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第六章 逃走
罠
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応急修理を終えた《リゲタネル》は、一路ワームホールを目指していた。
「変だな」
ディスブレイを見ながら慧が呟く。
「どうしたの? 慧」
「重力波が止まりそうなんだ」
「ええ?」
どういう事? 罠?
「サーシャ。どう思う?」
「罠……にしては変ね。偶然のトラブルかしら? だとすると好都合かも」
「偶然のトラブルだとしたら、修理に来るかも知れないわ。そうなるとマーフィと鉢合わせになるかもしれない。慧、《リゲタネル》はそこの渓谷に下ろして」
「分かった」
千メートル級の山に囲まれた渓谷に《リゲタネル》は着陸した。ここなら簡単には見付からないだろう。
あたしとサーシャ、慧の三人は気密服を着てジェットパックを背負い出発した。
渓谷沿いに十分ほど飛び続けた時……
「ストップ」
と叫んでから、あたしは二人に静止の合図を送る。
ちなみに盗聴を避けるため通信機を切っておいたので、ちゃんと聞こえたか心配だが……
サーシャはあたしのすぐ左で静止した。慧はあたしのすぐ下で静止。
ちゃんと聞こえたようだ。
「どうしたの?」
と言いかけて、サーシャも気が付いたらしい。
異様な機械音に……
「二人ともこっちへ……」
慧が岩陰から手を振っている。
メタンクラゲに襲われる危険があるので、できれば地表に降りたくないがしかたない。
あたしとサーシャが岩陰に隠れると同時に、山の影からそれは現れた。
マーフィの船 《ファイヤー・バード》が。
あたし達には気がついてないようだ。
岩陰から様子を見ていると、何か大きな荷物を持った人がエアロックから出てきてジェットパックで降りてくる。
その人を下ろすと《ファイヤー・バード》はそのまま飛び去ってしまった。
あたしは二人に手で「行くわよ」と合図してその人物が降りていく方向へ向かった。
そして見つけた。
時空管破壊装置を。
以前に《楼蘭》で見たときは何も支えのない宇宙空間で巨大な球体がクルクル回っているだけだったが、ここの装置は台座の上に球が固定されていた。その台座の上でクルクル回るようになっていたのだと思うが、今は球と台座の間に何かが挟まっている。
どうやらメタンクラゲの死体のようだ。
彼はあれを取り除きにきたのね。
でも、船外作業は二人一組が基本だというのに一人でやらされるなんて。
なんか可哀想。
それにしても彼は何をやってるのだろう? 何かの装置をセットしているようだけど……
て! 投光機!? バ……バカ! 死にたいの!
いや、バカも何も彼らはこの衛星の自然環境を知らないのだから仕方ないのだろうけど……
あたし達は装置にさらに近づいた。
彼の鼻歌が聞こえてくる。
作業が終わったのは十分後。
装置は再びクルクル回りだした。
それにしてもあれだけ強力な光を出していたのに、よくメタンクラゲは現れなかったものね。よほどの幸運の持ち主なのか?
彼は通信機を取り出した。
「作業終わりました。すみませんがジェットパックの燃料がもうないので向えに来てもらえませんか」
ヤバイ!! また《ファイヤー・バード》が来る。隠れなきゃ。
「ええ!? 歩いて戻るんですか? でも……はい……分かりました。あの、機材は置いていっていいですか? はい……わかりました」
彼は通信機を切る。
もくもくと彼は機材を片付け始めた。
こんなところを歩いて帰れって?
鬼かよ!! マーフィという奴は……
まあ、それはともかく。
あたしは振り返って小声でいった。
「彼が行ったら、やるわよ」
サーシャと慧は無言で頷く。
「うわわわわ!!」
悲鳴が聞こえたのはその時だった。
「変だな」
ディスブレイを見ながら慧が呟く。
「どうしたの? 慧」
「重力波が止まりそうなんだ」
「ええ?」
どういう事? 罠?
「サーシャ。どう思う?」
「罠……にしては変ね。偶然のトラブルかしら? だとすると好都合かも」
「偶然のトラブルだとしたら、修理に来るかも知れないわ。そうなるとマーフィと鉢合わせになるかもしれない。慧、《リゲタネル》はそこの渓谷に下ろして」
「分かった」
千メートル級の山に囲まれた渓谷に《リゲタネル》は着陸した。ここなら簡単には見付からないだろう。
あたしとサーシャ、慧の三人は気密服を着てジェットパックを背負い出発した。
渓谷沿いに十分ほど飛び続けた時……
「ストップ」
と叫んでから、あたしは二人に静止の合図を送る。
ちなみに盗聴を避けるため通信機を切っておいたので、ちゃんと聞こえたか心配だが……
サーシャはあたしのすぐ左で静止した。慧はあたしのすぐ下で静止。
ちゃんと聞こえたようだ。
「どうしたの?」
と言いかけて、サーシャも気が付いたらしい。
異様な機械音に……
「二人ともこっちへ……」
慧が岩陰から手を振っている。
メタンクラゲに襲われる危険があるので、できれば地表に降りたくないがしかたない。
あたしとサーシャが岩陰に隠れると同時に、山の影からそれは現れた。
マーフィの船 《ファイヤー・バード》が。
あたし達には気がついてないようだ。
岩陰から様子を見ていると、何か大きな荷物を持った人がエアロックから出てきてジェットパックで降りてくる。
その人を下ろすと《ファイヤー・バード》はそのまま飛び去ってしまった。
あたしは二人に手で「行くわよ」と合図してその人物が降りていく方向へ向かった。
そして見つけた。
時空管破壊装置を。
以前に《楼蘭》で見たときは何も支えのない宇宙空間で巨大な球体がクルクル回っているだけだったが、ここの装置は台座の上に球が固定されていた。その台座の上でクルクル回るようになっていたのだと思うが、今は球と台座の間に何かが挟まっている。
どうやらメタンクラゲの死体のようだ。
彼はあれを取り除きにきたのね。
でも、船外作業は二人一組が基本だというのに一人でやらされるなんて。
なんか可哀想。
それにしても彼は何をやってるのだろう? 何かの装置をセットしているようだけど……
て! 投光機!? バ……バカ! 死にたいの!
いや、バカも何も彼らはこの衛星の自然環境を知らないのだから仕方ないのだろうけど……
あたし達は装置にさらに近づいた。
彼の鼻歌が聞こえてくる。
作業が終わったのは十分後。
装置は再びクルクル回りだした。
それにしてもあれだけ強力な光を出していたのに、よくメタンクラゲは現れなかったものね。よほどの幸運の持ち主なのか?
彼は通信機を取り出した。
「作業終わりました。すみませんがジェットパックの燃料がもうないので向えに来てもらえませんか」
ヤバイ!! また《ファイヤー・バード》が来る。隠れなきゃ。
「ええ!? 歩いて戻るんですか? でも……はい……分かりました。あの、機材は置いていっていいですか? はい……わかりました」
彼は通信機を切る。
もくもくと彼は機材を片付け始めた。
こんなところを歩いて帰れって?
鬼かよ!! マーフィという奴は……
まあ、それはともかく。
あたしは振り返って小声でいった。
「彼が行ったら、やるわよ」
サーシャと慧は無言で頷く。
「うわわわわ!!」
悲鳴が聞こえたのはその時だった。
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