チート生産魔法使いによる復讐譚 ~国に散々尽くしてきたのに処分されました。今後は敵対国で存分に腕を振るいます~

クロン

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腐った既得権益 ベルガ商会編

第43話 最後の抵抗

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間違えて次話を先に投稿していました。
申し訳ありません。
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「ど、どうするんですかギーヴ様!? 買収した山賊たちも捕らえられてしまいました!」
「もうまともな手駒はいませんよ!? 妨害も無理ですし万が一に我らと山賊団の関わりがバレたりしたら……!」
「やかましい! くそっ、あの無能どもめっ! 今まで何のために養っていたと思っている!」

 ベルガ商会本部の会議室でギーヴたちは凄まじく焦っていた。

 何せ頼みの綱だった山賊たちが、何の成果もなしに捕縛されてしまっている。

 彼らはベルガ商会の権限が通用しづらい相手に対して、非合法的に処刑するための子飼いだ。

 例えばベルガ商会に逆らおうとする民衆の集まりがあれば、それそのものを防ぐ権利をベルガ商会は持たない。

 あくまで処刑実行部隊は独占売買権を盾に動くので、それが適用されない相手には嫌がらせ程度しかできなかった。

 だがその参加者や家族はいずれにも盗賊に襲われるのだ。

 どう考えても真っ黒である。だがベルガ商会と元ルギラウ王は血縁を持っていたので、ベルガ商会と盗賊の関係に証拠があったとしても揉み消される。

 つまり表の処刑執行部隊と裏の盗賊部隊として、民衆の間では公然の秘密であった。

 そして盗賊部隊とベルガ商会は直接関係していない態を取っている。

「我らと盗賊部隊の間には他の組織を噛ませている! 関係はバレないはずだ! 今回の失敗は致命傷とまでは言えない!」

 ギーヴは強がるがこの大失敗は大きな痛手だった。

 今後はエミリへの警備も厚くされてしまい、同じ手段はもう不可能になってしまう。

「……こ、こうなれば! 奴らの配っているおにぎりとやらに毒を混ぜる!」
「ど、どうやって!?」
「奴らは商店を倉庫代わりにして、そこに米をしまっているはずだ! 毒を撒けばよい! 奴らの売った食料で人が大量に死ねば、まともな食料を売れないのだから食料関係は全てを我らに独占売買権を与えるべきだと言える!」

 商売の妨害どころか商品そのものを損壊させる手段を講じてしまう。

 そして民衆の命を大量に犠牲にしてでも利益をあげるのは、まさに死の商人と呼ぶにふさわしい存在だった。

「倉庫に忍び込ませて毒を……わかりました! すぐに手練れを放ちます!」
「うむ! 今度こそは必ず成功させろ! そうでなければ我らに未来はない! どんな犠牲を出そうが、ベルガ商会が存続するのがこの国のためだ! もし無理そうなら建物ごと燃やせ!」

 ベルガ商会の存続を望んでいるのは、ベルガ商会の関係者だけである。

 彼らは自分がこの国のガンになっていることに気づいていない。

 自分達は正しいことをしていて、大義のためには民衆の犠牲などやむなしと考えていた。

 だからこそどんな手段を取ってもよい、自らは正しいのだと平気で叫べるのだから。

「我らベルガ商会がいたからこそルギラウ国は存続したのだ! それを分からぬ女王などいずれ消し去ってくれる!」
 


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「倉庫の米を狙ってくるんですか?」
「はい、間違いありません。どうせベルガ商会なので、ここまでなってなお妨害してくるでしょう」

 ベルガ商会の野盗を街の外で捕縛した後、俺達は急いで街へと戻った。

 そして俺とエミリさんはアミズ商店の米倉庫……じゃなくて玄関口で話し込んでいた。

 ……この商店、現状は完全に米倉庫だからなぁ。

「流石のベルガ商会と言えどもそこまでやるでしょうか……?」

 エミリさんはなおもベルガ商会の善性を信じているようだ。

 だがアッシュたちを関わっていた俺は断言できる。あいつらは性根から腐っているのだ。

 救いようのない人間というのは一定数存在する。

「夜盗が俺達の襲撃に失敗したのは、早馬か何かで知らされているはずです。早々に仕掛けてくるでしょう。何せベルガ商会には後がないのだから」

 奴らはこのまま俺達が米を売り続けたら、自分たちの食料が売れずに破滅……いや破産なのだ。

 俺達の妨害を仕掛けてくるのは目に見えていた。

 以前の処刑実行部隊もやってきていたが、あれは俺達を狙って来たというよりは他の商会と同じように普段通り妨害した感じだったし。

 もう独占売買権は通用しないのは理解しただろうから、コッソリと邪魔をしてくるはず。

 そうなればここにある米に何か仕掛けてくる、と考えるのが妥当だ。

「失礼します! おにぎりを取りに来ました!」

 兵士のひとりが玄関から入ってきて米を取りに来た。

 だが……何となく怪しいな。ちょっと確認しておくか。

「待て、符を見せてもらおうか」

 俺は米に近づこうとする兵士を止める。

 現状の米はかなり貴重な代物のため、盗人が狙ってくることは十分考えられる。

 なので入る許可を与えた兵士にはその証となる符を渡していた。

「はい、これですよね!」

 兵士は自信満々に符を差し出してくる。一見すると書いてある内容にも問題はない。

 とはいえ普通の符なら偽造は可能。その対策として勘合符……一つの符を半分に切り取って、それを合わせて正しいかを証明する方法を取っていた。

 昔の日明貿易での証明で使われていた手法である。

 その符を受け取って懐にいれていたもう片方の符を合わせてみると……少しだが微妙にズレがある。

 俺はポケットのマジックボックスから、サングラスを取りだして装着すると。

「…………エミリさん、お光りください」
「え、あ、はい」
「め、めがぁぁぁぁぁ!?」

 エミリさんの建物内でのフラッシュ。

 紛れ込んだ間者の目にクリティカルヒット!

 米の倉庫内で下手に戦うと米俵が傷つけられてしまう恐れがある。例えばセレナさんの氷魔法を派手に使うと、米も巻き添えに凍らせてしまうかもしれない。

 でもエミリさんのはただの光なので米も懐も痛まない!

 急いで間者を縄でくくって外に出ると……数人の男の氷像が飾られていた。

 妙に周囲が寒いのでおそらく出来立てヒヤヒヤっぽいな。

 するとセレナさんがこちらに走って来た。

「リーズ様、無事ですか!? この者達が商店を燃やそうとしてまして……」
「は?」

 ……中に仮にも味方がいたのにそれごと燃やそうとするとは。

 ベルガ商会ヤバ過ぎるな。捕らえたこいつらから関係を洗い出して、何としても捕縛しないと。

 それに民衆が飢えているのに、更に米を燃やそうとするとは許すわけにはいかない!

「俺はアミルダ様の元にこいつらを連行する! 今後は部外者を店の周りに近づかせるな!」

 兵士に命令しつつ急いで王城へと向かうのだった。

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