3 / 7
第3話
しおりを挟む
Dの指さす先に目を向けると、透き通った掌のような物が、フロントガラスの左側に張り付いていた。
「なに、あれ?」
「さあ? 私もさっき気が付いたのだけど……」
掌は助手席側に張り付いているせいか、運転しているAは気が付かないようだ。
助手席にいるCは、ロードマップを調べるのに夢中で気が付いていない。
「ねえ、あんた達」
Dは、前席の男二人に呼びかけた。
「フロントガラスに、変な物が貼り付いているわよ」
「「え?」」
その時になって、AとCは異変に気が付いた。
「な……なんだ、これは?」「手袋じゃないのか?」
「いや……これは、どう見ても……人の手……」
そこまで言って、CはAの方を振り向く。
「おまえ、まさか? この車で人を轢いたのじゃないのか?」
「バカ言え! 俺は今まで無事故無違反だ」
「じゃあ、この手はなんだよ!? おまえじゃなくても、お前の親父さんが……」
「親父は、免許を持っていない」
「じゃあ、この車の前の持ち主が……」
「これは新車だ!」
口論している男達に、Bは恐る恐る声をかけた。
「ねえ……車を止めて調べてみたらどうかな? ビニール手袋が、貼り付いているだけかもしれないし……」
車がトンネルに入ったのはその時だった。
「ひっ!」
その光景を見て、Bは思わず息を飲む。
今までは、透き通った掌が貼り付いているだけだったフロントガラスには、血塗れの女が逆さまに貼り付いていたのだ。
今まで見えていたのは、この女の手だったのだ。
「きゃあああ!」
Bの横で、Dが大きく悲鳴を上げる。
「うわああ!」「なんだ!? こいつは!」
前席の男達もパニックに……
血塗れの女は、何かを訴えかけるような視線を車内で狼狽えている四人に向けていた。
「なに、あれ?」
「さあ? 私もさっき気が付いたのだけど……」
掌は助手席側に張り付いているせいか、運転しているAは気が付かないようだ。
助手席にいるCは、ロードマップを調べるのに夢中で気が付いていない。
「ねえ、あんた達」
Dは、前席の男二人に呼びかけた。
「フロントガラスに、変な物が貼り付いているわよ」
「「え?」」
その時になって、AとCは異変に気が付いた。
「な……なんだ、これは?」「手袋じゃないのか?」
「いや……これは、どう見ても……人の手……」
そこまで言って、CはAの方を振り向く。
「おまえ、まさか? この車で人を轢いたのじゃないのか?」
「バカ言え! 俺は今まで無事故無違反だ」
「じゃあ、この手はなんだよ!? おまえじゃなくても、お前の親父さんが……」
「親父は、免許を持っていない」
「じゃあ、この車の前の持ち主が……」
「これは新車だ!」
口論している男達に、Bは恐る恐る声をかけた。
「ねえ……車を止めて調べてみたらどうかな? ビニール手袋が、貼り付いているだけかもしれないし……」
車がトンネルに入ったのはその時だった。
「ひっ!」
その光景を見て、Bは思わず息を飲む。
今までは、透き通った掌が貼り付いているだけだったフロントガラスには、血塗れの女が逆さまに貼り付いていたのだ。
今まで見えていたのは、この女の手だったのだ。
「きゃあああ!」
Bの横で、Dが大きく悲鳴を上げる。
「うわああ!」「なんだ!? こいつは!」
前席の男達もパニックに……
血塗れの女は、何かを訴えかけるような視線を車内で狼狽えている四人に向けていた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
人身事故
津嶋朋靖(つしまともやす)
ホラー
俺が乗っていた電車が人身事故で止まってしまった。足止めを食らった駅で、電車の先頭を見に行くと、事故犠牲者の肉片が連結器に残っている。
それをスマホで撮影した俺は、足止めを食らった腹いせに『なんちゅうことさらすんじゃ! わしゃ急いでるんじゃぞ! 自殺するなら余所で死ねや! ボケ!』とツイッターに投稿した。
ところがしばらくすると、俺のツイッターに……
『ボケとは失礼な。私は自殺などしていません。踏切の途中で、車椅子が立ち往生してしまったのです』
まるで犠牲者本人みたいな返信があった。
どうせ誰かのイタズラだろうと思っていたのだが……
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる