時空穿孔船《リゲタネル》

津嶋朋靖(つしまともやす)

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第五章 襲来

逃げ道

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 目を開くと教授とサーシャと慧が心配そうにあたしの顔を覗き込んでいる。
 あたしはカバっと跳ね起きた。
 《リゲタネル》の仮眠室のベッドの上だった。
「あたしはどれだけ寝てたの!?」
「落ち着いて。寝ていたのは十分だけよ」
「はい、水」
 慧の差し出したコップをあたしは受け取る。
 冷たい水かあたしの喉を潤した。
「ありがとう。慧」
「少しは落ち着いたかしら?」
「ええ。でも、あんなに取り乱しちゃって、あたし船長失格だわ」
 サーシャは呆れたような顔をあたしに向けた。
「馬鹿ね。そんな事誰だってあるわよ。だいたいあんた真面目すぎるのよね」
「真面目? あたしが」
「そうそう。たまには爆発するのもいいじゃない」
 よくないよ。恥ずかしい。
「それより、状況は?」
 教授は底意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「心配するな船長。マーフィの奴、必死になってワシらを探しておる。まったく見当違いなところをな」
 でも、このワームホールが見付かるのは時間の問題だろうな。
 このままワームホールを閉じたら、あの惑星はどうなるだろう?
 CFCに蹂躙されて、あの惑星の猫達は殺されてしまうの?
 あたしは枕元にある小箱を開いた。
 中にはトロトン・ナツメがくれた宝玉。
 調べたら桃色水晶だった。そんな高価なものではないが、この宝玉には猫達の切実な思いが込められている。
 ごめん、ナツメ。あたしにはあなた達を助けに行けない。
「ところでなあ船長」
「え? なんですか」
「ワームホールを閉じる前に、もう少しプローブのデータを集めておきたいのだがよいか?」
「プローブのデータ? どの?」
「内惑星と外惑星に送ったやつじゃよ」
 外惑星!
「教授! ちょっと、さっきのデータ見せてください」
「さっきのとは?」
「プローブの認識ビーコンの出てたという惑星です」
「ああ、あれか」
 さっきあの写真を見たとき、あたしの心に引っ掛かるものがあった。
 あたしはFMDを装着して惑星の写真をもう一度見る。
 まさか!?
 今度はプローブの認識ビーコンのパターンを、あたしの持っているデータと照合する。
 こんな事って!!
「どうしたんじゃ? 船長」
 見つけた! 逃げ道を……
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