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イレイザー最終決戦編
第187話 スズキさん再起動
しおりを挟む俺はスズキさん回収部隊を引き連れて、元レード山林地帯のスズキさんの眠る部屋へとたどり着いた。
そしてセサルが例の脱衣麻雀筐体を確認して、持ち帰ることは可能と判断。
筐体を地上に持ち運んでドラゴンで運び、フォルン領へと持っていった。
今はセサルの第二研究所に運び終えたところだ。
なお第二研究所は先日作り終えた地下室で、フォルン領でも一部の者しか知らない。
第一研究所はラスペラス国の研究者が場所を把握しているため、内密にイレイザーを研究できる場所を用意したというわけだ。
第二研究所は【異世界ショップ】で購入したので、コンクリの壁で覆われていていかにも研究所感が出ている。
第一研究所はセサルが作ったから木造建築で、外観が七色に光ってたからな……。
「ふむ……カーマ嬢、ラーク嬢。この筐体に炎魔法と氷魔法をぶちこんでくれたまえ」
しばらく筐体をいじっていたセサルが、そんな末恐ろしいことを言い出した。
「セサル、俺はスズキさんを蘇らせろと言ったんだ。トドメをさせとは言ってない」
「もちろんサッ。スズキさんとやらを蘇らせるなら、少し衝撃が必要でね」
「この脳筋手加減無用姉妹に少しを求めるな。やらせるなら殲滅のみだ」
俺の言葉にムッとしているカーマとラーク。
だが俺の言っていることに間違いはない! 彼女らに手加減させたらダメだ!
根本的に彼女らの思想は大は小を兼ねる、だからな!
「ふっ、大丈夫サッ! この筐体は超特殊な魔法合金で作られていて、彼女らが本気で魔法を撃っても壊れない……かもしれない」
「まじか……」
つまり脱衣麻雀ゲーの筐体に、わざわざムダすぎる丈夫な合金を使ったと……。
流石はスズキさん、脱衣麻雀への業が深すぎる。
「えーっと……つまり全力で撃っていいってこと?」
「ぶっ壊す気持ちでやっていい?」
「あー……少しは手加減して欲しいサッ!」
カーマたちがやる気満々過ぎて、流石に少し物おじするセサル。
言ったろ、そいつら手加減苦手だって。全力で撃っていいなんて言ったら、嬉々として打ち込むから。
基本的にカーマたちに指示するなら、指定した威力の二割引きくらいで要求しろ。
六割の力で撃って欲しいなら四割と言っておけ。そしたら三割~五割程度で撃ってくれるはずだ。
根本的に力の制御が雑なので誤差が広すぎるのは諦めろ。
ド級大砲に繊細な破壊を求めるほうが愚かだ。
「え、えーっと……これくらい?」
カーマたちが頑張って力を押さえて、スズキさんの筐体に炎と氷の魔法を撃ち込んだ。
すると筐体に当たった瞬間、炎と氷は吸収されたかのように掻き消えた。
そして筐体のモニターが光り輝き始めて、スピーカーからノイズが鳴り始めた。
「……グッモーニング! やあ未来の先祖! 私はスズキ・サトウだ! この映像を見て……あれ? 君はアスタロ君では?」
「誰がアスタロだ。アトラスだ」
「……ふむ? おかしいな。私はスリープモードに入り、修理されないと再起動不可のはずだったのだが? まさか君たち程度の粗末な文明レベルで私が直せるとは……」
いきなり物凄くディスってくるスズキさん。
モニターにうつる彼の顔も困惑した表情を浮かべている。
「ふっ。ミーにかかればこの程度、わけはないサッ!」
キメ顔で前髪をかきあげるセサル。
それに対して筐体から光が発せられて、セサルをスキャンした後。
スズキさんの顔がグルグル目になっていた。
「理解不能……身に着けてる物の文明レベルに対して、個人の知能指数がオーバーフロー……? 彼個人で五百年先の技術を持っている……? だが精神波が異常過ぎる……? 正常な数値を測れていない可能性あり?」
ひたすらに困惑するスズキさん。
どうやらセサルは機械でも測れない精神構造をしているようだ。
奴が性格に目をつぶれば有能なのは分かり切っているのでどうでもよい。
「スズキさん、その変人のことは気にしないでくれ。それよりも俺は、あんたにもう一度会ったら言いたいことがあったんだ」
「……ほう? なんだね?」
俺が真剣なのを感じてか、スズキさんも真面目な顔になる。
このスズキさんに出会った時、俺には成し遂げられないことがあった。
それは今でも明確な心残りになっている。どれだけ嘆いたことか。
だが彼が復活した今ならば頼みこめるはずだ! 今、万感の思いを込めて!
