9 / 134
惨敗将軍ボルボル編
第9話 完全勝利!
しおりを挟む現在は陣地で軍議の真っ最中だ。
アーガ王国軍に対して、我が軍は伏兵を忍ばせて囲んで四方から攻める作戦を取ることになった。
理想は完全包囲ではある。だが残念ながら我が軍は千人のため、一万人相手に包囲は難しい。
新参者である俺は口を挟むつもりはない。下手に何か言っても実績のないやつの言葉などムダだろう。
そもそも俺は帥の素人なのでクリティカルヒットな意見など無理。なので聞く専門で唯々諾々と従うことにする。
アミルダ様が地面に簡単なイメージ図を描いてくださった。
バルバロッサ
↓
アミ+エミ+兵400→ 敵 ←兵500
↑
業炎鎧兵30+兵70
「敵軍は兵糧が不足していると報告を受けている。こちらを舐めてもいるので必ず突っ込んでくるから伏兵は成功するはずだ。誰も異論はないな。ではこの作戦で」
「いや待ってください!?」
「なんだ?」
しまった!? 思わず叫んでしまった!?
いやでもこれ絶対おかしいよな!?
「どうされました? 叔母様の作戦に何か問題がありますか?」
「え、これツッコミ待ちじゃなかったんですか……?」
「がっはっは! 何を言っておる! アミルダ様がこんな時に冗談を言われるわけなかろう!」
おかしい、まともなのは俺だけか!?
四方のうち明らかにおかしい方面がひとつあるよね!?
「リーズ、お前の言うことはわかる」
するとアミルダ様がとうとう説明してくださるようだ。そうだよな、流石にこの布陣は意味不明すぎて。
「戦力比が明らかにバラバラだ、北だけ異常に強すぎるのはわかる。だがバルバロッサが二人に分けられないため、どうしてもな」
「……え、これバルバロッサさんの北方面が最強なんですか!?」
おかしい、この世界の人間にそんな化け物がいるなんて知らないぞ。
「当然だ、バルバロッサが一騎当千なのだから東方面の倍だぞ」
一騎当千ってガチで兵士千人計算することじゃないと思う。
「……と、ところで俺はどこに配備されるんですか?」
ツッコみどころが大きすぎて失念していたが、俺が書かれてないじゃないか。
有象無象の兵に組み込まれてるのだろうか。
「リーズ、貴様は今回は待機しろ。それとエミリについてやれ。初陣なので見張りがいたほうがよい。お前は振る舞いを見る限り、そういった者ではあるまい」
「ははっ!」
そうして軍議が終了してからしばらくすると、アーガ王国軍が進軍してきた。
ギリギリ矢が届かない距離で見合っていて、いつ戦闘が始まってもおかしくない。
砂と鉄と魔法の応用で魔導双眼鏡を作ってアーガ王国軍の様子を確認。
敵軍はすでに疲れ切っているようだ。
しかも皮鎧すら装備せずに槍持ってるだけの兵士が多数見える。
ははぁ、なるほど。リーズがいないのに動きが速いと思っていたが、物資を満足に用意せずに来やがったか!
「でもあんな貧相な装備で戦う選択を取るとは、指揮官はいったい誰……」
俺は敵軍の中に戦場に似つかわない、華美華美派手な馬車を見つけた。
仮にも兵士でありながら戦場であんなバカみたいな馬車を乗り付ける奴を、俺はひとりしか知らなかった。
……ボルボルだ。俺の復讐対象がやってきやがった!
最高じゃないか! 勝ち確定だから派遣されたってことか!
ここであいつをぶっ倒せば、勝ち確の戦に負けさせたと死ぬほどの汚名をきせられるぞ!
うまく捕まえれば処刑もできるし殺せる! いやでも流石に兵の数に差があり過ぎて逃がしてしまうから難しいか。
それにあえて今回は見逃して、汚名の屈辱で苦しませるのもありか?
