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終章
終章
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地球での報告を終えた後、あたしは再び《楼蘭》に戻った。あたしにはやはりこの小惑星が性に合っているようだ。
あたしの報告を受けた宇宙省は時空穿孔船の量産を検討し始めている。
《楼蘭》に戻ったあたしが最初に受けた仕事は、猫達の惑星にもう一度行くことだった。もちろんサーシャ達ロシア側の調査官も一緒に。
今回は《リゲタネル》を使わないで、普通に生活産業用の大型時空管を使って入って行った。使いたくても《リゲタネル》は修理中だから仕方がない。
今回は地球外知的生命体もいるので国連の査察官も同行した。
CFCの部隊は案の定残っていたが、彼らはあっさり武装解除に応じた。
猫達がひどい事をされていないか心配だったがそれは大丈夫だったようだ。CFCの調査隊もあの惑星に降りたらしいが、幸い彼らも猫好きだったらしい。
あたしとサーシャはトロトン・ナツメと再会して約束どおり猫達を地表におろしてあげた。でも、猫達も文明を再建するのに、これからが大変だろうな。
トロトン・ナツメはそのために地球に留学生を送ると言っていたけど、うまくいくといいな。
それはいいとして、カペラへのワームホールはまだ開けない。この恒星系に戻って来るまでどのくらいかかるか分からないので、あたしはマーカーのビーコンを六十日間止めるように設定してしまったからだ。
「大変だったね」
あたしの話を聞き終えた屋台のおじさんは、あたしにベトナムコーヒーを奢ってくれた。
「それで、ビーコンは明日になったら出るんだね?」
「そう。だから、これ食べたらすぐ出発しなきゃならないの」
あたしは二杯目のフォーに手を付けた。
「やっぱりここにいた」
サーシャの声に振り向いた。
「サーシャ。いつ帰ってきたの?」
彼女はまだ猫の惑星にいたはずだ。
「さっき帰ってきたところ。これから地球に行くの。その前に美陽に会いたいという人がいるから連れてきたわ」
「え? あたしに」
「正確には人じゃないけど」
サーシャの背後から白いものが現れた。
「あなたは!」
それは、以前にあたしが浮島から分離した岩から助け出した猫だった。
「ミハル」
猫はあたしに飛びついてくる。
あたしも思わず抱きしめる。
「ミハル・ボク・チキユー・イク」
「あなた日本語を……そうか。あなたが留学することになったのね」
「ミハル・アリガトウ・ソレ・イイタカッタ」
あたしは猫をそっと下ろした。
「頑張ってね」
「それとね。さっき日本基地に寄ってきたら《リゲタネル》が到着していたわよ」
「そうか、もうそんな時間ね」
「その時に慧君に会ったんだけど、船の中に美陽に会いたがっている人が乗ってるらしいわ」
「え?」
「現場検証のために、国際警察の刑事と一緒にカペラに行く人よ。でも《楼蘭》では船から出られないそうだけど」
「サーシャ」
「宿題の提出期限が、少し早くなっちゃったわね」
あたしは勘定を済ませると、日本基地へと走った。地表に上るエレベーターの速度がいつになく遅く感じる。
ポートに着くと飛行船を思わせる《リゲタネル》の巨体がそこで待っていた。
あたしはハッチから中に入り、重力の無い狭い通路の中を操縦室に向かって進む。
「美陽!? 美陽なのか!?」
操縦室の中にその人はいた。
「お父さん」
了
あたしの報告を受けた宇宙省は時空穿孔船の量産を検討し始めている。
《楼蘭》に戻ったあたしが最初に受けた仕事は、猫達の惑星にもう一度行くことだった。もちろんサーシャ達ロシア側の調査官も一緒に。
今回は《リゲタネル》を使わないで、普通に生活産業用の大型時空管を使って入って行った。使いたくても《リゲタネル》は修理中だから仕方がない。
今回は地球外知的生命体もいるので国連の査察官も同行した。
CFCの部隊は案の定残っていたが、彼らはあっさり武装解除に応じた。
猫達がひどい事をされていないか心配だったがそれは大丈夫だったようだ。CFCの調査隊もあの惑星に降りたらしいが、幸い彼らも猫好きだったらしい。
あたしとサーシャはトロトン・ナツメと再会して約束どおり猫達を地表におろしてあげた。でも、猫達も文明を再建するのに、これからが大変だろうな。
トロトン・ナツメはそのために地球に留学生を送ると言っていたけど、うまくいくといいな。
それはいいとして、カペラへのワームホールはまだ開けない。この恒星系に戻って来るまでどのくらいかかるか分からないので、あたしはマーカーのビーコンを六十日間止めるように設定してしまったからだ。
「大変だったね」
あたしの話を聞き終えた屋台のおじさんは、あたしにベトナムコーヒーを奢ってくれた。
「それで、ビーコンは明日になったら出るんだね?」
「そう。だから、これ食べたらすぐ出発しなきゃならないの」
あたしは二杯目のフォーに手を付けた。
「やっぱりここにいた」
サーシャの声に振り向いた。
「サーシャ。いつ帰ってきたの?」
彼女はまだ猫の惑星にいたはずだ。
「さっき帰ってきたところ。これから地球に行くの。その前に美陽に会いたいという人がいるから連れてきたわ」
「え? あたしに」
「正確には人じゃないけど」
サーシャの背後から白いものが現れた。
「あなたは!」
それは、以前にあたしが浮島から分離した岩から助け出した猫だった。
「ミハル」
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「頑張ってね」
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「そうか、もうそんな時間ね」
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「え?」
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「サーシャ」
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あたしはハッチから中に入り、重力の無い狭い通路の中を操縦室に向かって進む。
「美陽!? 美陽なのか!?」
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