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「ロボットに掃除をさせるのが、意外と難しいという事を知っているかい?」
そう言いながら、満面の笑みを浮べリビングに入って来た夫を見て、妻は早くもうんざりした気持ちになった。
……また、始まったわ。
夫は結婚して以来、定職にも付かず地下の研究室に籠って、わけの分からない研究に没頭していた。時折、嬉しそうに研究室から出てきては、発明品とやらを披露する時以外、ろくに妻や娘と話をしようともしない。それでも、その発明品のいくつかは特許を取れているので生活に困らないぐらいの特許料収入は入っていた。
「それで、今回は何を発明したの?」
「掃除ロボットだ」
「はあ? もうあるでしょ」
妻が指差した先では、円盤型の掃除ロボットが床を動き回っている。
「僕の発明は画期的だよ。ちょっと見てくれ」
夫は掃除ロボットの行く手に立った。するとロボットは夫を避けて通る。
「このロボットは超音波のエコーで障害物を感知できる。しかし、障害物を避けるだけで障害物をどけることができない。そこでだ」
夫がそう言うと、部屋にメイド服姿の少女が入ってきた。
「この子は? あなた、まさかこんな小娘と浮気でも……」
「滅相もない。この子はロボットだよ。さあ、挨拶して」
少女は妻に向かってお辞儀した。
「初めまして。奥様。私は生活補助用に開発されましたガイノイドP0371です。どうぞPちゃんと、親しみを込めて呼んで下さい」
「Pちゃんて……ロボットなの? で、あなた。なんでメイド姿なの? あなたの趣味?」
「違うよ。このアンドロイドは、知人から譲ってもらった中古品で、元々メイド姿だったんだ。僕はそれを改造しただけだよ」
「じゃあ、市販品なのね」
妻はPちゃんの型番を調べて、検索をしてみた。ほどなくてしてカタログデータが見つかる。
「あなた。このアンドロイド、性欲処理機能があるそうだけど、まさか使ったんじゃないでしょうね?」
「め……滅相もない! 僕はそんな機能があるなんて知らなかった。このPちゃんには、掃除機のセンサーが感知した障害物を先回りしてどけてくれる機能を持たせただけだ。他の用途には一切使っていない」
「ふうん」
妻は疑わしそうな視線を夫に浴びせた。
「ではPちゃん。やってくれ」
掃除ロボットの行く手にテーブルがあった。Pちゃんは、すたすたと歩み寄り、テーブルを持ち上げると……
「障害物排除!」
Pちゃんに投げ飛ばされたテーブルは、壁に激突して壊れた。
「きゃあ! なにするのよ!?」
「はい。奥様。掃除の障害を排除しました」
ちょうどその時、掃除ロボットはテレビに向かっていた。
「障害物排除!」
Pちゃんはテレビを投げ飛ばす。
「排除! 排除! 排除!」
Pちゃんは次々と家具を投げ飛ばしていく。
「あれ? あれ? こんなはずでは……P0371起動停止」
夫の命令でPちゃんは停止した。
「改良の余地がありそうだな。もうしばらく研究室に籠っているよ」
Pちゃんを抱えて、夫は逃げるように部屋から出ていく。
「部屋を片付けていかんかーい!」
逃げる夫の背に、妻の罵声が浴びせられた。
そう言いながら、満面の笑みを浮べリビングに入って来た夫を見て、妻は早くもうんざりした気持ちになった。
……また、始まったわ。
夫は結婚して以来、定職にも付かず地下の研究室に籠って、わけの分からない研究に没頭していた。時折、嬉しそうに研究室から出てきては、発明品とやらを披露する時以外、ろくに妻や娘と話をしようともしない。それでも、その発明品のいくつかは特許を取れているので生活に困らないぐらいの特許料収入は入っていた。
「それで、今回は何を発明したの?」
「掃除ロボットだ」
「はあ? もうあるでしょ」
妻が指差した先では、円盤型の掃除ロボットが床を動き回っている。
「僕の発明は画期的だよ。ちょっと見てくれ」
夫は掃除ロボットの行く手に立った。するとロボットは夫を避けて通る。
「このロボットは超音波のエコーで障害物を感知できる。しかし、障害物を避けるだけで障害物をどけることができない。そこでだ」
夫がそう言うと、部屋にメイド服姿の少女が入ってきた。
「この子は? あなた、まさかこんな小娘と浮気でも……」
「滅相もない。この子はロボットだよ。さあ、挨拶して」
少女は妻に向かってお辞儀した。
「初めまして。奥様。私は生活補助用に開発されましたガイノイドP0371です。どうぞPちゃんと、親しみを込めて呼んで下さい」
「Pちゃんて……ロボットなの? で、あなた。なんでメイド姿なの? あなたの趣味?」
「違うよ。このアンドロイドは、知人から譲ってもらった中古品で、元々メイド姿だったんだ。僕はそれを改造しただけだよ」
「じゃあ、市販品なのね」
妻はPちゃんの型番を調べて、検索をしてみた。ほどなくてしてカタログデータが見つかる。
「あなた。このアンドロイド、性欲処理機能があるそうだけど、まさか使ったんじゃないでしょうね?」
「め……滅相もない! 僕はそんな機能があるなんて知らなかった。このPちゃんには、掃除機のセンサーが感知した障害物を先回りしてどけてくれる機能を持たせただけだ。他の用途には一切使っていない」
「ふうん」
妻は疑わしそうな視線を夫に浴びせた。
「ではPちゃん。やってくれ」
掃除ロボットの行く手にテーブルがあった。Pちゃんは、すたすたと歩み寄り、テーブルを持ち上げると……
「障害物排除!」
Pちゃんに投げ飛ばされたテーブルは、壁に激突して壊れた。
「きゃあ! なにするのよ!?」
「はい。奥様。掃除の障害を排除しました」
ちょうどその時、掃除ロボットはテレビに向かっていた。
「障害物排除!」
Pちゃんはテレビを投げ飛ばす。
「排除! 排除! 排除!」
Pちゃんは次々と家具を投げ飛ばしていく。
「あれ? あれ? こんなはずでは……P0371起動停止」
夫の命令でPちゃんは停止した。
「改良の余地がありそうだな。もうしばらく研究室に籠っているよ」
Pちゃんを抱えて、夫は逃げるように部屋から出ていく。
「部屋を片付けていかんかーい!」
逃げる夫の背に、妻の罵声が浴びせられた。
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