事が矛盾だらけだし……」
趙 麗華は王のノックを聞いていないと言っていた。それにも拘らず、自分は「着替え中だから」と言ったのに王がドアを開けたと言っている。
ノックが聞こえていないなら、ドアの向こうの相手に「着替え中だから」という事を言うはずがない。
その矛盾に、本人だけが気が付いていないみたいだ。
「そうか。白龍も俺の味方になってくれるか。まったく、何なんだよ。あの女」
「王君。今、向こうに怒鳴り込むのはやめてね。戦闘開始まで時間がないから」
「分かっているよ。《天竜》に戻ったらとっちめてやる」
しかし、なんだってこんな事を……
楊さんが操縦室へ行くのを確認すると、趙は真ん中のカーテンを閉めてアーニャと柳を自分の方へ来るように促す。
「男はこっちへ来るんじゃないわよ! 良いわね!」
そう言って、趙はカーテンを閉めた。
「誰が行くか! この性悪女」
王もすっかり喧嘩腰だ。趙の方は言い返さず、ただカーテンの下から手を差し出してカーテンから延びている紐を床の突起に結びつけて固定していた。今、船は加速中なのでこのキャビンにも1Gの重力が作用しているが、エンジンが止まって慣性航行状態になればここは無重力だ。そのときにカーテンがまくれあがらないための処置らしい。
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「間違えなんかじゃない……ちょっとアーニャ! そっちは男部屋よ」
カーテンが開いてアーニャが出てきた。
趙の方を振り向く。
「私、白龍君とお話がしたいから、こっちにいるわね。戦闘開始までそんなに時間ないし、着替える必要もないでしょ」
するとカーテンの向こうから趙が出てきて、僕を指差した。
「ダメよ! こんな女の子みたいな可愛い顔をしているけど、これだって男よ!」
これ!?……僕も、この女を嫌いになる事にしよう。
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「ダメダメ! 男はみんな狼なのよ」
「大丈夫よ。白龍君は、もう好きな女の子がいるから、私達に興味はないと思うわ」
その通り。特に趙 麗華。おまえにはない。
「男の子が怖いなら、あなた達はカーテンの向こうに隠れていれば。私は別に平気だから」
「アーニャ駄目よ。そっちへ行っては……」
「私は平気だと言っているのよ。それとも趙 麗華さん。あなたは他に私をこっちへ行かせたくない理由があるの?」
「な……ないわよ! そんなの」
趙は渋々カーテンを閉めた。
「私ね……」
アーニャは僕と向き合うように床に座り込んだ。
「嘘をついている人は分かるのよ」
え?
「別に超能力じゃないわ。嘘をついている人は、顔の表情とか見ていたら分かっちゃうの」
「俺が嘘をついているように見えるか?」
王はアーニャの前に顔をつきだした。アーニャは首を横にふる。
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「そうか。じゃあ、アーニャは俺を信じてくれるんだな?」
「ええ。白龍君は?」
「僕は王を信じるよ。だって、あの趙 麗華って子、言っている事が矛盾だらけだし……」
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その矛盾に、本人だけが気が付いていないみたいだ。
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「王君。今、向こうに怒鳴り込むのはやめてね。戦闘開始まで時間がないから」
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しかし、なんだってこんな事を……
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