天を仰げば青い空

朝比奈明日未

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本編

1−12

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 さっさとLIMEの交換を済ませて食べに行くところも今決めてしまおう。こう言うのは長引かせるものじゃない。そう言うことをしているとあっという間に時間が経ってしまう。そんなことは目に見えていた。だって、古今東西そういうものなのだから。
「何食べたいとかあります?」
「いえ、何せまともに食べに行く友人などがいないもので」
 何もわからないです、と仕事の時とは違う困ったような自嘲気味な笑い方をする陽を見るとなるほど年相応の顔もあるじゃないか、と思う。だけど、友人がそんなにいないと言うのはどうなんだ、とも思う。確かに凪も基本友人はいない。いないというか、切ったというか。多少はいるがネットで知り合った人も多くて、正直そっちの方が楽だからと逃げている節がある。現実は面倒で仕方ない。
 だが、少なからず陽はそう言うタイプではないと知っている。面倒とかじゃなく、多分本当にいないのだ。これだけ社交性の高い人間が一人でいることはおかしいと凪は考えた。やはりおかしい。本人にも問題はあるのだろうが、それも別にそこまで一人になるものじゃないし、学生時代はそこまでではなかったはずだ。
 …いや、今は考えるのは良そう。後でも良いことは、今は考えないことにした。
「これから暑くなるし、冷たいもんでも食べに行きたいですかねー。六月一日さんが良いなら辛いものでも良いですけど」
「良いですね。辛すぎると食べられませんが、ある程度は大丈夫です」
「じゃあ辛いもん、食べに行きましょうか」
 ニヤリと笑った凪を見て、陽は一瞬ゾクリとしたものを感じた。勿論、それすら初めてで何がゾクリだったのかは分かっていない。ただ、誰かと何かを食べに行くのが楽しみで仕方がなかった。
「日程は食べに行く場所を決める小日向さんが決めてください。なるべく合わせますので」
 人好きのする笑みを浮かべる陽に、戻っちゃったか、と思いはしたがこれ以上長々と話すのもあれかと思い別れを告げる。

 買い物を終わらせ一人部屋へと帰る道で思う。
 どうしてあんなに人に気を遣うのだろうかと。自分の意見を言っているようで何も言っていない。
 部屋に着いて買ったものを乱雑に置いて地べたに座る。
 好きになったから気になるのは大きい。けれど、まるで独りで生きることを強制させられているような、周りと距離を無意識に取っている感じがしてならない。
 確かに、あの言葉は上司などには好かれるだろうなぁ、と改めて思いはした。が、それを自分にする必要など全くないのに。
 彼の、六月一日陽のあの違和感を感じる部分は一体何なのだろう。

 今日も手と頭を同時に動かし、その内絵を描くことに夢中になっていくのだった。
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