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キミのため、自分のため 3
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言葉を失くしたのかとでも思い暁良が片手で髪を掴んでぐいっと頭を持ち上げると、困ったような顔で真っ赤になった朔と目が合う。
「は?何その顔」
思わず苛立った声に肩を跳ねさせた朔に我に帰って手を離す。
「あ、いや…何、お前、俺のこと…その」
「…好きだけど?」
自分から吹っかけといて言えないのかよ、と言い返せば益々俯いて暗闇なのに煙でも出そうなほど、いっそやかんのような赤さで。なんだこれ、と思ったら怒りすら何処かへ飛んでいく。
そして察しの良い暁良はなんとなく気がついた。
まず、恋愛初心者のようにウブいこの男とは自分からの好意に気が付いていなかったのだろうと。更に言うなら、この反応である。
「朔さんは…?」
聞いてみないと確証はないけれど間違いは無いはずだ。これだけ顔を赤くして、まさかそんな。
「その、うん」
こくりと声も出ないのか必死に何度も頷く姿にはぁぁ、と大きな溜息を吐く。この一ヶ月くらいはなんだったんだ。こんなに悩んだのに、こんなに苦しかったのに。
「じゃあさ、恋人になってくれる?」
「なっても良い、けど」
「けど?何?」
「俺、もうアラサーだし、お前まだまだ若いだろ…」
ボソボソと目を逸らして言う姿にムラッとしたが素数を数えてなかったことにしたとは言えない。逆にこんなアラサー早々いてたまるかという話である。これが同い年ならよくある話だ。だが、これがアラサーなのだ。別に可愛い顔をしている訳でもない。けれどそれがいい。それでいい。
身長も大して変わらない自分より一回り近く違うこの人が、目つき悪いのちょっと実は気にしたりしている上に普段はこの口の悪さで、話した感じの通りに家事もまともにできない社会人がいいんだよ。わかってない。
「オレは確かに若いけど、恋人いるのに遊ぶほど薄情でもないし、年齢とか関係なく朔さんだから好きになったんだよ。ベタかもしれないけど朔さんにしかこんな尽くしたこともないしね」
弁明するように言うとおずおずとこちらを伺うように見上げてくる朔と目が合って、たまらず抱きしめる。
「もうさー…本当オレ一ヶ月くらい苦しかった…いきなり避けるようなことするし」
「いなく、なった時、耐えられる気がしなかったから、離れても大丈夫って準備、してた…」
震える声で必死に紡がれた言葉は告白と何も変わらない。なんだ、届いてはいたのかと思った。届いていたから、言葉にさっさとすれば良かったと少しばかり後悔する。
「でも、お前がいなくなるのは怖いって思ったけど、俺自身どう思ってるか、全然分からなくて、お前はお前で、何も言わないから…、下手に溺れて捨てられるのも耐えられる気しないし、だったら離れても、大丈夫だって、思うしかねぇって思って…」
「馬鹿だなー…その時点でオレのこと大好きじゃん。気付いてないの?そんなのオレがいないとダメって告白してるのと何も変わらないんだけど」
毎日家事をして、大学行ってたまに部屋に帰ってまた朔の部屋へと行き、ご飯を作って朔が帰ってくるのを大人しく待って。帰ってきたらご飯食べて風呂入って二人で喋って熱を分け合って寝ていただけだった。自分でもこんな部分を持っているだなんて知らなかったことで、まだ二十歳なのだから当然なのかもしれないがこれ以上の人なんている気がしない。手は焼けるしこれだけ鈍感で幸せを逃しそうな人。
「オレじゃないとダメなんじゃん、朔さん」
クスクスと笑っておでこを合わせる。自分で気付きもしなかったことを教えられてキャパオーバーしたらしい朔は声なき声で叫んでいるようだったが、とりあえず夜にそれはダメかなと唇を塞いだ。
「んーっ!ん、はふ…おま…いや、今のは、ナイスだった」
「でしょ。で?どうなの」
「多分、その、好き…なんじゃねぇの…?」
キスはやめても唇は触れたまま聞けば、チュッと音を立てて朔に口付けられそっぽを向きながらやっと欲しい言葉をもらう。
「ははっ、じゃあ今からオレ達恋人同士じゃん」
嬉しそうに笑う暁良を見て、何だか朔もキュンとした。何故かと思ったが、そうだ。簡単なことだったのだと思う。
年相当で、それはすなわち飾っていないと言うこと。
暁良は言葉が欲しかったと言っていたし、自分だってそうだった。