「スズキさん。その筐体の脱衣麻雀ゲーの画像CGを頂けませんか!」
「は? いや脱衣麻雀ゲーの画像を、麻雀せずに見るだと……? ふざけるな! それは脱衣麻雀ゲーに対する冒涜だ!」
「じゃあ筐体の中身をくり抜くのは冒涜ではないんですか!?」
「うっ……だがダメだ! 脱衣麻雀から脱衣をとったら何も残らないだろうがっ!」
どうやらスズキさんの説得は不可能なようだ……でも脱衣麻雀から脱衣とっても麻雀は残ると思う。
仕方がない。脱衣麻雀ゲーは諦めよう。
いつかカーマたちと本物をやれるように頑張ろう。
俺は後方からの責めるような視線をごまかすように、改めて咳払いをすると。
「では本題だ。スズキさん、イレイザーについてなんだが」
「むっ? 以前も話したけどイレイザーなら心配は不要だよ。ジャイランドがいる以上、イレイザーが目覚めてもまた自動で封印されるはずだ。あれは私たちが恐ろしいほど頑張って作った最高傑作だよ。ジャイランドを破壊できるわけがないからね」
自信満々に告げるスズキさん。
うん、そうだね。ジャイランドが存在してたら、俺もあんたを蘇らせな……いや脱衣麻雀の件で直してたか。
「いやその……実はそのジャイランドなんですが……不慮の事故で死んだりとか……」
「はははっ。何を言っているのかな? そんなわけないだろう? ジャイランドを殺すなど、それこそ衛星兵器でも使わないと無理だよ。この世界にそんな技術はあるまいて。あれは無敵さ! 私たちの血と汗と涙と命の結晶!」
爆笑するスズキさん。俺の話を冗談としか思えないようだ。
いや本当に冗談ならよかったんだけどね……。
「仮にジャイランドを殺すなら……それこそ宇宙から大質量落とすとかじゃないと無理だよ。あの強靭な外皮を粉砕するなら、純粋な物理力で押しつぶすしかない。だがジャイランドは動くし、ピンポイントで狙い撃つなど不可能……どうしたんだい君たち?」
気持ちよくしゃべっていたスズキさんは、俺達の暗い表情を見て問いかけてくる。
「ね、ねぇ……言ってあげてよ……」
「後になるほどつらくなる」
「同じ技術者として、傑作が潰れたのを伝えるのは辛い」
カーマ、ラーク、セサルが俺に宣告するのを強要してくる。
……ものすごく気まずい。いやね、スズキさんがジャイランドの自慢してる時、物凄く気分よさそうなんだよな。
僕らのスーパーヒーローが負けるわけない! みたいな感じで……。
だが言うしかない。事実を言わないと……話が進まない!
「スズキさん、真面目に聞いて頂きたいのですが」
「なんだね?」
「ジャイランド……死にました」
「ははは。何を言ってるんだい? そんなわけが……」
俺の宣告を笑い飛ばそうとしたスズキさん。だが俺達全員が神妙な面持ちをしていることに気づき、喋るのを途中でやめた。
彼の笑顔が徐々に引きつり始める。だがやはり信じられないようで、渇いた笑い声を出すと。
「いや待て。君たちがジャイランドと何か他の物を勘違いしたんだよ。だってジャイランドを殺せるはずが……」
「あのこれ……」
俺はスズキさんに対して、布でくるんだブツを見せた。
「むっ? なんだいこれは?」
「ジャイランドの爪の一部です……死骸の」
その時、時間が停止した。
スズキさんの顔の動きが完全に制止し、周囲が静まり返る。
そして……。
「ビー、ガビー。理解不能理解不能。これは現実ではないと 判断。これより自爆を決行。この腐った世界にサヨナラ」
「セサル止めろ! ぶん殴ってでも止めろ!」
「下手したら壊れる可能性が」
「元々半分壊れてるようなもんだ!」
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