都合のいい男の娘

ちくわ

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揺れる教室

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 学校ではいつもできるだけ女子の近くにいるようにした。
 陽キャと陰キャと変人タイプ。いろんな子がいるけど、僕は陽キャの近くにいた。こっちにいれば、時々男の子も近くに来るし、何より可愛い女の子は可愛い女の子にすごい嫉妬する。
 僕はそれを利用したかった。
 最初の数日は、ノーメイクで学校に行ってた。そのあと、おとなしいかんじのリップをつけたり、つめをポリッシュで磨いたり、校則の中で全然オーケーな感じでちょっとずつ派手にしていく。
 陽キャの子たちは、自分たちもそのくらいのおしとやかなメイクをしているし、そのくらいセーフだと思ってるから、何も言ってこない。
 ブレザーのシャツからすこしフローラルな香りがしても、全然平気。だけど、それが許せなくなってくる子もいる。
「えまのさー。最近ちょっと可愛くね?」
 敏感な男の子たちが気づき始めた。よく見ると陰キャたちもつめを整えたり、似合わないリップを塗ったり頑張り始めた。そのまましばらく生活は続き、日光がきつい季節になってきた。
 何人か仲のいい男子もできてきて、僕に恋愛相談を持ちかけてくるやつなんかもいた。女の子の気持ちがわかるわけでもないのに、女の子っぽいだけの僕に相談するのはやめなよー。みたいに受け流すふりをして、むしろシモネタを段々と焚べていく。
 露骨に勃起し始める男子を微笑ましく眺め、わざとその子の目を見ながら、もうすぐ休み時間終わっちゃうよ? 僕はトイレに行っておくね。とかなんとかいい、わざと男子トイレに行く。
 ソワソワとしながらついてくる男の子を引き連れて、スカートをたくし上げて立ちションを決める。性欲がぐちゃぐちゃになった男の子は個室にこもって、次の時間遅刻するようになっていた。栗の花の匂い。馬鹿じゃないの?
 男の子の中にも、女の子の中にも、クラスに気になる子ができ始める頃、僕はこうやって男の子たちの脳みそをバラ色にしていた。
 けれど、女の子たちに嫉妬されるのは怖い。だから、イケてる女の子たちに、性の悩みを聞いてもらっていた。例えば、胸が膨らみ始めたこととか、校則で怒られない化粧品についてとか。
 何人も女の子がいると、距離感のバグってる子も当然何人かいる。つまり僕が近づいても女の子同士みたいな、いや、もっと近い距離でもよくて、何なら抱きついて来ちゃう子。
 この子の名前はナオちゃん。とにかく誰に対しても距離が近い。女の子だろうと男の子だろうと、教師とだろうと普通に話せちゃう子。ナオちゃんに気に入られてから僕は、なにかひとつナオちゃんとおそろにしていた。リップだったり、汗ふきシートだったり、そういう共通点を探すために、あさいちナオちゃんに抱きつかれる。
 その日によって違うおそろを確認するためにナオちゃんは近づいてくるけど、その頃の僕は入学したての無性別だった僕ではなくて、もう少しだけ胸が膨らみペニスもちゃんと勃起する体に調整されていた。
 
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