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国内騒動編

第182話 東レード山林地帯攻略①

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 俺達はフォルン領軍千二百人を率いて、人外魔境こと東レード山林地帯の入り口付近に進軍した。

 ちなみにフォルン領の主要メンバーは全員参加。それとライナさんにいつものように増援をお願いしている。

 目的は当然、東レード山林地帯の開拓……というよりまずは魔物を排除することだ。

 ここの地の魔物はあまりに強く、もしこの森から抜け出せば悪夢そのもの。

 イレイザーという危機と同時にそんなことになれば、もはやレスタンブルク国は完全終了してしまう。

 それで放置もできず攻略を行うことになった。

 今はその前準備として兵士たちが簡易な布で陣の用意を完了した。

 森は今のところ静かで魔物が出てくる様子はないので、ひとまず森の外は安全そうだな。

 もちろん俺達が攻撃を始めたら、どうなるかは分からないが。

「……またここに来ることになるとはな」
「アトラス様からすれば、恥辱をはらす絶好の機会というわけですな」
「別に一生の恥でよかったんだけどな……」

 以前にここに様子見に来た時は酷い目にあった。

 新種のオーガやドラゴンなどがザコ敵のように大量に跋扈し、その全てが化け物級の強さを誇る魔境。

 俺が呼んだかクリア後の裏ステージ。裏ボスラッシュの森。

 元レード山林地帯で生息していた化け物たちが、生存競争に勝てず屍をさらす意味不明な蟲毒地獄。

 ここの魔物たちにはバズーカの直撃でも大したダメージにならず、これは無理だと逃げ帰って来たのだ。

 そしてさらに……竜殺しの槍を使ってもドラゴンに勝てない可能性も高い。奴ら相手に下手に近づいたら、槍を刺す前に兵士たちが爪や牙で殺されかねない。

 そんな恐ろしい場所なので、できれば一生見ないふりをしていたかった。

 だがそういうわけにもいかなくなったので、色々と作戦を立てて攻略を試みることになったのだ。

「アトラス様。まずは手はず通りでよろしいですな?」
「ああ。頼むぞ、セバスチャン」

 俺は陣の中に用意した椅子に座りながら、セバスチャンにうなずいた。

「では行ってまいります! 必ずや戦果をあげてまいりますぞ!」

 自信満々に告げた後、この場から去っていくセバスチャン。

 あいつの場合、あげるのは戦果というよりも戦火な気はする。

 さてセバスチャンに頼んだことはすごく単純な内容だ。もし成功すれば、俺達は戦わずして東レード山林地帯を攻略することができる。

 しばらくすると上空に一機の戦闘機が飛来し、特有の轟音が鳴り響く。

 そして東レード山林地帯に対してミサイルを発射し始めた。

 これが対東レード山林地帯攻略の作戦のひとつ。空爆である。

 高高度からの爆撃ならば安全に魔物の数を減らせる……といいなぁと願望の元、お試しでの作戦だ。

 そのためにセバスチャンに頼んで、一機だけお試しで出撃させた。

 もし上空から攻撃しても安全なようなら、大量の爆撃機で絨毯爆撃したい……。

 だがそんな俺の願望を木っ端みじんにするかのごとく、森から一体のドラゴンが空に飛翔した。

 そのまま戦闘機に向かって突撃していく。

 ……そんな予感はしてたよ。あいつら、飛べるもんな……。

 戦闘機とドラゴンによるドッグファイトが始まった。

 互いに背後を取り合う空中戦闘だ。戦闘機は機関砲を放ち、ドラゴンはブレスを噴いて応戦している。

「な、なんだあれは……天上の戦いだべか?」
「恐ろしい叫びの二体のドラゴンが戦ってるべ! 片方はなんか変な形だが」

 陣地にいる兵士からもそんな感嘆の声が聞こえてくる。

 目まぐるしく動く二体の飛行物体の戦いは、最終的に戦闘機がドラゴンに体当たり。

 空中爆発を起こして戦闘機は木っ端みじん、ドラゴンは墜落して決着がついた……。

「セバスチャン!? あいつ何やってんの!? なんで戦闘機側が突っ込んでいくんだよ! 逆だろ!」
「落ち着くでござる。セバスチャン殿ならばすでに脱出しているでござる、心配ご無用」

 センダイの言葉はどうでもいい。俺だってセバスチャンがあんなことで死ぬとは思ってない。

 事実として俺達の前に、器用にパラシュートを操って落ちてくるセバスチャン。

「申し訳ありませぬ、アトラス様。ドラゴン相手に戦闘機では不利でございます。奴ら、空中でも身軽に動けますぞ」
「まあそうだろうがな……」
「空中爆撃は無理ですな。次の作戦を行いましょうぞ」
「ところで何で自分から体当たりを」
「射撃が当たる気配がなかったもので」

 何事もなかったかのように、パラシュートのパックを背中から取り外していくセバスチャン。

 戦闘機は兵器なので異世界ショップでは安く買えるから、ドラゴン一頭倒すのに一機なのはよい。

 だが一機一体交換ができるのはセバスチャンくらいだろう。

 仮に普通の兵士を戦闘機に乗せても、体当たりで敵を倒すなんて芸当は無理だ。

 おのれ名も知らぬドラゴンめ……流石は裏ボス級……! 戦闘機でも歯が立たないとは!

 いや落ち着け。これは真に残念ながら予想していたことだ。

 ここの魔境ではあらゆる策を練ってなお、確実に成功する策などない。

 故にいくつもの作戦を考えて実行する。つまりは数うちゃ当たれ……!

「第二作戦だ! レザイ領の兵士を借りてこい! あいつらを前方に出させて、敵の魔物を森の入り口付近に呼び寄せて迎撃する! 火力はカーマたちと戦車をフル稼働しろ!」

 頭を切り替えて次の作戦を指示する。

 先ほどの戦闘機迎撃や以前に俺達が東レード山林地帯に入って来た時、ここの魔物は俺達を積極的に襲い掛かって来た。

 おそらくだが奴らは人がいると襲ってくる習性を持つと考えられる。

 なので魔物をおびき寄せることで、戦車で砲撃して倒す作戦だ。

 森に戦車を入らせることはできないため、入口付近で固定砲台として扱う!

 レザイ領の兵士を囮に使うのもすごく簡単な理由である。

 人の数が多ければ多いほど、魔物たちがおびき寄せられる可能性が上がるだろう。匂いとかで。

 まあ魔物たちと戦う時は、レザイ領兵士にまずは前に出てもらうのだが。

 センダイは俺の意見を読み取ったのか、酒瓶に口をつけた後。

「ふむ……肉壁ということでござるな」
「どちらかというと肉餌かもな。もちろん食わせるつもりはないが」

 俺とて悪人ではない。

 敵を引き寄せる餌ではあるが、犠牲にしようなどとは考えてない。

 最前線で戦ってもらうのと、いざという時は殿になってもらうだけである。

 奴らはクズなだけあってしぶといのだ。こういった生き残ることに関しては、フォルン領兵士よりも頼りになりそうだし。

「しかしレザイ領兵士は来るのでござるか? 命の危機を察してこない可能性も」
「大丈夫だ。かなりの高額報酬で釣って待機させてるから。むしろ意気揚々と呼ばれるのを待ってるらしいぞ」
「むぅ。命よりも金ということでござるか……」
「いやどちらかというと、いざとなれば逃げればよいと思ってるだけだと思うぞ」
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