4 / 26
本編
1-3
しおりを挟む
何もしなくても朝は来るが、何をしても朝は来る。そう、時間は誰にでも平等だ。多分唯一平等なものだ。生と死は来るだけなら平等だが、タイミングが平等ではない。故に多分平等なのは過ぎ去る時間だけだ。こんなことを考えていたって一秒過ぎるし一分と過ぎていく。何をしても、何もしなくても時間は平等に過ぎていく。時計の針は誰にでも優しい。
何も無い自分にも、唯一与えられた何かのような気がするから。
こんな事を考えるくらいには虚無の感情で仕事を熟しているのだと察してほしい。
「さてと、帰るか…」
あれ以来、あの整った美麗な顔を見れる訳もなく、癒しが無いと思いながら仕事を只管に熟す日々が続いている。当たり前なのだがまたあの顔が見たくて仕方ない。
時間は時に残酷だ。だってもう時間は二十二時になろうとしている。おかしい。今日という日がもう二時間で終わるらしい。
「いやでも早い方じゃないか…?フロア俺しかいねぇけど」
お先に失礼します、なんて聞いたの多分二時間くらい前の営業の人だった気がする。なんで事務の俺がこんなおっせえの?意味わからん。とか二時間前に思ってた気がするんだよ。
とかなんとか思っても無駄なのでとっとと鞄を持って帰るのが大事だ。寂しいし怖いからとフロアの電気は多めに付けていたのでスイッチをポチポチと押して消し、念入りに戸締りの確認をしたら終了だ。さあ帰ろう。小さい企業あるあるの、鍵は普通に従業員が持っている、である。単に俺が遅いから貸してもらってるだけだけどな、と自分に呆れて笑いながら帰路につく。
そうだ、家に何も無いんじゃないか…?最後に買い物したのは土曜日の夜、そして俺は昨日最後のカップ麺を食った気がする。
「…腹が減っては戦はできぬ……」
いや別に争う気はないけど。
寧ろ帰ったら俺は癒される予定だけど。
でも純粋に
「飯、食いたい…」
腹、減った。
余り人の乗っていない区域からの地下鉄はガラガラで、こんなポツンと小さく呟いた独り言など誰にも聞こえやしない。
最寄りで降りていつもの二十四時間スーパーへと立ち寄る。本当にありがたい。こういうの本当にありがたい。ブラック企業の強い味方。というか単純に独り身の味方。
土曜の朝の分まで買わなければ、と日持ちするものやら冷凍すりゃいいものやらを籠にぶん投げる勢いで入れていく。単に疲れて動きが雑なだけだが、時間が時間なので誰も気にはしない。そもそも余り人もいない。ついでに平日夜用のカップ麺も買おうと移動しようとしたその時だった。
運命が華麗に悪戯を仕掛けてきた。
そうとしか思えない瞬間だったと思う。草臥れたスーツ、ボサボサの髪、籠に入っている乱雑なものはさておき、見たからに仕事帰りの格好である。なのにどうしてだろうか。
今目の前にいるのは、誰だ?
「あ、小日向さんじゃないですか?やっぱり。直接会うのは久しぶりですね」
何も無い自分にも、唯一与えられた何かのような気がするから。
こんな事を考えるくらいには虚無の感情で仕事を熟しているのだと察してほしい。
「さてと、帰るか…」
あれ以来、あの整った美麗な顔を見れる訳もなく、癒しが無いと思いながら仕事を只管に熟す日々が続いている。当たり前なのだがまたあの顔が見たくて仕方ない。
時間は時に残酷だ。だってもう時間は二十二時になろうとしている。おかしい。今日という日がもう二時間で終わるらしい。
「いやでも早い方じゃないか…?フロア俺しかいねぇけど」
お先に失礼します、なんて聞いたの多分二時間くらい前の営業の人だった気がする。なんで事務の俺がこんなおっせえの?意味わからん。とか二時間前に思ってた気がするんだよ。
とかなんとか思っても無駄なのでとっとと鞄を持って帰るのが大事だ。寂しいし怖いからとフロアの電気は多めに付けていたのでスイッチをポチポチと押して消し、念入りに戸締りの確認をしたら終了だ。さあ帰ろう。小さい企業あるあるの、鍵は普通に従業員が持っている、である。単に俺が遅いから貸してもらってるだけだけどな、と自分に呆れて笑いながら帰路につく。
そうだ、家に何も無いんじゃないか…?最後に買い物したのは土曜日の夜、そして俺は昨日最後のカップ麺を食った気がする。
「…腹が減っては戦はできぬ……」
いや別に争う気はないけど。
寧ろ帰ったら俺は癒される予定だけど。
でも純粋に
「飯、食いたい…」
腹、減った。
余り人の乗っていない区域からの地下鉄はガラガラで、こんなポツンと小さく呟いた独り言など誰にも聞こえやしない。
最寄りで降りていつもの二十四時間スーパーへと立ち寄る。本当にありがたい。こういうの本当にありがたい。ブラック企業の強い味方。というか単純に独り身の味方。
土曜の朝の分まで買わなければ、と日持ちするものやら冷凍すりゃいいものやらを籠にぶん投げる勢いで入れていく。単に疲れて動きが雑なだけだが、時間が時間なので誰も気にはしない。そもそも余り人もいない。ついでに平日夜用のカップ麺も買おうと移動しようとしたその時だった。
運命が華麗に悪戯を仕掛けてきた。
そうとしか思えない瞬間だったと思う。草臥れたスーツ、ボサボサの髪、籠に入っている乱雑なものはさておき、見たからに仕事帰りの格好である。なのにどうしてだろうか。
今目の前にいるのは、誰だ?
「あ、小日向さんじゃないですか?やっぱり。直接会うのは久しぶりですね」
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
すずらん通り商店街の日常 〜悠介と柊一郎〜
ドラマチカ
BL
恋愛に疲れ果てた自称社畜でイケメンの犬飼柊一郎が、ある時ふと見つけた「すずらん通り商店街」の一角にある犬山古書店。そこに住む綺麗で賢い黒猫と、その家族である一見すると儚げ美形店主、犬山悠介。
恋に臆病な犬山悠介と、初めて恋をした犬飼柊一郎の物語。
※猫と話せる店主等、特殊設定あり
【胸が痛いくらい、綺麗な空に】 -ゆっくり恋する毎日-
悠里
BL
コミュ力高めな司×人と話すのが苦手な湊。
「たまに会う」から「気になる」
「気になる」から「好き?」から……。
成長しながら、ゆっくりすすむ、恋心。
楽しんで頂けますように♡

デコボコな僕ら
天渡清華
BL
スター文具入社2年目の宮本樹は、小柄・顔に自信がない・交際経験なしでコンプレックスだらけ。高身長・イケメン・実家がセレブ(?)でその上優しい同期の大沼清文に内定式で一目惚れしたが、コンプレックスゆえに仲のいい同期以上になれずにいた。
そんな2人がグズグズしながらもくっつくまでのお話です。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…
まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。
5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。
相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。
一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。
唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。
それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。
そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。
そこへ社会人となっていた澄と再会する。
果たして5年越しの恋は、動き出すのか?
表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

学園の天使は今日も嘘を吐く
まっちゃ
BL
「僕って何で生きてるんだろ、、、?」
家族に幼い頃からずっと暴言を言われ続け自己肯定感が低くなってしまい、生きる希望も持たなくなってしまった水無瀬瑠依(みなせるい)。高校生になり、全寮制の学園に入ると生徒会の会計になったが家族に暴言を言われたのがトラウマになっており素の自分を出すのが怖くなってしまい、嘘を吐くようになる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿です。文がおかしいところが多々あると思いますが温かい目で見てくれると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる