【異世界ショップ】無双 ~廃絶直前の貴族からの成り上がり~

クロン

文字の大きさ
上 下
210 / 220
イレイザー最終決戦編

第198話 魔法を軽視したらこれだよ

しおりを挟む

 イレイザーが物理無効障壁という恐ろしい力を手にしてしまった。

 確かに奴には進化能力があり、魔法無効障壁も戦闘中に突如身に着けたとは聞いていた。

 だが魔法と物理の両方無効は流石に卑怯では!?

 イレイザーは戦艦などの砲撃が効かなくなったのか、ゆっくりと海面を歩いて移動し始めた。

「セサル! なんかないのか! 障壁中和とかなんかこう!」
「安心するんだアトラス君! 魔法障壁の色が変わって物理障壁になったろう! 魔法無効障壁と物理無効障壁の同時展開はできない! どちらか片方だ! ……今のところは」
「待て、最後に恐ろしく不穏なこと言うんじゃない!」
「仕方ないだろう! イレイザーが更に進化したらどうなるかわからない!」

 進化能力本当クソだなおい!?

 と、とりあえず落ち着こう。今のイレイザーは物理が無効だ。

 つまり魔法のほうは効き目があるはず!

「カーマ、ラーク、エフィルン! 魔法でイレイザーの動きをとめろ!」
「フォルン領軍は砲撃停止でござる!」

 俺とセンダイの声が戦場にこだまする。

 イレイザーに対しての砲撃がやんだと共に、カーマたちが俺の船のそばまで飛んできた。

「魔法撃つの!? 効かないんじゃないの!?」
「イレイザーの纏ってる障壁が白の時は物理無効だ! 桃色の時は魔法無効だから、白の時はお前たちが攻撃しろ!」
「わ、わかったよ!」

 カーマとラークとエフィルンが一斉に魔法の攻撃を開始する。

 炎の槍や氷の矢、なんかでかい大樹がイレイザーへと飛んでいく。

 物理無効障壁なら魔法で痛めつけてやる! 一発の威力なら魔法のほうが強いぞ!

 そう思っていた時期が俺にもありました。

「ルオオオオオォォォ」

 イレイザーが足を止めて吠えた瞬間、障壁の色が一瞬で白から桃色に変わった。

 そして奴に襲い掛かっていた魔法は障壁に当たって全て消えてしまう。 

「総員一斉砲撃!」

 また障壁の色が変わったのを見て、センダイが各戦艦に砲撃を命じた。

 即座に戦艦が撃つが……またもや瞬間的にイレイザーの障壁は桃色から白へと変更した。

「もう一発だよ!」

 カーマたちも戦艦の砲撃とほぼ同時に魔法を撃つのだが……イレイザーの消滅が桃→白→桃と信号機のようにチカチカ点滅し全部防いでいる。

 あ、あいつ攻撃が当たる瞬間に障壁を切り替えてやがる……。

「……え? あれズルくない? 一瞬で切り替えは流石にズルくね? クソギミックの極みじゃん」
「あそこまで障壁の切り替えが早いと、同時に物理と魔法の攻撃をしても防がれそうでござるな……」

 イレイザー君さぁ、ちょっとこうゲームバランスを考えろよ。

 このままではイレイザーが包囲網から逃げて……あれ? そういやあいつずっと立ち止まってるな。

 さっき物理無効障壁で砲撃無効にしたら動こうとしてたのに……今も攻撃も無効になってるのに……。

 イレイザーからすればこの場にはエサとなる人間はあまりいない。

 ここに立ち止まる意味はないわけで……まさか。

「あいつさ、障壁点滅時は結局動けないのでは?」
「……その可能性は高そうでござるな」
「いくらイレイザーと言えども、こんな高性能の障壁ならば多少は集中する必要があるかもしれない」

 俺の言葉にセンダイとセサルも頷く。

 ならば話は別だ。元々俺達の作戦はイレイザーを足止めして、人の精神を吸収させずに弱らせること。

 つまり……このまま撃ち続けて動きが止められれば問題ない!

 策士策に溺れるとはたぶんこのことよ! 

 イレイザーめ! 無効障壁をチカチカ変えてるせいで、むしろ余計に力を浪費してるのでは!?

 はははっ! こちらは【異世界ショップ】の購入費が現在無料!

 つまりいくらでも弾も船も買えるので、文字通り弾数無限の砲撃。

 無限の弾幕をはれるのだから持久戦なら負けるはずがない!

「さあもっと撃て! イレイザーが力尽きるまで動かせるな! こちとら無限に撃ち続けられるんだから!」

 俺は勝機を感じている。

 やはり【異世界ショップ】が無限に使えるのは強すぎる!

「ね、ねえあなた……ちょっと言いづらいんだけど」
「なんだカーマ。このまま撃ち続ければ勝てるんだぞ」

 カーマたちが魔法を撃ちながら船の甲板――俺のそばまで降りてきて、すごく困ったような顔をしている。

 いったいどうしたというのだろうか。ようやく勝機が見えたというのに。

「……ボクと姉さまとエフィルンさんは、そんなに撃ち続けられないよ? 魔法だから……」
「…………あっ」
「このペースで撃つと二十分くらいで魔力切れ」

 カーマの説明にラークが追加情報をくれる。

 そうかー。二十分で魔力きれちゃうかー。

 わざわざカーマたちが甲板に降りてきたのも、飛ぶ魔力の節約のためだったかー。

 …………ヤバいぞ!? 魔法が撃てなくなったら、イレイザーは物理無効障壁だけ展開して移動し始めるじゃん!?

 い、いや待て! 今の俺達にはレスタンブルク国の魔法使い師団もいる!

 あいつらも百人以上はいるから多少は戦力になる……! カーマたちを入れ替わりで休ませながら撃てば……!

「センダイ! レスタンブルク国の魔法師団に魔法を撃たせろ! イレイザーをカーマたちと一緒に抑えて」
「とっくに全員魔力切れてるでござるが」
「生ごみかあいつら!」

 思わず叫んでしまった。

 本当にレスタンブルク国の兵士は役に立たないなおい!

 なんか考えろなんか! 【異世界ショップ】で魔法を撃てる手段はないのか!?

 ほら手品だってマジックって言うじゃん! マジックで炎出したら魔法判定に、なるわけねぇ!

 ロクによい案を思いつかないまま、時間がどんどん過ぎていく。

「ね、ねぇ! そろそろみんな魔力限界なんだけど!」

 俺の横でカーマが悲鳴をあげるが、俺にはどうにもならん!

 魔法は俺の専門外なんだよ!? 

「根性で頑張れないか!? ほら歯磨き粉のチューブって絞ればなくなっても出るじゃん!」
「無理だってば! あ、ごめんもう無理……」

 とうとうカーマたちの魔法が出なくなった。

 イレイザーの障壁の点滅がとまり白色に固定される。

 そして奴は再び海面を歩き出した。

 イレイザーに対して戦艦たちは砲撃し続けるし、空からもミサイルなど落とされるが全て障壁に止められる。

 ……これはシャレにならん。わりと詰んだのでは……。

 そう思った瞬間だった。雲ひとつない空から突如雷が落ちた。

 それはイレイザーの障壁へとぶつかったが……いつの間にかまた障壁は桃色になっていて防がれている。

 だがまた足がとまった。つまりあの雷は魔法である。

 雷魔法? そんなの使える奴知らないぞ!? ここに来て謎の援軍か!?

 俺が周囲を見回すと、後ろから五隻ほどの大型船が近づいてきていた。

 その帆にはベフォメットの印が存在していて、空には先ほどベフォメットの船の対処を任せたはずのドラゴンたちもついてきている。

 ドラゴンたち何をしてるんだ? ベフォメット船を何とかしろと命令したのに!

 そして先頭をはしる大型船には見慣れたハゲ頭と、見たくもないイヤミな顔が見えた。

「アトラスどのー! ベフォメット王子と落雷のライニール、そしてベフォメット魔法軍団総員三百名! これよりフォルン領兵に加わります!」
「ふっ……私を倒した男が、こんなところで苦戦していいと思っているのか?」

 ベフォメットの船からまた魔法攻撃がイレイザーに飛んでいく。

 全く意味がわからん。わからんが……とりあえず敵ではないようだ。

 あ、クズ王子はすごく邪魔なので海の藻屑になって欲しい。

 なによいライバル感出してるんだあの野郎!

しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。

真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆ 【あらすじ】 どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。 神様は言った。 「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」 現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。 神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。 それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。 あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。 そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。 そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。 ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。 この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。 さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。 そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。 チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。 しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。 もちろん、攻略スキルを使って。 もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。 下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。 これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...