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第四章 閉ざされた恒星系
懐かしい星
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どうやら、生きているらしい。
でもここはどこなんだろう?
「みんな無事?」
あたしはFMDを外してみた。
仮想操縦室ではなく本来の操縦室がどうなったか見たかったのだ。
どこも壊れている様子はないし、誰も怪我をしている様子もない。
それを確認してあたしはもう一度FMDをつけた。
「教授。船は無事ですか?」
「大丈夫じゃ。船体はどこにも損傷はない」
どうやらグレーザー砲が発射される直前にワームホールを抜けたらしい。
「で、結局私達はどこに着いたの?」
「サーシャさん。あせらんでも今コンピューターが天測をやってる。もうすぐ結果が出るはずじゃ」
「ねえ、サーシャ」
「なに?」
「あたし達、十時間後に向こうに戻っても大丈夫だと思う?」
「すぐに狙われる事はないと思うわ。ただ」
「ただ?」
「シリンダータイプの方は、たぶんワームホールの前にずっと陣取っていると思う」
「あちゃー! じゃあ戻ってもどうにもならないわね」
「戦う方法はあるわ」
「どうするの?」
「シリンダータイプは核グレーザー砲以外何も武器を持っていないわ。つまり、この船に積んであるプローブをミサイル代わりに使えば破壊できると思う」
「でも、円盤タイプが守っているでしょ?」
「そう。だから、円盤タイプをグレーザー砲の射程外におびき出すのよ。円盤タイプの武器はフッ化水素レーザー砲だけ。射程はせいぜい五百~六百キロ。《リゲタネル》のグレーザー砲で各個撃破できるわ」
「どうやっておびき出すの?」
「まず、向こうに出たら《リゲタネル》を射程外に逃がすのよ。そして十時間待って反物質を蓄積する。それが終わったら三機のプローブのうち一機をどちらかのワームホールに向かわせる」
「囮にするのね」
「そう。奴はワームホールに近づく物体を攻撃する。ただしシリンダータイプはワームホールの前から動かないから、円盤タイプが迎撃にくる。円盤タイプはブロープを撃破したら、次は母艦の《リゲタネル》を叩きにやってくる」
「そこを返り討ちにするのね」
「だけど問題は三つあるわ」
「なに?」
「第一はシリンダータイプの数。この作戦はシリンダータイプが二機と仮定した場合のみ成立する。さっきは三機いたけど、そのうち一機は恐らくグレーザー砲を撃っているはず。だけど、私達はそれを確認していない。もし、グレーザー砲を撃ってないで奴が生き残っているとしたら」
「それは大丈夫じゃ」
サーシャは教授の方を振り向く。
「どうしてですか?」
「レーダーの記録から奴の推進剤消費量を計算してみた。ワシらに向かってきた奴にはもう減速するだけの推進剤はないはずじゃ。グレーザー砲を撃とうが撃つまいがもう戦線には復帰できん」
「じゃあ問題の一つはなくなったわね。後の二つは何?」
「二つ目の問題は五機の円盤タイプが全てこっちへ向かってくるかどうか。三機だけ向かってきて、二機はそれぞれのシリンダータイプの護衛に残ったら、プローブで攻撃する手段は使えないわ」
「なるほど。それで三つ目は?」
「キラー衛星が、本来の役目を果たしてしまう状況が起きてしまうこと」
そうだった。あたし達が本来恐れていたのはそっちだったんだ。
グズクズしている間にCFCがワームホールを開いてしまったら……
「二つ目の問題は悪くないかもしれんぞ」
「教授。二つ目の問題がどうして悪くないのよ?」
「二つ目の状況が起きた場合、キラー衛星はワームホールの防衛に専念して《リゲタネル》を攻撃する余裕はなくなる。そうなるとワシらは帰ることはできなくなるが、惑星の調査に専念できる」
「一生、いるつもりですか!?」
「まさか。待っていればそのうちCFCがワームホールを開くじゃろう」
「あ!」
「そうなったらCFCとキラー衛星の戦闘になる。ワシらはそのドサクサに紛れて逃げればよいのじゃ」
「そうか、なるほど! 毒をもって毒を征するのですね」
「でも、それじゃあ私達は逃げられるけど、あの惑星をCFCに占領されちゃうじゃないですか?」
「大丈夫じゃ。知的生命体がいる以上手が出せん」
「CFCは邪悪な拝金主義の会社ですよ。ネコちゃん達を抹殺して、文明はなかったと発表して開発を始めるかもしれませんよ」
おまえだろ。先にそれを考えたのは。
「だから、ワシらがなんとしても逃げ帰らなきゃならん。ここに文明を持った猫がいる事を国連に報告すれば、奴らも惑星に手を出せなくなるじゃろう」
「しかし……」
「サーシャ。そこから先はあたし達が議論しても意味ないわよ。今、あたし達がすべき事は文明を持った猫がいる証拠を持って《楼蘭》まで逃げる事。その先は政府に任せるしかないわ」
「そうね。今は十時間の間に私達ができる事を考えるべきね」
それにしても、これだけあたし達が議論しているのに慧はなんで議論に参加して来ないんだろう?
元々、口数の少ない奴ではあるけど静かすぎる。
慧は呆然とした表情で何かを見つめていた。
視線の先には恒星がある。
G型の恒星が二つ、互いの周りを回っている二重恒星系のようだけど……この星って!?
まさか!? そんな!? 偶然が?
あたしは慧の肩に手を置く。
慧は振り向いて呟く。
「美陽。この星って……」
ディスプレイにはすでに天測の結果は出ていた。
『赤経〇五h 一六m 四一s
赤緯四五度五九分
御者座
恒星名 カペラ 』
帰ってきたんだ……
あたし達は……
でもここはどこなんだろう?
「みんな無事?」
あたしはFMDを外してみた。
仮想操縦室ではなく本来の操縦室がどうなったか見たかったのだ。
どこも壊れている様子はないし、誰も怪我をしている様子もない。
それを確認してあたしはもう一度FMDをつけた。
「教授。船は無事ですか?」
「大丈夫じゃ。船体はどこにも損傷はない」
どうやらグレーザー砲が発射される直前にワームホールを抜けたらしい。
「で、結局私達はどこに着いたの?」
「サーシャさん。あせらんでも今コンピューターが天測をやってる。もうすぐ結果が出るはずじゃ」
「ねえ、サーシャ」
「なに?」
「あたし達、十時間後に向こうに戻っても大丈夫だと思う?」
「すぐに狙われる事はないと思うわ。ただ」
「ただ?」
「シリンダータイプの方は、たぶんワームホールの前にずっと陣取っていると思う」
「あちゃー! じゃあ戻ってもどうにもならないわね」
「戦う方法はあるわ」
「どうするの?」
「シリンダータイプは核グレーザー砲以外何も武器を持っていないわ。つまり、この船に積んであるプローブをミサイル代わりに使えば破壊できると思う」
「でも、円盤タイプが守っているでしょ?」
「そう。だから、円盤タイプをグレーザー砲の射程外におびき出すのよ。円盤タイプの武器はフッ化水素レーザー砲だけ。射程はせいぜい五百~六百キロ。《リゲタネル》のグレーザー砲で各個撃破できるわ」
「どうやっておびき出すの?」
「まず、向こうに出たら《リゲタネル》を射程外に逃がすのよ。そして十時間待って反物質を蓄積する。それが終わったら三機のプローブのうち一機をどちらかのワームホールに向かわせる」
「囮にするのね」
「そう。奴はワームホールに近づく物体を攻撃する。ただしシリンダータイプはワームホールの前から動かないから、円盤タイプが迎撃にくる。円盤タイプはブロープを撃破したら、次は母艦の《リゲタネル》を叩きにやってくる」
「そこを返り討ちにするのね」
「だけど問題は三つあるわ」
「なに?」
「第一はシリンダータイプの数。この作戦はシリンダータイプが二機と仮定した場合のみ成立する。さっきは三機いたけど、そのうち一機は恐らくグレーザー砲を撃っているはず。だけど、私達はそれを確認していない。もし、グレーザー砲を撃ってないで奴が生き残っているとしたら」
「それは大丈夫じゃ」
サーシャは教授の方を振り向く。
「どうしてですか?」
「レーダーの記録から奴の推進剤消費量を計算してみた。ワシらに向かってきた奴にはもう減速するだけの推進剤はないはずじゃ。グレーザー砲を撃とうが撃つまいがもう戦線には復帰できん」
「じゃあ問題の一つはなくなったわね。後の二つは何?」
「二つ目の問題は五機の円盤タイプが全てこっちへ向かってくるかどうか。三機だけ向かってきて、二機はそれぞれのシリンダータイプの護衛に残ったら、プローブで攻撃する手段は使えないわ」
「なるほど。それで三つ目は?」
「キラー衛星が、本来の役目を果たしてしまう状況が起きてしまうこと」
そうだった。あたし達が本来恐れていたのはそっちだったんだ。
グズクズしている間にCFCがワームホールを開いてしまったら……
「二つ目の問題は悪くないかもしれんぞ」
「教授。二つ目の問題がどうして悪くないのよ?」
「二つ目の状況が起きた場合、キラー衛星はワームホールの防衛に専念して《リゲタネル》を攻撃する余裕はなくなる。そうなるとワシらは帰ることはできなくなるが、惑星の調査に専念できる」
「一生、いるつもりですか!?」
「まさか。待っていればそのうちCFCがワームホールを開くじゃろう」
「あ!」
「そうなったらCFCとキラー衛星の戦闘になる。ワシらはそのドサクサに紛れて逃げればよいのじゃ」
「そうか、なるほど! 毒をもって毒を征するのですね」
「でも、それじゃあ私達は逃げられるけど、あの惑星をCFCに占領されちゃうじゃないですか?」
「大丈夫じゃ。知的生命体がいる以上手が出せん」
「CFCは邪悪な拝金主義の会社ですよ。ネコちゃん達を抹殺して、文明はなかったと発表して開発を始めるかもしれませんよ」
おまえだろ。先にそれを考えたのは。
「だから、ワシらがなんとしても逃げ帰らなきゃならん。ここに文明を持った猫がいる事を国連に報告すれば、奴らも惑星に手を出せなくなるじゃろう」
「しかし……」
「サーシャ。そこから先はあたし達が議論しても意味ないわよ。今、あたし達がすべき事は文明を持った猫がいる証拠を持って《楼蘭》まで逃げる事。その先は政府に任せるしかないわ」
「そうね。今は十時間の間に私達ができる事を考えるべきね」
それにしても、これだけあたし達が議論しているのに慧はなんで議論に参加して来ないんだろう?
元々、口数の少ない奴ではあるけど静かすぎる。
慧は呆然とした表情で何かを見つめていた。
視線の先には恒星がある。
G型の恒星が二つ、互いの周りを回っている二重恒星系のようだけど……この星って!?
まさか!? そんな!? 偶然が?
あたしは慧の肩に手を置く。
慧は振り向いて呟く。
「美陽。この星って……」
ディスプレイにはすでに天測の結果は出ていた。
『赤経〇五h 一六m 四一s
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御者座
恒星名 カペラ 』
帰ってきたんだ……
あたし達は……
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