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第十章

 成瀬真須美からの連絡

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「ご主人様」

 背後からPちゃんの声? 振り向くと、Pちゃんが人型ドローンを持っていた。

「あの方が、お話したいそうです」

 いけね! 成瀬真須美との連絡を忘れていた。
 シェルター内は、電波が届かないからな…… 
 Pちゃんから、人型ドローンを受け取った。

「成瀬さんですか?」
『やっとシェルターから出てきてくれたのね。矢納がどうやって逃げたか分かったわ』
「どうやったんです?」
『私達がリトル東京を逃げ出す時、矢納はロボットスーツ用のICパックに使う非バリオン物質を盗み出していったの。私はてっきり自分用のロボットスーツを作った際に使うためかと思っていたけど、それだけじゃなかった。あいつが使っていたトレーラー牽引用の車両に、飛行能力を持たせるのにも使っていたのよ。あいつが轍も残さずに逃げられたのは、車が宙に浮かんでいたから』

 以外と単純な方法だったな。

『ただし、レーダーに映らない様に超低空飛行でね』
「それじゃあ、あまりスピードは出ないのでは?」
『そうよ。だから、あいつはすぐ近くの窪地に隠れて君をやり過ごしていたの』

 しまった! あの時、周辺をよく探せば見つけられたのか!

「なるほど。ところでもう一つ聞きたいのですが、なんで水門を開いたのです?」
『こちらの作戦までは、教えられないわ』
「作戦までは聞いていません。どうせ艦隊で来るためでしょう。僕が聞きたいのは……」

 僕はドローンを溺死体の一つに突き付けた。

「彼らが運河から逃げていると言うのに、なぜ水門を開いたのです?」
『え!? まだ運河に、人がいたの?』

 知らなかったのか?

「いたから、僕らが救助活動をしているのですけど……」
『冗談じゃないわ! 運河には、もう人がいないというから水門を開いたのに』
「あなたが開いたのですか?」
『当然よ。この水門は《天竜》の乗組員が作ったコンピューターで制御されている。科学文明を失った帝国人には動かせないわ』
「ドローンとかで確認しなかったのですか?」
『そんな余裕なかったのよ。帝国軍の提督が、全員運河から退避させたというから信じたのに……』
「いいでしょう。あなたは知らなかったのですね。それで話を戻しますが、矢納さんは、次はどんな行動をとります?」
『矢納も一緒に攻撃に向かったわ。どこにいるかは分からないけど、対戦車ライフルを装備したジェットドローンを用意していたから気を付けてね。それともう一つ、注意してほしい事が……』
「なんでしょう?」
『エラ・アレンスキーが、そっちへ向かったわ』
「え? あの女は死んだはず?」
『あの女が、コピー人間だという事は知っているわね。あいつは三十年前に、八人作られたのよ』
「あんなのが八人も!」
『そのうち一人は、君の仲間が倒したわね。以前に炎の魔神カ・ル・ダモンが一人倒している。まだ六人はいるわ』

 エラがダモンさんと戦ったときに言っていたナンバー8って、そういう事だったのか。

「全員粛清対象なのですか?」
『それは分からない。でも、そっちへ向っている奴は粛清対象よ』
「そっちが艦隊で来るのは分かっています。どの船を沈めればいいか、教えてもらえますか?」
『ちょっと待って』

 向こうから、ガサカサと紙をめくる音が聞こえた。

『マカロフという船だったわ。これに矢納もエラも乗っているのだけど……これを沈めるのはちょっと厄介よ』
「厄介? どうせ木造帆船でしょ」
『それが、ちょっと違うのよ。一隻だけ……ごめん! これ以上連絡は出来ない。また後で』

 通信機は切れた。
 なぜ沈めるのが厄介なのか、指令室に行って僕はそれを知ることになる。 
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