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第十章

アウトレンジ

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 レーダー上で、三機のドローンを示す光点が反転してくる様子が表示されていた。
 背後を振り向くと《マカロフ》の甲板で、弓を構えたミールの分身が、エラのプラズマボールを避けながら矢を放っている様子が見える。ドローンを早く片づけて、あそこへいかないと……

「北村さん、ドローンが動きを止めました」
「え?」

 レーダーに目をやると、芽衣ちゃんの言う通りドローンはショットガンの射程距離ギリギリで滞空している。なぜ……? 

「攻撃来ます! 避けて下さい!」
「え!?」

 いきなり、芽衣ちゃんに押され、僕は吹っ飛んでいった。
 反動で芽衣ちゃんも離れていく。
 直後、二人の間を、熱い小さい物体が通り過ぎていった。

 ライフル弾!

 こっちの射程外アウトレンジからの攻撃に切り替えたか。

 ならば!

「イナーシャルコントロール プロモーション2G」
 
 ドローンに向かって、加速をかけた。
 隣で芽衣ちゃんも、僕と同様の加速をかける。

 しかし……

 こっちの加速に合わせて、ドローンも後退していく。
 どうあっても、こっちの射程には入らないつもりか。

「芽衣ちゃん。ストップ」
「はい」

 加速を停止した。
 だが、こちらの動きに合わせてドローンも止まる。

 ドローンは僕達と一定距離を保ったまま、ライフルを打ち続けていた

「芽依ちゃん。二手に別れよう」
「でも、一人では、あの作戦は……」
「このままでは、分身達ミールズが全滅する。そうなってから《マカロフ》に行ったのでは、こっちが不利だ」
「二人同時に、《マカロフ》へ向かいましょう」
「しかし……」
「ドローンの操縦者は、《マカロフ》にいるのですよ。そっちを倒せば」
「そうだった!」

 僕達は《マカロフ》に向かった。当然、ドローンは追いかけてくるが構うことはない。

 待てよ……

「芽衣ちゃん。一度《マカロフ》を通り過ぎよう。僕に考えがある」
「え? はい」

 僕達は、分身達とエラが戦っている《マカロフ》のギリギリ上を通り過ぎる。途中、エラがプラズマボールを放ってきたが、遅すぎてまったく問題にならない。

 ある程度離れたところで、僕達は反転して《マカロフ》へ戻っていく。
 後部甲板ギリギリの高さで、僕達は停止した。
 ドローンは、僕達に向かって発砲するが……

 僕達とドローンの間にいたエラが、突然プラズマの壁に包まれた。

 そう。僕達はエラの高周波磁場を盾にして、ドローンからの攻撃を防いだのだ。
 
 もちろん、エラが黙って盾にされている筈がない。
 すぐに僕達へ向かってプラズマボールを放ってきた。
 僕達は、とっさに左右に分かれて、プラズマボールを躱す。
 
 エラから離れた時、ドローンはショットガンの射程内に入っていた。

 エラの高周波磁場はレーダーを妨害にする上に、プラズマの壁は視界も遮る。ドローンは気が付かないうちに、ショットガンの射程内に踏み込んでしまっていたのだ。

 慌てて逃げようとするが遅い。

 僕も芽衣ちゃんも、マガジンが空になるまで撃ち続けた。

 二機のドローンが火を吹いて落ちていく。

 一機は猛スピードで《マカロフ》から離れていった。

「芽衣ちゃん。奴が戻ってくる前に、エラを倒そう」
「はい」

 通信機を手に取った。

「ミール。後部甲板のエラは、僕達が相手する。もう一人のエラを牽制してくれ」
『はい! カイトさんには、一歩も近づけません』

 ミールの返事を確認して、僕はエラの正面に降り立った。
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