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第四章 閉ざされた恒星系
ジョン・マーフィ
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調査隊がワームホールを抜けた先にあった恒星系には、豊富なエキゾチック物質が存在していた。だが、その第二惑星には知的生命体も存在していた。
それが分かったのは、第二惑星からテレビ放送用の電波が出ていたからだ。
知的生命体がいるなら開発はあきらめるしかない。引き返しかけた調査隊は、その恒星系に他の地球人がいることに気がついた。
不審に思って調べたところCFCの私設宇宙軍が第二惑星に核攻撃を行っていたのである。どうやら、文明があったという証拠を消し去ってから国連に申告し、開発をしようと目論んでいたようだ。
調査隊はCFCの基地に乗り込み、直ちにこの蛮行をやめるように抗議したのだが逆に捕まってしまい、彼一人だけが逃げ出してきたのだ。
そしてCFCはカペラ第四惑星にも情報が漏れてる事を恐れ、地球への通報手段を奪うため相手町のワームホールを潰したのだ。
「その事を知った佐竹さんは私達が止めるのも聞かず、このステーションにあった唯一の武装艇に乗って飛び出していきました」
「父は、ワームホールの向こうへ行ったんですか?」
「ええ。でも、その直後に私達が二年がかりで開いたワームホールが全て圧壊したのです。後で気がついたのですが、いつの間にかこっちのステーションに例の装置が仕掛けられていて。その時の衝撃で時空穿孔機も壊れてしまい、新しいワームホールを開けなくなりました。以来、カペラ恒星系はすっかり孤立してしまったのです」
長い話で喉が渇いたのだろう。慧のお母さんは、あたしの差し出したお茶を飲んだ。
「ごめんなさいね、美陽ちゃん。あなたの呼びかけは実は聞こえていたのよ。でも私達は罠かもしれないと思って、返事をしなかったのです」
「そうだったのですか。でも、当然ですよね。十六年間誰も来なかったんだから」
教授が携帯端末を持って近づいてきた。端末のディスプレイに若い男の写真が写っている。
はて? どっかで見たような……
「ちょっと失礼します。奥さん。その装置を持ってきたのはこいつではないですか?」
慧のお母さんは繁々と写真を見た。
「そうです! この男です」
「なんという事だ!! マーフィめ。ここまで破廉恥な男だったとは」
マーフィ!?
「すみません」
あたしはひったくる様に教授の端末を取って写真を見た。
似ている!!
この男が、あと二十年くらい歳を取ったらあの人に……
「教授。この人のフルネームはジョン・マーフィじゃないんですか?」
「そうじゃ。知っているのか?」
「《楼蘭》で会いました」
そうか! なぜワームホールの圧壊が続いている危険な宙域に、あの男の船がいたのかこれで分かった。最初はてっきり救助活動かと思っていたけどそうじゃない。
あいつがテロリストだったんだ。
圧壊は全てあいつの仕業だったのね。
「ジョン・マーフィですって!?」
サーシャが自分の端末をあたしの前に差し出す。
「この男じゃないの?」
サーシャの端末にあった写真は現在のマーフィの姿だった。
「そうよ。知ってたの?」
「情報部から、この男に気をつけるように言われていましたわ。今度の共同調査に関して探りを入れていたそうよ」
そうか。
「サーシャ。あんた《楼蘭》でこの男に着けられていたわよ」
「ええ!?」
「フォーの店であなたと別れた後、この男が現れたの。あたしと何を話していたか聞いてきたわ」
「全然、気がつかなかったわ」
「それで、サーシャに一つ謝っておきたいことがあるの」
「なんですの? 私との会話を喋ってしまったとしてもそれは別にいいですわ。美陽は知らなかったのだから」
「ううん。マーフィにサーシャが産業スパイだと吹き込まれていたの。だから、あたしずっと疑いの目で見ていたわ」
サーシャはしばらく唖然していたが、やがて笑い出した。
「そうでしたの。《楼蘭》の日本基地で再会した時、妙に美陽の態度が冷たいような気がしたのは、そういう事情だったのね」
「ごめんね」
「いいですわ。許してあげる」
サーシャはあたしに手を伸ばしてきた。あたしはその手を硬く握り締める。
それが分かったのは、第二惑星からテレビ放送用の電波が出ていたからだ。
知的生命体がいるなら開発はあきらめるしかない。引き返しかけた調査隊は、その恒星系に他の地球人がいることに気がついた。
不審に思って調べたところCFCの私設宇宙軍が第二惑星に核攻撃を行っていたのである。どうやら、文明があったという証拠を消し去ってから国連に申告し、開発をしようと目論んでいたようだ。
調査隊はCFCの基地に乗り込み、直ちにこの蛮行をやめるように抗議したのだが逆に捕まってしまい、彼一人だけが逃げ出してきたのだ。
そしてCFCはカペラ第四惑星にも情報が漏れてる事を恐れ、地球への通報手段を奪うため相手町のワームホールを潰したのだ。
「その事を知った佐竹さんは私達が止めるのも聞かず、このステーションにあった唯一の武装艇に乗って飛び出していきました」
「父は、ワームホールの向こうへ行ったんですか?」
「ええ。でも、その直後に私達が二年がかりで開いたワームホールが全て圧壊したのです。後で気がついたのですが、いつの間にかこっちのステーションに例の装置が仕掛けられていて。その時の衝撃で時空穿孔機も壊れてしまい、新しいワームホールを開けなくなりました。以来、カペラ恒星系はすっかり孤立してしまったのです」
長い話で喉が渇いたのだろう。慧のお母さんは、あたしの差し出したお茶を飲んだ。
「ごめんなさいね、美陽ちゃん。あなたの呼びかけは実は聞こえていたのよ。でも私達は罠かもしれないと思って、返事をしなかったのです」
「そうだったのですか。でも、当然ですよね。十六年間誰も来なかったんだから」
教授が携帯端末を持って近づいてきた。端末のディスプレイに若い男の写真が写っている。
はて? どっかで見たような……
「ちょっと失礼します。奥さん。その装置を持ってきたのはこいつではないですか?」
慧のお母さんは繁々と写真を見た。
「そうです! この男です」
「なんという事だ!! マーフィめ。ここまで破廉恥な男だったとは」
マーフィ!?
「すみません」
あたしはひったくる様に教授の端末を取って写真を見た。
似ている!!
この男が、あと二十年くらい歳を取ったらあの人に……
「教授。この人のフルネームはジョン・マーフィじゃないんですか?」
「そうじゃ。知っているのか?」
「《楼蘭》で会いました」
そうか! なぜワームホールの圧壊が続いている危険な宙域に、あの男の船がいたのかこれで分かった。最初はてっきり救助活動かと思っていたけどそうじゃない。
あいつがテロリストだったんだ。
圧壊は全てあいつの仕業だったのね。
「ジョン・マーフィですって!?」
サーシャが自分の端末をあたしの前に差し出す。
「この男じゃないの?」
サーシャの端末にあった写真は現在のマーフィの姿だった。
「そうよ。知ってたの?」
「情報部から、この男に気をつけるように言われていましたわ。今度の共同調査に関して探りを入れていたそうよ」
そうか。
「サーシャ。あんた《楼蘭》でこの男に着けられていたわよ」
「ええ!?」
「フォーの店であなたと別れた後、この男が現れたの。あたしと何を話していたか聞いてきたわ」
「全然、気がつかなかったわ」
「それで、サーシャに一つ謝っておきたいことがあるの」
「なんですの? 私との会話を喋ってしまったとしてもそれは別にいいですわ。美陽は知らなかったのだから」
「ううん。マーフィにサーシャが産業スパイだと吹き込まれていたの。だから、あたしずっと疑いの目で見ていたわ」
サーシャはしばらく唖然していたが、やがて笑い出した。
「そうでしたの。《楼蘭》の日本基地で再会した時、妙に美陽の態度が冷たいような気がしたのは、そういう事情だったのね」
「ごめんね」
「いいですわ。許してあげる」
サーシャはあたしに手を伸ばしてきた。あたしはその手を硬く握り締める。
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