上 下
295 / 850
第十章

アウトレンジ

しおりを挟む
 レーダー上で、三機のドローンを示す光点が反転してくる様子が表示されていた。
 背後を振り向くと《マカロフ》の甲板で、弓を構えたミールの分身が、エラのプラズマボールを避けながら矢を放っている様子が見える。ドローンを早く片づけて、あそこへいかないと……

「北村さん、ドローンが動きを止めました」
「え?」

 レーダーに目をやると、芽衣ちゃんの言う通りドローンはショットガンの射程距離ギリギリで滞空している。なぜ……? 

「攻撃来ます! 避けて下さい!」
「え!?」

 いきなり、芽衣ちゃんに押され、僕は吹っ飛んでいった。
 反動で芽衣ちゃんも離れていく。
 直後、二人の間を、熱い小さい物体が通り過ぎていった。

 ライフル弾!

 こっちの射程外アウトレンジからの攻撃に切り替えたか。

 ならば!

「イナーシャルコントロール プロモーション2G」
 
 ドローンに向かって、加速をかけた。
 隣で芽衣ちゃんも、僕と同様の加速をかける。

 しかし……

 こっちの加速に合わせて、ドローンも後退していく。
 どうあっても、こっちの射程には入らないつもりか。

「芽衣ちゃん。ストップ」
「はい」

 加速を停止した。
 だが、こちらの動きに合わせてドローンも止まる。

 ドローンは僕達と一定距離を保ったまま、ライフルを打ち続けていた

「芽依ちゃん。二手に別れよう」
「でも、一人では、あの作戦は……」
「このままでは、分身達ミールズが全滅する。そうなってから《マカロフ》に行ったのでは、こっちが不利だ」
「二人同時に、《マカロフ》へ向かいましょう」
「しかし……」
「ドローンの操縦者は、《マカロフ》にいるのですよ。そっちを倒せば」
「そうだった!」

 僕達は《マカロフ》に向かった。当然、ドローンは追いかけてくるが構うことはない。

 待てよ……

「芽衣ちゃん。一度《マカロフ》を通り過ぎよう。僕に考えがある」
「え? はい」

 僕達は、分身達とエラが戦っている《マカロフ》のギリギリ上を通り過ぎる。途中、エラがプラズマボールを放ってきたが、遅すぎてまったく問題にならない。

 ある程度離れたところで、僕達は反転して《マカロフ》へ戻っていく。
 後部甲板ギリギリの高さで、僕達は停止した。
 ドローンは、僕達に向かって発砲するが……

 僕達とドローンの間にいたエラが、突然プラズマの壁に包まれた。

 そう。僕達はエラの高周波磁場を盾にして、ドローンからの攻撃を防いだのだ。
 
 もちろん、エラが黙って盾にされている筈がない。
 すぐに僕達へ向かってプラズマボールを放ってきた。
 僕達は、とっさに左右に分かれて、プラズマボールを躱す。
 
 エラから離れた時、ドローンはショットガンの射程内に入っていた。

 エラの高周波磁場はレーダーを妨害にする上に、プラズマの壁は視界も遮る。ドローンは気が付かないうちに、ショットガンの射程内に踏み込んでしまっていたのだ。

 慌てて逃げようとするが遅い。

 僕も芽衣ちゃんも、マガジンが空になるまで撃ち続けた。

 二機のドローンが火を吹いて落ちていく。

 一機は猛スピードで《マカロフ》から離れていった。

「芽衣ちゃん。奴が戻ってくる前に、エラを倒そう」
「はい」

 通信機を手に取った。

「ミール。後部甲板のエラは、僕達が相手する。もう一人のエラを牽制してくれ」
『はい! カイトさんには、一歩も近づけません』

 ミールの返事を確認して、僕はエラの正面に降り立った。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話

六剣
恋愛
社会人の鳳健吾(おおとりけんご)と高校生の鮫島凛香(さめじまりんか)はアパートのお隣同士だった。 兄貴気質であるケンゴはシングルマザーで常に働きに出ているリンカの母親に代わってよく彼女の面倒を見ていた。 リンカが中学生になった頃、ケンゴは海外に転勤してしまい、三年の月日が流れる。 三年ぶりに日本のアパートに戻って来たケンゴに対してリンカは、 「なんだ。帰ってきたんだ」 と、嫌悪な様子で接するのだった。

おっさん、異世界でスローライフはじめます 〜猫耳少女とふしぎな毎日〜

桃源 華
ファンタジー
50代のサラリーマンおっさんが異世界に転生し、少年の姿で新たな人生を歩む。転生先で、猫耳の獣人・ミュリと共にスパイス商人として活躍。マーケティングスキルと過去の経験を駆使して、王宮での料理対決や街の発展に挑み、仲間たちとの絆を深めながら成長していくファンタジー冒険譚。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...