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ラスペラスとの決戦編

第158話 ラスペラス国と再交渉②

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 化粧品セットを取引材料に、ラスペラス国と再度会談を取り付けた俺達。

 今回は女王たちをレスタンブルク国に招待して、会談が行われることになった。

 これは向こうが前回の会談時に俺達を捕らえようとしたため、当然の措置である。

 会談場所はうちの屋敷である。王都だと他のクズ貴族の茶々が入るため、フォルン領にしたわけだ。

 そうしてメンバーが集結して席に座り、うちの会議室で国の運命を握る会談が始まった。

「ちょっとぉ。早く化粧水セットをよこしなさいよぉ」

 開口一番BBA女王のうわきつ口撃である。

 ちなみにレスタンブルク側の出席は俺とカーマとラーク、ラスペラス側はうわきつBBA女王とランダバル。

「先にレスタンブルク国と、ラスペラス国の戦争についての相談だ。それが終わったら、サンプル品をくれてやる」
「いや本物渡しなさいよぉ」
「それはお前たちとの会談の結果次第だ」

 サンプル品くらいなら数日でなくなるので無料でくれてやるが、基本的には化粧品は交渉材料だからな。

 うわきつ女王はつまらなさそうに、机にひじをつくと。

「それで相談ってなによぉ? 無条件降伏するってことぉ?」
「するわけないだろう。そうだな……イレイザーの件についてだ」

 俺がイレイザーの単語を発した瞬間、うわきつ女王とランダバルの表情が一変した。

 舐め腐った態度からすごく真面目な顔になると。

「……どこでその名前をぉ?」
「フォルン領を調査した結果だ。以前の会談では少々情報不足だった」
「少々かなぁ……?」

 カーマ、お口チャック! 

 向こうは俺がイレイザーの存在自体は知ってたと誤解してるはずだから!

 俺は不敵な笑みを頑張って浮かべると。

「今回はそうはいかないぞ」
「そぉ。確かに前回よりは話す価値ができたわねぇ。なら話くらいは聞いてあげぽよ」

 絶対あげぽよの使い方間違ってるだろ。

「俺達としてはラスペラス国との全面戦争は避けたい」
「なら話は早いわねぇ。あなたたちが全面降伏すれば終わりじゃない」
「全面降伏なんぞあり得ん」
「なんてワガママな……そんな男は嫌われちゃうぞぉ☆」
「カーマ、止めるな! 俺はこの女を叩かないと収まらん!」
「ダメだってば!? いちおう女王だよ!?」

 女王にビンタしようとしたら、カーマにしがみつかれて止められてしまった。

 畜生! 今晩あたり思い出して寝れなくなるぞ! 

 そもそも全面降伏を拒否するのをワガママとか話にならん!

「いいか? そもそもお前たちは自分側が戦争すれば勝てると勘違いしている」
「はぁ? 国力も軍の力も、ラスペラス国が上なんですけどぉ?」
「確かにそれらはお前たちが上だ。だが俺達には、お前たちを遥かに凌駕する力がある」
「精神力とでもいうつもりぃ? 今時精神論なんてはやらないわよぉ」

 女王は水を飲みながら、ウザい口調で告げてくる。

 流行らないのはお前のその喋り方だよ!

「そんな目に見えない力ではない。レスタンブルク国に存在する恐ろしき力がある……」

 そう。我が国が唯一、他国に絶対負けないと豪語できる力。

 恐るべき最凶。話し合いも何もかも通じない理不尽。

 俺はうわきつ女王とランダバルに真っすぐ視線を向けた後。

「レスタンブルク秘伝! クズの力を舐めるなよ!」
「「……はぁ?」」

 うわきつ女王とランダバルは目を丸くして驚いている。

 確かに傍から見れば意味不明。こいつ何言ってるんだと思うだろう。

 だがそれを考えた者はすべからく愚かであると断言できる。

「ラスペラス国、急に革命みたいなことが起きたらしいな。領地がまるごと、反逆したらしいな?」
「それがどうしたっていうのよぉ」
「……はっ!? そういえば、あの革命の筆頭は恐ろしくクズな発想をしている者との報告が……」

 理解できない女王に対して、ランダバルには思い当たる節があるようだ。

 そう! うちのクズはそんじょそこらのクズとは格が違うのだ!

 マイナスも極めればプラスになる! 

 レスタンブルク国のクズは、すでにラスペラス国に大打撃を与えているのだ!

「えぅ。いやそんなバカな話があるわけぇ」
「それがあるんだよ! その革命のクズは、レスタンブルク国のクズだ! そして更に第二弾、第三弾とクズを送る準備もある! この意味がわかるか!?」

 ちなみに俺にはわからん! むしろ脳が考えるのを拒否している!

 だが奴らはそれを聞いて少しひるんでいる。

「くっ……! だけど所詮はクズよねぇ! 私の魅力で骨折りにしてやるわ!」
 
 随分と打撃力のある魅力だなおい。それを言うなら腰抜けとかだろう。

 やはりクズだけでは相手を心変わりさせるまでは無理か。

 だが俺にはまだ手がある。

「それとな、武力でも俺が勝てるんだよ」
「はぁ? 戦力差は歴然よぉ? 数倍以上の差をひっくり返せるわけがぁ」
「核ミサイル」

 俺の言葉に女王の表情が一瞬で青く染まる。

 核ミサイル……禁断の兵器のため撃つことをためらわれる。

 だがその存在と力を知った者に対しては、脅しとしては極めて有用だ。

 むしろ脅しとして使うのが、核ミサイルの正しい使い方とすべきと思う。

「ま、待ちなさいよぉ……どうせはったりに決まって……」
「俺さ、地球上のモノを何でも買えるんだよ。あんたに渡した化粧水、地球の有名メーカーのものだったろ? あんな精巧な瓶とか化粧水を、この世界の技術力で作れるか?」

 うわきつ女王は押し黙ってしまった。

 そんな世にも珍しい女王の姿を見て怪訝な顔をするランダバル。

「ど、どうされました女王様? まさかとうとうご自分のきつさにお気づきに……」
「ふん!」

 うわきつ女王渾身の右ストレート。ランダバルは椅子から吹っ飛んだ!
 
「ごふわぁ!? ろ、老骨にひびが!?」
「こんなか弱い私のパンチで、どうにかなるわけないでしょぉ。演技はいいわよぉ」
「え、いえ。わりとガチでアバラ骨あたり折れてる感が……」
「……いいわ。レスタンブルク国と全面戦争するのは、こちらにも大きな不利益とわかったわぁ。それであなたの要求はなにかしらぁ?」
「え、ちょっ。マジでワシ痛いんですが放置ですか!?」

 悲鳴をあげるランダバルは放置して、女王に俺の狙いを告げることにする。

「俺の求めるものはひとつ。代表戦だ! 全面戦争ではなくて、選りすぐりの千の兵で勝負を決する!」
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