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国内騒動編

第177話 レザイ領への対応協議

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 レザイ領主の腐った性根と、フォルン領に宣戦布告してきた理由はわかった。

 わかったが……無駄遣いした金を俺達から奪うためとか、どう対策してよいのか……。

 今も執務室で緊急会議を行っているが、はっきりいってどう対応するか目途が立ってない。

「……これはあれか? レザイ領主さえ何とかすれば、レザイ領は落ち着いてくれるのか?」
「実はレザイ領民に我が領の物資を奪われた商人の声が届いておりますぞ。奴らが物凄く嬉々として奪って来た、俺達は正義だ! と」
「……無理そうだな」

 レザイ領主を捕らえたとしても、奴の領民が大人しくしてくれそうにない。

 こうなるとかなり厄介だ……レザイ領を放置すれば今後も俺達の物資を盗まれる。

 かといって進軍したら戦費はかかるし、占領したら統治もしなければならない。

 レザイ領民は基本的にクズが多いし、統治しても手間がかかるしうま味も少ない。

 ……どちらに転んでも大損である。

 もちろん要求された金貨を払うのも論外だ。味をしめてまた同じことをやってくる。

「……まさかレザイ領主はここまで計算してるのか!? 俺達がどう転んでも得しないように!?」
「してないと思うよ……」

 カーマがボソリと呟いた。

 うん、俺も正直そう思う。そんな諸葛孔明みたいに頭がよい奴なら、そもそも金貨九千枚も無駄遣いしてない。

「アトラス様。ちなみにレザイ領主から更に手紙が届きましたぞ!」

 セバスチャンが俺に手紙を渡してくる。

 ……この紙、めちゃくちゃ質が悪いな。明らかに公的な文書で使う類のものではない……。

 ――フォルン領主よ! レザイ領総員八千の兵士が、フォルン領に牙をむくぞ! 速やかに金貨三万枚を払え!

 ……また要求金貨が一万枚増えてるんだが。奴の思考回路がまるで理解できない……。

 というかレザイ領って八千も兵士いるのか? フォルン領でも二千くらいなんだが……。

「セバスチャン。手紙にレザイ領兵が八千いるって書いてあるんだが」
「レザイ領民全員でおおよそ八千くらいと思いますぞ」
「……女子供いれて?」
「はいですぞ」

 悪魔かあいつは……国民皆兵の軍事大国もビックリの戦力計算式だ。

 そもそも兵士の数が少しくらい多くてもだ。魔法使いがいなければ大した脅威にもならないのだが……。

 ミサイル撃ちまくる相手に対して、反撃手段のない歩兵だけでは何の役にも立ちはしない。

「う、うーん……どうするかなぁ」
「弟さんを使うのはどう? 同じ思考なら領民たちを説得が」
「ダメだ」

 カーマの意見を即否定する。

 その策はもっとも最悪手だ。絶対に行ってはならない。

「え……あ、もしかして。あれでも一応は兄弟だし、敵対領地の弟を向かわせるのは危ないと心配して」
「いいか? 弟の唯一の利点は捨て駒にしても、心も懐も傷まないことだ」
「ひ、酷い……」

 むしろどこかで戦死とかしてくれて構わない。

 奴は経済攻撃において切り札となりうる存在だが、油断すればこちらにも被害が出る諸刃の剣だ。

 いないならそれで特に問題はないのだ。

「カーマよ。断言するが奴は領民をまとめ上げて、さらに強大な軍団に仕立て上げるぞ。毒の中に猛毒いれたら、融合して余計に強い毒になるだけだ」

 カーマの言うことを実行でもすれば、もはや収集不可能な事態になるだろう。

 何度でも言うが我が元弟は味方にすると恐ろしいのだ。

 奴はレスタンブルク国に戻してはならない。

「みんな、何かよい案はないか……? 俺としてはレザイ領民の物資の盗難を防げればいいんだが」

 俺の言葉にみんな悩みこんでしまった。

 しばらくの静寂の後、センダイが酒瓶に口付けながら。

「やはりレザイ領主を失脚させて、まともな人間を頭に置くくらいでござろう。それでフォルン領の物資を襲う者は全員打ち首にすれば、ある程度おさまるかと」
「奪うだけで打ち首ってのもかなり重い罪だな」
「奴ら、自分のことが何より大事な類でござる。そこまでの危険を犯すものは少ないと予想する」

 ……やはりセンダイの提案辺りが無難なところか。

 おそらく次のレザイ領主は恐ろしく苦しむことになるだろう。

 領民が山賊すれすれのヤバイクズばかりだし……彼らをうまく制御できるか怪しい。

 ハッキリ言ってしまうと、一時的な対応にしかならない可能性もある。

 またレザイ領民が暴走して新しく立てた領主を追い出すかもしれない。

 ……でも他に策はないし、フォルン領の物資が盗られ続けるのは大問題だ。

 そもそも実質治外法権と化していた領土が、存在していたことが問題だった。
 
 これを機に王家にキチンとレザイ領を統治してもらおう。

 つまり全部押し付けてやる! 何がよしなに。だボケ!

「あ、いいこと思いついた。現王が引退したらレザイ領主になってもらおう」
「老骨に鞭どころか鉄塊を撃つ気概でござるな」

 まあとうぶんは引退しないだろうけど、レザイ領も十年やそこらで解決する問題でもない。

 なんたって領民のクズさは、イレイザーが脳への影響らしいからな。

 そう簡単には治らないだろうし、領民が世代交代するまで続くだろう。

 とりあえず勝利条件は確定させた。レザイ領主を確保して、このくだらない争いを終わらせよう。

 俺は(一応)防衛隊長のセンダイに視線を向けると。

「じゃあレザイ領に進軍するか……? それとも領主を排除するだけだから、少数精鋭で行くか?」
「進軍のほうがよいでござるな。こちらの強さをレザイ領民にも見せつけておいた方が、今後の統治もうまくいきやすいかと」
「なるほど。千人くらいの軍で進めば、領民はたぶん恐れるだろうしな……でもまた戦費が……」
「そこは諦めるでござる。では拙者は酒の用意を」

 畜生……また出兵で金が減るのか……前のラスペラス国との戦いに比べれば、ドラゴンがいないだけマシだが。

 レザイ領主め……! 覚悟しやがれ! お前絶対許さないからな!

「アトラス様。それと派手に目立つように、以前にレード山林地帯を開拓した魔道具を出してもらえるでござるか?」
「トラックとかのことか? まあいいが役に立つか?」
「無論でござる。あれを見れば逆らう気も失せてくれるでござろう」
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