あいつなら少し不利になった瞬間、兵も軍も見捨てて逃げ出しそうだし無理に捕縛狙うのはやめよう。
「か、勝てますでしょうか……戦力差十倍だなんて」
笑い出しそうなのを必死にこらえていると、エミリさんがすごく心配そうにしている。
彼女は立派な鎧姿で見た目こそ姫騎士のようであるが、実際は初陣なのでとても騎士の働きは無理だ。
むしろ鎧に着られているような状態だし、本来ならもっと後方で安全に戦うべき人物だ。
だが悲しいかな。現在のハーベスタ国に後方部隊なんて存在しない。
文字通り全軍指揮で本来補給部隊の者まで戦闘員と計算している始末だ。
すでにここは最終防衛ラインなので撤退はない。
とても新兵が経験するような戦じゃないなこれ……。
「もちろんです、そのために色々用意しましたから。それに……実際の戦力差はそこまでないかもしれませんよ」
「えっ? どういうことですか?」
「敵の装備が酷すぎるのでおそらくまともに兵糧なども揃えておりません。あんな状態では士気も皆無でしょうから、少しぶつかって蹂躙すれば潰走するやも」
軍の全滅とは三割の兵士が戦闘不能になることだ。
なので敵が一万いると言っても、一万人全て殺さねばならないわけではない。
ましてや今のアーガ王国軍の兵士たちはやる気がない。
一割程度を削ってしまえば、尻尾を撒いて逃げていくのではなかろうか。
それを説明するとエミリさんはパッと顔を明るくさせた。
「ほ、本当ですか! それなら勝てますね!」
「そういうことです。おっと始まりますよ」
先にしびれを切らしたのはやはりアーガ王国だ。
伏兵など知らぬとばかりに馬鹿みたいに突っ込んでくる。ボルボルが指揮官ならば当たり前だ。
無能とはボルボルのためにある言葉だからな!
仮に有能な指揮官だったとしても、兵糧不足ならば勝負を急いで攻めてくるかもだが。
戦は準備が大事だからな。謀多きは勝ち少なきは負けると有名な戦国武将も言っていた。
兵糧不足で攻めてくるのは謀以前な気もするけど。
「焔の龍よ、その顎にて灰塵と化せ!」
戦場にアミルダ様の声が木霊して、敵軍の前方に巨大な炎の龍が出現した。
それは敵兵を百ほど飲み込んで消え去った。そこには灰すらも残っていない。
「すごいな。エミリさん、あれって」
「あ、あれは叔母様の最大魔法です! 一発でほぼ魔力が空になりますが、その威力はお墨付きなんです!」
確かに凄まじい火力だ。
アーガ王国軍はすでに困惑しているぞ。まさかアミルダ様があそこまでの魔法使いだったとは。
「ひ、ひるむな! あれは女王の一発限りの魔法よ! もう使えぬ!」
中隊長らしき人物が叫んでアーガ王国兵に命令を下す。
どうやら敵軍もアミルダ様の力はある程度把握しているようだ。
するとアミルダ様はエミリさんのほうをにらんだ。
「エミリ! 攻撃の合図を上げろ!」
「は、はいっ! 光の戦慄、輝け!」
エミリさんが掲げた両手から虹色の光が出現し、空に一本の柱のように伸びていく。
これがエミリさんの戦場でのメインの使い道。
つまりはのろし係である。通信機器がないこの世界では、味方と連携するのに合図が必要なのだ。
煙と違って光による連絡には大きな利点がある。天気が雨模様になってものろしをあげられることだ。
今は残念なことに晴れなので煙でもあまり変わらないけど。
ま、まあ他にも色を色々変えることで様々なパターンの合図を送れるとか、光だから敵が偽造できないとかの利点がある。
彼女自身も戦えはするそうだが、魔法を下手に攻撃に使うよりのろし係のほうが役に立つそうだ。
合図に従って伏兵たちが敵軍の左右後方から姿を現して攻め始めた。
「伏兵か! 構わぬ! このまま正面を突破せよ!」
敵軍の実質的な指揮官の声があがった。ボルボル? あいつがまともに指揮なんてできるわけがない。
敵軍は四方包囲で厳しくなる前に、前方の俺達を打ち破ろうとするが。
「ぜ、全身金属鎧の兵士ばかりじゃねぇか! こんなの剣や槍じゃ無理だろ!? しかも皮鎧のように動きが速いんだが!?」
「バカな! なんで崩壊寸前のハーベスタ国が金属鎧をここまで揃えられる!?」
「ひ、引いてくれ! こっちは無理だ! 押すな! やめろ!」
我がプレートアーマー軍の圧力の前に、敵の兵士は怯えまくっている。
そりゃそうだ。俺だって皮鎧に槍で敵の重装騎士を相手とるのは勘弁だ。
しかも我か軍はドーピングで筋力マシマシのため、重装備でありながら動きもそこまで鈍くないという悪夢。
そうなると敵軍は前方突破は諦めて、他方面から抜けようとするだろう。
だが……。
「やめろっ! こっちも鉄鎧だ! 無理だっ!」
敵の後方から迫りくる部隊も全員が重装騎士だ。
そうなると敵が突破する方向の選択肢は左右どちらかになるが。
「な、なんだあの赤い鎧!? 槍が溶けっ!?」
「あっ、あちっ!? ああああぁぁぁぁぁ!? お、俺の腕がぁ!?」
「バカな!? あの鎧には武器が通じぬと言うのか!?」
業炎鎧部隊に蹂躙された兵士たちの悲鳴が聞こえる。
可哀そうに。攻撃したら武器が溶けて、かといって何もしなければ斬られて殺される。
武器では無理だと組み打ちを狙って触ろうものなら己の肉が溶けて死ぬ。
あの鎧部隊にはちゃんと対策を取らねばどうにもならないのだから。現状では敵軍に業炎鎧を何とかする術はない。
そして唯一の隙間だと思われていた敵の右方。つまりバルバロッサさんのところはというと。
「がっはっは! このバルバロッサの武、そうそう対抗できるものではないわぁ!」
「「「「「「「ぐわああああぁぁぁぁぁぁ!?」」」」」」」
バルバロッサさんの叫びが戦場全体に響き渡り……なんか敵兵士が大量に空に吹っ飛んだぞ。
「ば、化け物だぁ!?」
「あ、あんなの近づけねぇよ! 逃げるぞ!?」
双眼鏡で様子を覗いてみると、巨大な丸太を振り回したバルバロッサさんが無双していた。
あっ、また十人くらいが丸太の一振りで肉塊になった……。
「ど、どうですか? バルバロッサおじさまはどれくらい倒していますか?」
双眼鏡を覗いているとエミリさんが少し怯えながら尋ねてくる。
「心配じゃなくて戦果を聞くんですね……」
「おじさまが雑兵にやられるわけがありませんから……」
「ところで何で剣とかじゃなくて丸太を」
「普通の槍は振り回すと折れるので、太い丸太の先端をとがらせて槍にしてるのと」
本当にひとりだけおかしなことやってる……まじで一騎当千ではないか。まるで無双ゲーのキャラみたいだぁ。呂布かなにか?
そうして敵軍を四方から押しつぶすことに成功し、かなりの数を撃滅することができた。
対して我が軍は怪我人はそれなりにいるが死者は数人だ。
完全包囲ではないので逃げた敵兵も多数いるが、完全勝利と言ってよいだろう。
15
お気に入りに追加
2,142
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい
斑目 ごたく
ファンタジー
「この騎士団に、事務員はいらない。ユーリ、お前はクビだ」リグリア王国最強の騎士団と呼ばれた黒葬騎士団。そこで自らのスキル「書記」を生かして事務仕事に勤しんでいたユーリは、そう言われ騎士団を追放される。
さらに彼は「四大貴族」と呼ばれるほどの名門貴族であった実家からも勘当されたのだった。
失意のまま乗合馬車に飛び乗ったユーリが辿り着いたのは、最果ての街キッパゲルラ。
彼はそこで自らのスキル「書記」を生かすことで、無自覚なまま成功を手にする。
そして彼のスキル「書記」には、新たな能力「命名」が目覚めていた。
彼はその能力「命名」で二人の獣耳美少女、「ネロ」と「プティ」を生み出す。
そして彼女達が見つけ出した伝説の聖剣「エクスカリバー」を「命名」したユーリはその三人の家族と共に賑やかに暮らしていく。
やがて事務員としての仕事欲しさから領主に雇われた彼は、大好きな事務仕事に全力に勤しんでいた。それがとんでもない騒動を巻き起こすとは知らずに。
これは事務仕事が大好きな余りそのチートスキルで無自覚に無双するユーリと、彼が生み出した最強の家族が世界を「書き換えて」いく物語。
火・木・土曜日20:10、定期更新中。
この作品は「小説家になろう」様にも投稿されています。
キャンピングカーで往く異世界徒然紀行
タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》
【書籍化!】
コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。
早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。
そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。
道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが…
※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜
※カクヨム様でも投稿をしております
