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刃を交えない戦争編

第69話 ハーベスタは蛮族国家!?

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 我がハーベスタ国の本拠が白亜の城になって一週間が経った。

 すでにアミルダ様は動き始めていて、ギャザの街の民たちの移住を考えている。

 そしてそれは容易に行えるだろう。何せギャザとこの城の距離はかなり近い。

 馬車で数時間ほど、歩きでも六時間から八時間程度しか離れていない。

 隣村に移住するくらいの感覚なので、人々も生まれ故郷から出て行くみたいな抵抗芯は生まれないだろう。

 それに……ギャザはアミルダ様の善政で活気があってよい街だが、経済基盤はかなり貧弱だし立地もあまりよくない。

 あそこに人を集めたとしてもおそらく大きな発展は望めないので、その意味でもここを本拠にする方が望ましい。

 そんな中で俺達は本丸……じゃなくて城の最上階の玉座の間に集められている。

 アミルダ様は玉座にもたれたまま、真剣な顔でこちらに視線を投げかけた。

「よく集まってくれた。今日はかなり重要な話をする」

 俺は緊張で思わず唾を飲み込む。

 アミルダ様が改めて話すほどの重要な話とはいったい……またアーガ王国が攻めてきたのか!?

 いやそれならいつものことだからそこまで重要でもないか……ってこれもおかしな感覚だな。いかんいかん、慢心している。

 彼女があれほど真面目な面持ちなのだから、物凄く重大な案件の話で……まさかとうとうクアレール王が崩御を!?

 それか新たな敵として周辺諸国ズのどこかが参戦!?

「いずれ我が国でパーティーを開催することになった」

 ――割とどうでもよかった。パーティー、楽しそうですね。

 でもそう思ってるのは俺だけなのか、エミリさんとバルバロッサさんも物凄く興奮している。

「ええっ!? 私たちの国でパーティーを開けるんですか!? すごいです!」
「おお! ハーベスタ国がパーティーを再び開ける日が来るとは! 感無量でありますぞ!」

 いや彼女らが喜ぶ理屈は分かる。

 何せ社交界と言えば外交パーティーであり、他国の重鎮を招くのは物凄く重要なことだ。

 そこで色々と貿易の取り決めとかするのも、俺はクアレール国で見て来たから知っている。

 でもなんかこう。やっとパーティー開ける! みたいな言葉が誕生日会みたいで……すごく大事なのは理解できるんだけどな!?

 ようやくハーベスタがパーティーを開けるほど、まともな国に戻った証明でありステータスになるわけだし。

 そういえば余談だが日本でもパーティー的な物がステータスになったことがある。

 戦国時代の織田家の話だが、茶会を開くのは許可制で手柄を立てた褒美にしていた。

 茶会できること自体がすごく名誉という位置づけにしてたらしい。

「だが社交界を開けばよいというものではない。他国の重鎮を招く以上、このパーティー次第で我が国の評価も大きく変動する。料理に装飾、余興に衣服など細かなところまで見られて、ハーベスタそのものの評価とされるのだ」
「わかっています、叔母様。素晴らしいパーティーにすれば評判も上がりますが、ダメダメだったら地に落ちてしまいますからね」

 パーティーは貿易の話などを行う場だけでなく、人脈作りや国の特産の品評会なども兼ねられる。

 それこそ先日のクアレールで我が国は清酒などで評判をあげた。

 各国を動かせる有力者が一堂に会する場所なのだから、自ずと凄まじい影響力が発生してしまうのだ。

 それこそパーティーに参加した各国首脳が、こんな感想を抱くこともあるだろう。

 『あの国の王は無能そうだ、衰退しそうだし手切れするか』、『あの者を余は好かない。今後は取引を控えよ』、『飾りも料理も貧相な会場だ、もはやまともにパーティーを開く国力もないか』など。

 各国首脳にそう思われたら、どう考えても今後の外交に大きく影響してしまう。

「無論、今すぐには開けない。我が国はしばらく内政に集中して、経済を整える必要がある。だがその目途がついた時点で、外交パーティーを開催するのだ。周辺諸国に対して我が国の威信を取り戻す!」

 アミルダ様が強く叫ぶ。彼女としても思うところがあるみたいで、感情が少し昂っているようだ。

 まあハーベスタ国が正式に国としての力を取り戻したと、内外に示せる絶好の場だもんな。

 崩壊寸前だった我が国がそこまで力を盛り返した。アミルダ様としても感無量なのだろう。

 でも少し気になることがある……別に勝ちまくってるから威信はすでにあるのではないだろうか。

「ですがアミルダ様。我が国はアーガ王国などに連戦連勝、威信はとっくに戻っているのでは?」
「ハーベスタ国の世間での評判はな、戦うことしか出来ない蛮族だ」
「……ええ」
「だが実際のところ、今までほぼ戦い詰めだったからな。周囲からそう見られても無理はない。落ち着いて考えてみよ、貴様が来てからの我が国の戦争経歴を」

 ほとんど防衛戦しかしてないのに理不尽極まりない。

 俺達は降りかかる火の粉を払うために必死に戦い続けてきただけなのに!

 ……確かにずっと戦いまくってるのは否定できんな。

「えーっと、俺がハーベスタ国に来てから半年ちょっとですよね。それでアーガ王国四戦にモルティにビーガンに……うわ月に一度くらい戦争している計算……」
「そうだ。本来ならばここまで連戦など不可能なのだがな、貴様の力によって問題なく行われている。しかし傍から見れば意味不明なので、周辺諸国が恐れるのも無理はない」

 戦績だけ見たら完全に戦好きの蛮族です、本当にありがとうございました。

 少し遠い目を見ているとアミルダ様がため息をついた。

「気づいたか、我が国は蛮族と言われても仕方がないのだ。戦いに明け暮れて血を求める野蛮人とな」
「アーガ王国とかが攻めてくるからで、俺達は何も悪くないのにっ……!」

 やっぱりアーガ王国ってクソだな! 無辜の俺達の評判をも落としやがって!

「よって国の商業を整えて経済を回すことで、我が国は真の意味で威信を取り戻せるのだ。今後はそれを肝に銘じて国の建て直しを行って欲しい」
「ははっ!」
「本日はこれで解散する。明朝に改めて指示を出すことにする」

 思ったより我が国の評判酷すぎた……アミルダ様は善政を敷くよい王様なのに。

 これは何としてもハーベスタ国は蛮族ではないと証明しなければ!

 蛮族なのはアーガ王国だけなんだよ!
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