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第十章
急速浮上
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潜望鏡が敵艦隊の姿を捉えたのは、走り始めて十分後のこと。
しかし、木造帆船ばかりで《マカロフ》の姿は見えない。木造帆船の群れに遮られているようだ。
「姿が見えなくても平気ね。スクリュー音は、ばっちり聞こえているね」
レイホーが僕の方を振り向く。
「魚雷を撃ったらすぐに浮上するね。お兄さんと芽衣ちゃんは、外で飛び出す準備をしておくね」
「分かった。ありがとう。レイホー」
僕と芽衣ちゃんは、ロボットスーツのバイザーを閉じる。
「ミール。ミク。僕らが攪乱するから、本体の方を頼むよ」
「任せて下さい。カイトさん」「任せて! お兄ちゃん」
レイホーが、正面モニター向き直る。
「ロンロン。魚雷発射管一番二番三番オープン」
『了解。四番はいかがします?』
「四番は、後ろから着いてくる痴漢退治に残しておくね」
痴漢!?
「さっきの水中ドローンか。もう追いついて来た?」
「さっきから、スクリュー音がどんどん近づいてくるね。片付けておかないと厄介ね」
「しかし、後ろに、魚雷は撃てないだろう?」
「お兄さん、大丈夫。方法はあるね。そのために船を軽くしたいから、お兄さんと、芽衣ちゃんが飛び出した後でやるね」
続いてレイホーは、ミールとミクに視線を向ける。
「あんた達は席について、しっかりシートベルト絞めるね」
「はい……ええっと……ミクちゃん、このシートベルトどうやるのですか?」
「これはね」
ミクが手伝って、ミールのシートベルトを締める。
「二人とも、目を回さないようにね」
レイホー、何をやる気だ?
「ロンロン。魚雷発射用意」
『了解しました。目標はすべて《マカロフ》でよろしいですね?』
「当然。雑魚の木造帆船に魚雷なんてもったいないね」
「レイホーさん。この魚雷で《マカロフ》を沈められないの?」
ミクが不思議そうな顔で質問した。
「ミクちゃん、それは無理。こんな小型魚雷じゃ《マカロフ》の装甲は破れないね。でも、向こうにはそれが分からないから、魚雷がくれば回避運動ぐらいはしてくれる。その隙に浮上して、お兄さんと芽衣ちゃんが出撃するね」
「そっか。じゃあ、《マカロフ》はあたしとミールちゃんで、やっつけるしかないんだね」
「ミク。言っておくが、沈めなくていいぞ。レーザー砲とアスロックランチャーさえ潰せばいいんだから」
「うん。分かった。みんな壊しちゃえばいいのね」
「だから……」
人の話を聞け! と、僕が言いかけた時、レイホーの号令が轟いた。
「魚雷発射! 《水龍》急速浮上!」
いかん! もう出撃だ。
「芽衣ちゃん行くよ」
「はい」
「イナーシャルコントロール0G」
重力を打ち消して、僕と芽衣ちゃんは司令塔を登っていった。
ハッチの下でしばらく待機。
水面から出たら、下からの操作でハッチを開く事になっていた。
その待ち時間数秒が一時間に感じられる。
ロボットスーツの通信機から、レイホーの声が聞こえてきた。
『水面に出た! ハッチ開くね!』
ハッチが開いた。
木造帆船で埋め尽くされた水面に、僕と芽衣ちゃんは飛び出していく。
しかし、木造帆船ばかりで《マカロフ》の姿は見えない。木造帆船の群れに遮られているようだ。
「姿が見えなくても平気ね。スクリュー音は、ばっちり聞こえているね」
レイホーが僕の方を振り向く。
「魚雷を撃ったらすぐに浮上するね。お兄さんと芽衣ちゃんは、外で飛び出す準備をしておくね」
「分かった。ありがとう。レイホー」
僕と芽衣ちゃんは、ロボットスーツのバイザーを閉じる。
「ミール。ミク。僕らが攪乱するから、本体の方を頼むよ」
「任せて下さい。カイトさん」「任せて! お兄ちゃん」
レイホーが、正面モニター向き直る。
「ロンロン。魚雷発射管一番二番三番オープン」
『了解。四番はいかがします?』
「四番は、後ろから着いてくる痴漢退治に残しておくね」
痴漢!?
「さっきの水中ドローンか。もう追いついて来た?」
「さっきから、スクリュー音がどんどん近づいてくるね。片付けておかないと厄介ね」
「しかし、後ろに、魚雷は撃てないだろう?」
「お兄さん、大丈夫。方法はあるね。そのために船を軽くしたいから、お兄さんと、芽衣ちゃんが飛び出した後でやるね」
続いてレイホーは、ミールとミクに視線を向ける。
「あんた達は席について、しっかりシートベルト絞めるね」
「はい……ええっと……ミクちゃん、このシートベルトどうやるのですか?」
「これはね」
ミクが手伝って、ミールのシートベルトを締める。
「二人とも、目を回さないようにね」
レイホー、何をやる気だ?
「ロンロン。魚雷発射用意」
『了解しました。目標はすべて《マカロフ》でよろしいですね?』
「当然。雑魚の木造帆船に魚雷なんてもったいないね」
「レイホーさん。この魚雷で《マカロフ》を沈められないの?」
ミクが不思議そうな顔で質問した。
「ミクちゃん、それは無理。こんな小型魚雷じゃ《マカロフ》の装甲は破れないね。でも、向こうにはそれが分からないから、魚雷がくれば回避運動ぐらいはしてくれる。その隙に浮上して、お兄さんと芽衣ちゃんが出撃するね」
「そっか。じゃあ、《マカロフ》はあたしとミールちゃんで、やっつけるしかないんだね」
「ミク。言っておくが、沈めなくていいぞ。レーザー砲とアスロックランチャーさえ潰せばいいんだから」
「うん。分かった。みんな壊しちゃえばいいのね」
「だから……」
人の話を聞け! と、僕が言いかけた時、レイホーの号令が轟いた。
「魚雷発射! 《水龍》急速浮上!」
いかん! もう出撃だ。
「芽衣ちゃん行くよ」
「はい」
「イナーシャルコントロール0G」
重力を打ち消して、僕と芽衣ちゃんは司令塔を登っていった。
ハッチの下でしばらく待機。
水面から出たら、下からの操作でハッチを開く事になっていた。
その待ち時間数秒が一時間に感じられる。
ロボットスーツの通信機から、レイホーの声が聞こえてきた。
『水面に出た! ハッチ開くね!』
ハッチが開いた。
木造帆船で埋め尽くされた水面に、僕と芽衣ちゃんは飛び出していく。
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