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キミのため、自分のため 1
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酷かった風邪も完治して数週間。
あれ以来少しばかり朔の態度が変わって来ていた。とはいえ基本的なことは変わっていない。朝は普通におはようと言葉を交わしてご飯を食べ、朔は出勤をして暁良は学校へ通う。夜は夜ご飯を食べて毎日朔を暁良が美味しく頂く。
だが、それ以外の時だ。その時もだが会話が明らかに減っているし返事なども素っ気ない。まるで一人になろうとしているように見えた。二人でいるのに距離が遠いような。
暁良も暁良でそんな素っ気ない態度に腹を立てても話しかけることができず、イライラをぶつけるようにセックスが乱暴になっていく。
暁良が朔を好きだと自覚してから前以上に尽くすようになったと自覚したのは少し前のことだった。本来遊び人である暁良は別にそこまで人に尽くすようなことはしていなくて、尽くされるばかりではないが、当たり障りなくいるのが当たり前であったし何度か会えば切れる関係の相手に気遣いなどもしてはいなかった。
家事ができるのは単に一人暮らしをしているからで、料理が得意なのは本当にたまたまというか、やればある程度はできてしまうから最低限できるようになろうとまだ真面目だった頃にやっていたから。
ここにきて、よもやそんなものが役に立つだなんて思いもしなかったけれど、朔は洗濯物を綺麗に干したり畳んでおくだけで喜ぶし、掃除をしたことそのものには気付いて感謝をしてくれて、料理は別に大したものでもないのに慣れてきた頃には喜んで完食してくれる。
単純な人間ではあるのだろうが、あんな出会いだったのにも関わらずここまで絆されてくれたのは単に自分の努力の部分をちゃんと見ていてくれたからだと自負している。
だから、そろそろ本気を出して告白なんてものをしてみても良いかもしれない、なんてちょっと思っていたのだ。
それなのに、この人は何を思ったか離れようとしている。
理由は分からないが離れようとしているという結論だけは理解していた。理由を聞くのは怖くてできず、ただただ自分のだと刻み込むように手荒になっていくのだ。
完全に悪循環を起こしていた。
「もう挿入るでしょ。毎日シてるもんね」
慣らすのもそこそこに挿入される日が増え、少しずつではあるが朔の体にも明らかな負担が見え始めているにも関わらず、全く配慮されない。フェードアウトのようにしているつもりでも明らかに離れる距離に暁良が気付かないわけがないのに、自分のことしか考えられなくなっている朔にはこんな単純なことすら考えが及ばなかった。
「やめっ、まだ早…ぃあっ、ヒィッ…!」
声を噛み殺して気付かれないように涙をポロポロと流しながら、それを見られないよう枕に顔を押し付ける。
顔が見たいから、とバックでだなんて全然ヤリたがることなかったのに最近はそればかりで、終わる頃には快楽と胸の苦しさで心が押し潰されそうになることも増えてきた。
年ばかりを食って経験の浅い朔にはどうしたら良いのか分からない。
いつ離れても良いように、いつ一人になっても良いように、言われる前に言わなければ。こんなことばかりを考えている癖に、酷い扱いをされると悲しくなるなど自分勝手にも程がある。
あんな始まり方だったし、気がついたら居座っていたような男ではあるが、ご飯が作れるとわかって掃除や洗濯までしてくれて、自分が余りにも苦手で放置していた部分だったから素直に喜んで気がつけば一週間、二週間、一ヶ月、二ヶ月…。
そして現在凡そ約三ヶ月、今まで他人と暮らしたこともない人間がなし崩し的にだったとは言え共に暮らしてきて、随分と甘やかされた自覚はあった。
年下の男に毎晩好きなようにされる代わりにご飯やら掃除やら洗濯やらをやって貰って、一人だったからテレビ以外の音がなかった空間に二人の話し声が入るようになって。知らないうちにいるのが当たり前になって、いなくなることに怯えて距離を取ろうとして。
そのせいなのかは分からないが、ここ最近は徐々に冷たくなっていく態度に余計に怯えて会話が消え、ぎこちなくなって。
どこから間違えた?と言えばきっと自分だ。
あのまま居れば少なからずこの生活に飽きていなくなるまでは平和でいられたと思う。優しい場所にいられた。だとしても、この年になって誰かといることに慣れてしまったら、こんな穏やかな生活に慣れてしまったら、一人になるのが、独りになるのが怖くなってしまう。
まだ年若い暁良はノンケの自分を食って衣食住に困らない環境が楽なだけだろう。自分で稼ぐようになったらもっと楽で、自分を甘やかす相手を見つけるかもしれない。自分と暁良だって別に付き合っているわけではないのだから。
あやふやな関係は二人の心を知らず知らずの内に内側から傷つけ続けている。
あれ以来少しばかり朔の態度が変わって来ていた。とはいえ基本的なことは変わっていない。朝は普通におはようと言葉を交わしてご飯を食べ、朔は出勤をして暁良は学校へ通う。夜は夜ご飯を食べて毎日朔を暁良が美味しく頂く。
だが、それ以外の時だ。その時もだが会話が明らかに減っているし返事なども素っ気ない。まるで一人になろうとしているように見えた。二人でいるのに距離が遠いような。
暁良も暁良でそんな素っ気ない態度に腹を立てても話しかけることができず、イライラをぶつけるようにセックスが乱暴になっていく。
暁良が朔を好きだと自覚してから前以上に尽くすようになったと自覚したのは少し前のことだった。本来遊び人である暁良は別にそこまで人に尽くすようなことはしていなくて、尽くされるばかりではないが、当たり障りなくいるのが当たり前であったし何度か会えば切れる関係の相手に気遣いなどもしてはいなかった。
家事ができるのは単に一人暮らしをしているからで、料理が得意なのは本当にたまたまというか、やればある程度はできてしまうから最低限できるようになろうとまだ真面目だった頃にやっていたから。
ここにきて、よもやそんなものが役に立つだなんて思いもしなかったけれど、朔は洗濯物を綺麗に干したり畳んでおくだけで喜ぶし、掃除をしたことそのものには気付いて感謝をしてくれて、料理は別に大したものでもないのに慣れてきた頃には喜んで完食してくれる。
単純な人間ではあるのだろうが、あんな出会いだったのにも関わらずここまで絆されてくれたのは単に自分の努力の部分をちゃんと見ていてくれたからだと自負している。
だから、そろそろ本気を出して告白なんてものをしてみても良いかもしれない、なんてちょっと思っていたのだ。
それなのに、この人は何を思ったか離れようとしている。
理由は分からないが離れようとしているという結論だけは理解していた。理由を聞くのは怖くてできず、ただただ自分のだと刻み込むように手荒になっていくのだ。
完全に悪循環を起こしていた。
「もう挿入るでしょ。毎日シてるもんね」
慣らすのもそこそこに挿入される日が増え、少しずつではあるが朔の体にも明らかな負担が見え始めているにも関わらず、全く配慮されない。フェードアウトのようにしているつもりでも明らかに離れる距離に暁良が気付かないわけがないのに、自分のことしか考えられなくなっている朔にはこんな単純なことすら考えが及ばなかった。
「やめっ、まだ早…ぃあっ、ヒィッ…!」
声を噛み殺して気付かれないように涙をポロポロと流しながら、それを見られないよう枕に顔を押し付ける。
顔が見たいから、とバックでだなんて全然ヤリたがることなかったのに最近はそればかりで、終わる頃には快楽と胸の苦しさで心が押し潰されそうになることも増えてきた。
年ばかりを食って経験の浅い朔にはどうしたら良いのか分からない。
いつ離れても良いように、いつ一人になっても良いように、言われる前に言わなければ。こんなことばかりを考えている癖に、酷い扱いをされると悲しくなるなど自分勝手にも程がある。
あんな始まり方だったし、気がついたら居座っていたような男ではあるが、ご飯が作れるとわかって掃除や洗濯までしてくれて、自分が余りにも苦手で放置していた部分だったから素直に喜んで気がつけば一週間、二週間、一ヶ月、二ヶ月…。
そして現在凡そ約三ヶ月、今まで他人と暮らしたこともない人間がなし崩し的にだったとは言え共に暮らしてきて、随分と甘やかされた自覚はあった。
年下の男に毎晩好きなようにされる代わりにご飯やら掃除やら洗濯やらをやって貰って、一人だったからテレビ以外の音がなかった空間に二人の話し声が入るようになって。知らないうちにいるのが当たり前になって、いなくなることに怯えて距離を取ろうとして。
そのせいなのかは分からないが、ここ最近は徐々に冷たくなっていく態度に余計に怯えて会話が消え、ぎこちなくなって。
どこから間違えた?と言えばきっと自分だ。
あのまま居れば少なからずこの生活に飽きていなくなるまでは平和でいられたと思う。優しい場所にいられた。だとしても、この年になって誰かといることに慣れてしまったら、こんな穏やかな生活に慣れてしまったら、一人になるのが、独りになるのが怖くなってしまう。
まだ年若い暁良はノンケの自分を食って衣食住に困らない環境が楽なだけだろう。自分で稼ぐようになったらもっと楽で、自分を甘やかす相手を見つけるかもしれない。自分と暁良だって別に付き合っているわけではないのだから。
あやふやな関係は二人の心を知らず知らずの内に内側から傷つけ続けている。
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