都合のいい男の娘

紹介された僕。

　枝間野優。僕の名前。
　クラスに踏み込んだ僕は、不思議な光景を見る。大人ではない男女。僕の体とは明らかに違う人たち。それが、同い年だというだけで、ひとところに集められていた。
　教師として紹介された男性が、僕の名前を黒板に書く。マンガみたいな光景。セリフも最近読んだマンガそのまんま。だから僕も、そのままの説明をする。
「えまの　ゆうです。中学までは病院内の学校に通っていました。普通の学校は、ここが初めてです。よろしく」

　教室がざわつく。
「えまのは、男子だ。かんたんに説明しておいてほしいと事前に言われているので、病院からの説明を伝えておく。
　これはえまのの同意もとっているからな」
そうして先生は、僕が遺伝子的にまだ第二次性徴を迎えていないことと、女子として生活を送ること、今後の学生生活の中で性分化していくだろうことを代わりに説明してくれた。

　何人かの女の子が露骨に目を煌めかせていたし、男子は複雑な表情をしていた。
　性別が未分化なのは嘘ではないし、性徴を止めているせいで、身長は150センチほどしかない。性別がないからこそ、筋肉もふくよかな肉もなく、ただただ細身であるだけの体。性別不詳の平たい体に見事な女顔がのり、子供特有の細い髪の毛を肩より下まで伸ばしている。
　実在を疑うような、儚さと、それが男子であるという揺るがせない真実をつげられて、クラス中の疑問が僕の周りに渦巻いていた。
　直接性欲を向けてくるものはまだいないが、異物として認識されたのは確かだろう。早めにクラスの権力者。できれば女子のグループに紛れ込みたいな。
　僕はそう考えていた。