だけど、一番欲しかったのはこういうものだったのかもしれない。だってきっとこれは他の奴らは殆ど見たこと無いだろ。
「そう、だけどよ…お前、結局遊んだりはしてなかったのか?」
裸で抱き合ったまま聞けば、軽く「うん、遊んでないよ」と返事が返ってきて思わずどうしてか聞いてしまう。
「だって、オレすぐに自覚してたから遊ぶ理由なんてなかったし」
余りの申し訳無さに、流石の朔もこの言葉には謝罪しか出てこなかった。
「は?何その顔」
思わず苛立った声に肩を跳ねさせた朔に我に帰って手を離す。
「あ、いや…何、お前、俺のこと…その」
「…好きだけど?」
自分から吹っかけといて言えないのかよ、と言い返せば益々俯いて暗闇なのに煙でも出そうなほど、いっそやかんのような赤さで。なんだこれ、と思ったら怒りすら何処かへ飛んでいく。
そして察しの良い暁良はなんとなく気がついた。
まず、恋愛初心者のようにウブいこの男とは自分からの好意に気が付いていなかったのだろうと。更に言うなら、この反応である。
「朔さんは…?」
聞いてみないと確証はないけれど間違いは無いはずだ。これだけ顔を赤くして、まさかそんな。
「その、うん」
こくりと声も出ないのか必死に何度も頷く姿にはぁぁ、と大きな溜息を吐く。この一ヶ月くらいはなんだったんだ。こんなに悩んだのに、こんなに苦しかったのに。
「じゃあさ、恋人になってくれる?」
「なっても良い、けど」
「けど?何?」
「俺、もうアラサーだし、お前まだまだ若いだろ…」
ボソボソと目を逸らして言う姿にムラッとしたが素数を数えてなかったことにしたとは言えない。逆にこんなアラサー早々いてたまるかという話である。これが同い年ならよくある話だ。だが、これがアラサーなのだ。別に可愛い顔をしている訳でもない。けれどそれがいい。それでいい。
身長も大して変わらない自分より一回り近く違うこの人が、目つき悪いのちょっと実は気にしたりしている上に普段はこの口の悪さで、話した感じの通りに家事もまともにできない社会人がいいんだよ。わかってない。
「オレは確かに若いけど、恋人いるのに遊ぶほど薄情でもないし、年齢とか関係なく朔さんだから好きになったんだよ。ベタかもしれないけど朔さんにしかこんな尽くしたこともないしね」
弁明するように言うとおずおずとこちらを伺うように見上げてくる朔と目が合って、たまらず抱きしめる。
「もうさー…本当オレ一ヶ月くらい苦しかった…いきなり避けるようなことするし」
「いなく、なった時、耐えられる気がしなかったから、離れても大丈夫って準備、してた…」
震える声で必死に紡がれた言葉は告白と何も変わらない。なんだ、届いてはいたのかと思った。届いていたから、言葉にさっさとすれば良かったと少しばかり後悔する。
「でも、お前がいなくなるのは怖いって思ったけど、俺自身どう思ってるか、全然分からなくて、お前はお前で、何も言わないから…、下手に溺れて捨てられるのも耐えられる気しないし、だったら離れても、大丈夫だって、思うしかねぇって思って…」
「馬鹿だなー…その時点でオレのこと大好きじゃん。気付いてないの?そんなのオレがいないとダメって告白してるのと何も変わらないんだけど」
毎日家事をして、大学行ってたまに部屋に帰ってまた朔の部屋へと行き、ご飯を作って朔が帰ってくるのを大人しく待って。帰ってきたらご飯食べて風呂入って二人で喋って熱を分け合って寝ていただけだった。自分でもこんな部分を持っているだなんて知らなかったことで、まだ二十歳なのだから当然なのかもしれないがこれ以上の人なんている気がしない。手は焼けるしこれだけ鈍感で幸せを逃しそうな人。
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「でしょ。で?どうなの」
「多分、その、好き…なんじゃねぇの…?」
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だけど、一番欲しかったのはこういうものだったのかもしれない。だってきっとこれは他の奴らは殆ど見たこと無いだろ。
「そう、だけどよ…お前、結局遊んだりはしてなかったのか?」
裸で抱き合ったまま聞けば、軽く「うん、遊んでないよ」と返事が返ってきて思わずどうしてか聞いてしまう。
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