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第十章

一人でも大変なのに、二人も……

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 成瀬真須美の話では、あのドローンには……

「芽依ちゃん。回避運動を! あいつは、対戦車ライフルを持っている」
「はい」

 僕達は、空中をジグザグに飛び回った。

 その近くを、熱い何かが通り過ぎていくのがロボットスーツのセンサーで分かる。目には見えないが、対戦車ライフルの弾丸だ。
 対物アンチマテリアルライフルと言うのが正しいらしいが……
 とにかく前の僕は、あれに殺された。当たるわけには行かない。
 撃ち返したいが、まだショットガンの射程外。

 しかし……発射速度遅くないか?

「芽衣ちゃん。僕がやられたという対戦車ライフルの種類とか分かるかい?」
「弾の口径が十四・五ミリという事は分かりましたが、銃は見つかっていません。推測ですが第二次大戦中の銃が使われたと思われます」
「第二次大戦中!? だから、対物ライフルと言わないで対戦車ライフルと言っていたのか」
「ええ。その時代なら対戦車ライフルという言い方が正しいですから」
 
 通信が入った。どうせ矢納さんだと思うが……

『やい! 北村!』

 ほらやっぱり……

『フラフラ飛ぶな! まっすぐ飛べ!』
「僕が、どんな飛び方しようが、あなたに指図される言われはない」
『これじゃあ、弾が当たらないだろう』
「あんたは『大人しく殴らせろ』と言われたら、殴らせるのか!?」
『俺は殴らせないが、おまえは殴らせろ』
「全力でお断りします。あなたこそ、舐めてるんですか? ドローンにセミオートライフルなんか搭載して。空中戦で、そんな物が役に立つとでも?」

 そう。むこうのドローンが搭載していたのは、セミオートライフルだったのだ。地上の目標ならともかく、これでは空中の標的には当たらない。

『しょうがないだろ。帝国のコンピューターには、旧式兵器のデータしかなかったんだ』
「なんで?」
『知るか! 俺が聞きたいぐらいだ! とにかく、この銃ならお前の装甲を貫けるから積んできた』
「いくら威力があっても、当たらなければどうにもならないんですけど……」
『やかましい!』

 そんな事を言っている間にショットガンの射程内に入った。

 芽衣ちゃんがショットガンを構える。

「壊れなさい! 潰れなさい! 滅しなさい!」

 黙って撃ちなさい。

 と言いたいところたが、芽依ちゃんは、これをやらないと撃てないらしい。大人しい大和撫子から、勇猛果敢な戦乙女ワルキューレにチェンジするための呪文のようなものだと、香子が言っていた。

 とにかく芽依ちゃんの一連射で、ドローン二機が火を噴いて落ちていく。 

 僕もそれをぼうっと見ていたわけではなく、やはり連射してドローン二機を撃ち落としていた。

 ドローンからも撃ってきたが、いくら威力があるとはいえ空中戦で単発銃が当たるわけがない。
 射手がデューク東郷なら話は別だが、矢納さんじゃ無理だろうな。
 
 残りのドローン三機と僕達はすれ違った。
 
 反転して叩くか? このまま直進して《マカロフ》にいるエラを叩いてから迎え撃つか?
 僕が決断するより早く、芽衣ちゃんが提案してきた。

「北村さん! 反転して迎え撃ちましょう」
「なぜ?」
「むこうの銃は所詮セミオートです。空中戦では当たりません。しかし、《マカロフ》の近くで戦うと、船体に隠れて狙撃してくる危険があります」
「なるほど」

 反転しようとしたとき、ミールから通信が入る。

『カイトさん。エラが二人現れました』
「なに!?」

 あんなの一人でも大変なのに、二人も……
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