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第一章

あたしのクラスメートは猫ストーカー

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「美樹本さん、実は私……」
「なに?」
「猫ちゃんが大好きなんです」
「はあ?」
「あのプリチーでラブリーな生き物が好きで好きでたまらないのです」
「そうなの?」
「美樹本さんもそう思いません」
「そう思うって?」
「猫ちゃん可愛いって」
「そりゃあ、あたしも猫好きだけど……」
 星野さんはあたしの両手を握りしめる。
「そうでしょう。そう思うでしょう。あのモフモフした生き物はきっと、神様が人間の心を癒すため地上に使わした天使なのよ」
 いや……ちょっと大げさでは……
 は! そういう事か。ぺぺが言ってた変質者というのは……
「おい。瑠璃華。どうなってるんだ?」
 やばい!! 
 あたしは慌ててコートの裾を押さえてリアルが顔を出すのを防いだ。
 今、星野さんにリアルを見られるわけにはいかにない。
 ぺぺの言ってた変質者というのは人間に対しての変質者じゃなくて、猫に対してのという意味だったんだ。
「美樹本さん。今の声、誰?」
「こ……これは……その」
 なんていいわけしよう?
「おい。瑠璃華」
「あんたは、ちょっと黙ってなさい!!」
 思わずコートの内側に怒鳴ってしまった。
「美樹本さん。コートの中に小人でもいるの?」
「いや……そうじゃなくて……携帯よ。今の」
「そうなの? それにしては音が大きくない?」
「スピーカーモードよ。それより、猫が好きなことと、その格好となんの関係があるの?」
「私ね、毎朝こうやってキャットウオッチングをしてるんだけど」
 言い方を変えるなら猫ストーカーね。   
「私の母と弟が猫アレルギーなのよ」
「え?」
「だから、家の中に猫の毛を持ち込むわけにはいかなくて」 
「それは大変ね」
「でしょ。だからキャットウオッチングに行くとき、こうして全身をおおう服を着て、家に入るときに毛を払わなきゃいけないの」
 まあ、あたしも猫好きだけど、さすがそこまでは……
「ところで美樹本さん」
 星野さんはポケットから写真を取りだした。
「この猫知らないかしら?」
「え?」
 写真にはブロック塀の上を歩く一匹の黒猫が写っていた。
 あたしはその猫を知っている。
 たぶん、世界中の誰よりも。
 だってその猫は、今あたしのコートの内側にしがみついているんだから……
「さ……さあ。この町に黒猫なんていっぱいいるから」
「そうね。でも、同じ黒猫でも一匹一匹違うわ。自慢じゃないけど私は町内の猫は全部見分けられるわ」
 ううん……自慢できることなのか、できないことなのかわからんが……凄いことだというのは確かね。
 それにしても、リアルはいつこんな写真撮られたんだろう?
 あたしの家に来てからほとんど外へ出てないはずだけど……
「でも、この猫がどうかしたの?」
「迷い猫なの。私の猫ブログを見た人が、見つけたら知らせてって送って来たの」
「へえ、星野さん。猫ブログもって……ん?」
「どうしたの?」
「ひょっとして、またたびさん?」
 星野さんの顔がぱっと輝いた。
「やだ!! 美樹本さんも見ててくれたの。嬉しい」
 あの猫ブログの管理人がクラスメートだったとは……もっと年輩の人だと思ってた。
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