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ルームメイトといちゃらぶごはん!
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仕事を終えた帰り道。わたしはいつもどおり消耗していた。お腹も空いたし、満員電車で残り少ない体力と精神力を持っていかれた。つまり、半泣きだった。
早くおうち帰りたい。お家で待ってる彼と美味しいご飯! どちらもわたしにとって今すぐ必要な栄養だ。泣き出す前に補給しないとだめ。
家で待っているのは、天才錬金術師さまだ。やつは普段大雑把に生きているように見えるのに、料理とかお菓子作りとか、そういう作業だけはきっちりとこなす。本人曰く、料理もお菓子作りも錬金術と同じらしい。いわく、何事もパラメータを管理できれば最善の結果が出て当然だそうで、わたしに大変事細かなレシピを要求する以外は、非の打ち所のないパートナーと言える。
「ただいま」
小さく声をかけて玄関を開けると、刻んだタマネギの香りと、牛肉の焦げる香りがただよっていた。ハンバーグだろうか? 腹ぺこふらふらの民には刺激がつよい。
一旦自室に入り、ルームウェアに着替える。脱いだスーツをハンガーにかけて、手早くふわふわもこもこのうさぎちゃんをかぶると、私はリビングに向かった。
「たーだーいーまー!!」
さっきの1万倍おおきな声で、100万倍テンション上げてリビングに躍り込む。
「どちたー? ごはんできてるよー?」
彼がいつもどおりにこやかに出迎えてくれる。
包丁持ってない! お鍋持ってない! ごはんは麺類じゃない! いまだ!!
わたしは彼に超高速でくっつき、お帰りのハグとキスをせがむ。ニコニコしながらわたしを受け止めた彼は、小さくつぶやくと、私にキスの雨をふらせてきた。最後に小鳥のようにふたりの唇が触れ合う。そこで何やら甘いシロップを口移しされた。
「あーもー!! 今日はそーなの!?」
覚悟を決めた私が、素早く食卓の椅子に腰掛ける。もともと高くない身長が、あっという間に縮む。それに同時に骨格も華奢になっていき、ほんの少しだけ胸が膨らむ。そして、尾てい骨のあたりに甘いしびれが来て、しっぽがしゅるっと生えた。
頭に手をやると、うさちゃんを着ているのに、にゃん耳が生えていた。何色のお耳かわからないので、しっぽを目の前に持ってくる。ふんふん多分しろだな。模様もなさそう。
眼の前では彼も同じようにまっしろのにゃん耳としっぽをぴこぴこゆらゆらさせていた。あ、またおそろっちにしたのね。同じ薬をわけっこしたから当然ではある。
「おかえりにゃー」
彼の声は声変わり前の幼いものになっていた。そーいうところが好きだけど、いきなりにゃん耳美少女にならないでほしーな。
「ただいまにゃー」
私の声はあんまり変わらない。ただ、体が小さくなった分、ご飯がたくさん食べられない。あーもー。お酒も飲めないじゃん。回り過ぎちゃうもん。
「ごはんたべよーよ」
彼の声で腹ペコを思い出す。
正面のいつもの席ではなく、真横に座ってくる彼にほにゃっとあまえつつ、しっぽを絡め合う。
「猫舌にはなってないっぽい」
彼はそんなことを言いながらハンバーグをナイフで切ってくれる。私は安心して、切ってもらったハンバーグをお口に入れる。もぐもぐもぐ。細かめに挽いた牛肉でできたそれは、つなぎのパン粉に肉汁を吸わせて、キメの細かさを際立たせる。柔らかくなりがちなこの作り方でも、さすがの火加減で中まで火を通しながらも、まっ黒焦げになっているところはなく、キツネ色にとどめてある。天才的な火加減であることを彼に伝え、ちょっとだけ近く座り直す。私と彼のお尻の端っこがくっついて、暖かさを伝え合っていた。
見事な出来のハンバーグと、非の打ち所のない炊き加減の白いご飯、サラダとお味噌汁をいただいたら、気分ががんがん上向いてきた。食べながらの会話はあまりないけれど、しっぽは常に優しく触れ合っていて、とても安心できた。なんで横並びに座ってきたのかは最初謎だったけど、私が弱っているから気を利かせてくれたんだなって、わかった。
早くおうち帰りたい。お家で待ってる彼と美味しいご飯! どちらもわたしにとって今すぐ必要な栄養だ。泣き出す前に補給しないとだめ。
家で待っているのは、天才錬金術師さまだ。やつは普段大雑把に生きているように見えるのに、料理とかお菓子作りとか、そういう作業だけはきっちりとこなす。本人曰く、料理もお菓子作りも錬金術と同じらしい。いわく、何事もパラメータを管理できれば最善の結果が出て当然だそうで、わたしに大変事細かなレシピを要求する以外は、非の打ち所のないパートナーと言える。
「ただいま」
小さく声をかけて玄関を開けると、刻んだタマネギの香りと、牛肉の焦げる香りがただよっていた。ハンバーグだろうか? 腹ぺこふらふらの民には刺激がつよい。
一旦自室に入り、ルームウェアに着替える。脱いだスーツをハンガーにかけて、手早くふわふわもこもこのうさぎちゃんをかぶると、私はリビングに向かった。
「たーだーいーまー!!」
さっきの1万倍おおきな声で、100万倍テンション上げてリビングに躍り込む。
「どちたー? ごはんできてるよー?」
彼がいつもどおりにこやかに出迎えてくれる。
包丁持ってない! お鍋持ってない! ごはんは麺類じゃない! いまだ!!
わたしは彼に超高速でくっつき、お帰りのハグとキスをせがむ。ニコニコしながらわたしを受け止めた彼は、小さくつぶやくと、私にキスの雨をふらせてきた。最後に小鳥のようにふたりの唇が触れ合う。そこで何やら甘いシロップを口移しされた。
「あーもー!! 今日はそーなの!?」
覚悟を決めた私が、素早く食卓の椅子に腰掛ける。もともと高くない身長が、あっという間に縮む。それに同時に骨格も華奢になっていき、ほんの少しだけ胸が膨らむ。そして、尾てい骨のあたりに甘いしびれが来て、しっぽがしゅるっと生えた。
頭に手をやると、うさちゃんを着ているのに、にゃん耳が生えていた。何色のお耳かわからないので、しっぽを目の前に持ってくる。ふんふん多分しろだな。模様もなさそう。
眼の前では彼も同じようにまっしろのにゃん耳としっぽをぴこぴこゆらゆらさせていた。あ、またおそろっちにしたのね。同じ薬をわけっこしたから当然ではある。
「おかえりにゃー」
彼の声は声変わり前の幼いものになっていた。そーいうところが好きだけど、いきなりにゃん耳美少女にならないでほしーな。
「ただいまにゃー」
私の声はあんまり変わらない。ただ、体が小さくなった分、ご飯がたくさん食べられない。あーもー。お酒も飲めないじゃん。回り過ぎちゃうもん。
「ごはんたべよーよ」
彼の声で腹ペコを思い出す。
正面のいつもの席ではなく、真横に座ってくる彼にほにゃっとあまえつつ、しっぽを絡め合う。
「猫舌にはなってないっぽい」
彼はそんなことを言いながらハンバーグをナイフで切ってくれる。私は安心して、切ってもらったハンバーグをお口に入れる。もぐもぐもぐ。細かめに挽いた牛肉でできたそれは、つなぎのパン粉に肉汁を吸わせて、キメの細かさを際立たせる。柔らかくなりがちなこの作り方でも、さすがの火加減で中まで火を通しながらも、まっ黒焦げになっているところはなく、キツネ色にとどめてある。天才的な火加減であることを彼に伝え、ちょっとだけ近く座り直す。私と彼のお尻の端っこがくっついて、暖かさを伝え合っていた。
見事な出来のハンバーグと、非の打ち所のない炊き加減の白いご飯、サラダとお味噌汁をいただいたら、気分ががんがん上向いてきた。食べながらの会話はあまりないけれど、しっぽは常に優しく触れ合っていて、とても安心できた。なんで横並びに座ってきたのかは最初謎だったけど、私が弱っているから気を利かせてくれたんだなって、わかった。
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