【完結】【R-18】三十歳童貞を貫いて魅了魔法を習得。先輩に復讐H、好きな子と即ハメして決意する。「それは、僕自身が淫魔になることだ」
湊零
ファンタジー
冴えない社会人、日高宋真(ひだかそうま)は、三十歳になっても社畜であり、童貞だった。
そんな自分に絶望し、ビルの上から飛び降りる。
すると、死ぬ間際に「シトラス」と名乗る、天使のような悪魔が現れた。
彼女に誘われるがまま【契約】し、なんとか生き永らえる。
そして宋真は、【魅了魔法】を使える本物の魔法使いとなった。
魔法の力は強大で、例えばその一つ、【媚薬錬成(ポーション・メイカー)】を使えば、どんな女の子でも自分とエッチがしたくなるというものだった。
ネチネチと嫌味ばかりの女先輩、想うだけで手を出せなかった想い人。
今なら、好き放題ヤれる。
「本当に人生を好き放題出来るなら! ゴミのような目で見てきたアイツらに復讐できるなら! 僕は、悪魔にだって魂を売る!」
三十歳まで童貞を貫いたからこそ手に入れた【魅了魔法】の力で、宋真は第二の社会人「性」活を始めていく。
※Hシーンを含む話は、サブタイトル末尾に『★』マークが付いてます。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました
ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。
大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。
ー---
全5章、最終話まで執筆済み。
第1章 6歳の聖女
第2章 8歳の大聖女
第3章 12歳の公爵令嬢
第4章 15歳の辺境聖女
第5章 17歳の愛し子
権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。
おまけの後日談投稿します(6/26)。
番外編投稿します(12/30-1/1)。
作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。
平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
★ファンタジーカップ参加作品です。
応援していただけたら執筆の励みになります。
《俺、貸します!》
これはパーティーを追放された男が、その実力で上り詰め、唯一無二の『レンタル冒険者』として無双を極める話である。(新形式のざまぁもあるよ)
ここから、直接ざまぁに入ります。スカッとしたい方は是非!
「君みたいな平均的な冒険者は不要だ」
この一言で、パーティーリーダーに追放を言い渡されたヨシュア。
しかしその実、彼は平均を装っていただけだった。
レベル35と見せかけているが、本当は350。
水属性魔法しか使えないと見せかけ、全属性魔法使い。
あまりに圧倒的な実力があったため、パーティーの中での力量バランスを考え、あえて影からのサポートに徹していたのだ。
それどころか攻撃力・防御力、メンバー関係の調整まで全て、彼が一手に担っていた。
リーダーのあまりに不足している実力を、ヨシュアのサポートにより埋めてきたのである。
その事実を伝えるも、リーダーには取り合ってもらえず。
あえなく、追放されてしまう。
しかし、それにより制限の消えたヨシュア。
一人で無双をしていたところ、その実力を美少女魔導士に見抜かれ、『レンタル冒険者』としてスカウトされる。
その内容は、パーティーや個人などに借りられていき、場面に応じた役割を果たすというものだった。
まさに、ヨシュアにとっての天職であった。
自分を正当に認めてくれ、力を発揮できる環境だ。
生まれつき与えられていたギフト【無限変化】による全武器、全スキルへの適性を活かして、様々な場所や状況に完璧な適応を見せるヨシュア。
目立ちたくないという思いとは裏腹に、引っ張りだこ。
元パーティーメンバーも彼のもとに帰ってきたいと言うなど、美少女たちに溺愛される。
そうしつつ、かつて前例のない、『レンタル』無双を開始するのであった。
一方、ヨシュアを追放したパーティーリーダーはと言えば、クエストの失敗、メンバーの離脱など、どんどん破滅へと追い込まれていく。
ヨシュアのスーパーサポートに頼りきっていたこと、その真の強さに気づき、戻ってこいと声をかけるが……。
そのときには、もう遅いのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる