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少しばかりの内政
第125話 養女……?
しおりを挟むひとまず戦後処理が終わったので、次は内政をしばらくやっていく。
俺としても色々とやることもあるし、すでにアミルダとも何をするかの相談は終えていた。
なのでしばらくは呼び出しはないと思っていたのだが……仕事始めようとした矢先に呼び出されてしまった。
仕方がないのでいつもの白竜城の玉座の間に行くと。
「来たか。これで全員揃ったな……」
アミルダにバルバロッサさんにエミリさん。そして第三王子もとい現クアレール王のメイドのマリーさんがいた。
彼女はクアレール出兵についていかずに白竜城に残っている。
理由は簡単、足手まといだからとチャムライが置いていったのだ。
ぶっちゃけ足手まといとかただの言い訳で、危険な場所に連れて行きたくなかっただけだろうが。
「以前にチャムライが希望した通り、マリーをあいつの正妻にする必要がある」
「……すまん」
マリーさんをチャムライの正妻にするのは、以前に俺が迂闊に約束してしまったことだ。
彼女は平民なので大国クアレールの王の正妻になるには、血の貴さや格などが不足している。
貴族特有の貴き血理論だ、相変わらずの血統主義である。側室としてなら問題ないのだろうが……チャムライは正妻じゃないと嫌らしい。
まあ平民の側室は、貴族の正妻にイジメられたりはありそうだしな。
例えば「この教育も受けていない薄汚い血が!」とか「平民の分際で! その流れる血のなんとマズそうなこと!」……いやこれじゃドラキュラの類だな。
何と言うか貴族たちは、『貴族から採血した血は何か高く売れるの?』みたいな感じに謎血プライドを持ってる。
まあ貴族共が血にこだわる理由なら分かるけどな。
あいつら既得権益を絶対失いたくないから、その理由づけに努力じゃどうしようもない血を叫んでるんだよ。
もちろん正当な理由もある貴族の当主が死んだ時に、制限なく誰でも継げてしまったらまずい。我も我もと皆が押しかけて強い者が! って戦国時代になる。
なので血にこだわるのは国の統治として大事だが、それで人を見下すのはまた違うと思う。
「申し訳ありません。ご迷惑を……」
更に俺と同じようにマリーさんも大きく頭を下げた。
「いや構わない。其方をハーベスタ国の貴族として、クアレール王に嫁がせることにする。これで二国関係を婚姻同盟で強固にできる……チャムライの思う通りに動いたのは少ししゃくだが」
なるほど。マリーさんに爵位を与えるか、誰かの養女にでもするのかな。
そうすれば彼女は立派なハーベスタ国の貴族だ。
「それでマリーをハーベスタ国を貴族にする。ただそこらの貴族ではクアレール王と格が合わないので王族にする必要がある。だがここで極めて重大な問題が発生する」
「なんだ? アミルダの養女にすれば終わりでは?」
マリーさんを普通の貴族にするならば、爵位をあげればよいだけだ。
だが王族は貴族と違って王位継承権を得るので、そういうわけにはいかない。そんなことしたら誰でも国王候補になれてしまうからな。
木っ端貴族はともかくとして、国王に誰でもなれてしまうのはよくない。間違いなく国が分裂して争うことになる。
アミルダは俺の言葉に対して遠い目をしている。
「……マリーの年齢は十八歳。私はもうすぐ十七だ」
「あっ…………」
「年上の子はおかしいだろ! 私は年上に義母様と言われるのか!? この年齢で!? 貴族たちに影口言われるに決まっている!」
あーうん、アミルダとしてはなんか気分的にかなり嫌なんだろうなぁ。
彼女は普段よりも気が昂っているっぽい……。
「まあほら、国の利益的に考えれば……」
「まだマリーのほうがよいとしてもだ! チャムライにまでお義母様と言われることを想像するだけで鳥肌が立つ!」
マリーさんがアミルダの養女となって、チャムライと結婚したら……アミルダはチャムライにとっても義母になるのかそういえば。
チャムライなら間違いなく「アミルダお義母様~」とからかってきそうだな。
「叔母様、別に叔母様自身が変わるわけではないじゃないですか」
「そもそも私は叔母様呼びを認めていない! なんで歳の変わらぬどころか、上の者にまで母などと言われなければならぬのだ! 気分的に嫌すぎるだろう!?」
「あーうん……」
俺が原因なので申し訳なさはあるのだが、それにしても国益を重視するアミルダにしては珍しく感情的だ。
それこそ先日は命を狙われた陽炎相手でも、普通に許して雇い入れるという度量を見せたのに。
「他人事だな、リーズ」
「まあ俺のミスなのでアレなんだが。正直細かいことというか……そこまで気にしなくても」
「なら聞くがマリーをお前の養女にするか?」
「いやマリーさんの方が年上だからおかしい……あっ」
「ほれみろ。なんかこう、反射的に否定の言葉が出るだろう」
なんということだろう。
他人のことならそこまで気にしなくてもと言えるのだが、自分の立場だと物凄く気になるなこれ!?
「……そもそも王配の俺の養女では弱いだろ。ならバルバロッサさんの養女にしてもらうのは?」
「伯爵の養女では身分が合わん。クアレールが小国ならばゴリ押せたが、流石に大国だからな……いっそ同じ王族のエミリに」
「マリーさんは私より三歳くらい年上ですよ!?」
何だろうこの、自分より年齢の高い娘に対する拭えない違和感は。
別にマリーさんを養女にしたくないわけじゃない。年上の娘という生物の摂理に逆らっている状況に、何か謎の倫理観が拒否しているようなアレ。
「マリーさんの生まれ自体を偽造しては? アミルダの父上が一夜の過ちで平民と産んだ娘にして」
「それはそれで私の姉が生まれてしまって面倒になりかねん。王である私の姉だぞ?」
「じゃあエミリさんの父上で」
「関係ない者が王族になれる前例になりかねんので却下だ。流石にそれはまずい」
……難しいなこれ。
いやマリーさんを養女にしてしまえば話は終わりなのだが。
ぐだぐだとあーでもないこーでもない、と続いた話。その打開をしたのはバルバロッサさんだった。
「マリーの年齢を偽造してはいかがであるか? そうすれば世間的には影口は出ないである」
「チャムライうんぬんは?」
「諦めるのである」
「………………仕方ない」
アミルダがとうとう諦めたので、無事にマリーさん(十八歳)はアミルダ(十七歳)の養女となった。
それと共にマリーさんの年齢が十六歳に下がったのだった。
……年齢が下がるとかおかしなことやってるが気にしたら負けということで。
ほら公的な年齢詐称みたいなものだから!
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