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青年の正体
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案内通りに来たはずだが、道を間違えたのかもしれない。
なにせ、ルーカスさんによって案内された場所には、国の代表を表す家紋が、門をはじめ、至る所に見受けられた。
「…あのルーカスさん。貴方、若しかして国王の熱狂的な信者だったりします?」
うーん、と唸るルーカスさん。
「そうだなぁ。まあ、尊敬はしているが、別に親父の信者というわけでは無いかな」
うん?国の代表の息子さん。という事は、
「ルーカスさんは若しかして、王子様だったりします?」
「そうだなぁ。兄貴がいるから、第2王子、とか呼ばれているな。因みに、弟もいるが」
予想外の展開に、頭が追い付かない。
「ここは所謂、別邸の一つなんだ。俺の目が良くなるまで、ここで療養しろ、という父上からの指示が出てな」
小さいだろ?この屋敷。と私に同意を求めている。
お城に比べれば大分小さいのは確かだ。しかし、捨てた我が家と比較すれば、とても大きいと言わざるを得ない。
「よし、それでは入ろうか」
ルーカスさん、いえ、ルーカス王子に促されて、一緒にお屋敷の門をくぐった。
「ただいま。戻ったぞ!」
「ルーカス王子!今まで何処に行かれていたのですか?」
初老の男性が、勢いよくルーカスさんの元へと走ってくる。
「うん。少し散歩に出ていた」
「さ、散歩って。私がどれだけ心配したと思っているのですか?!」
男性は、酷くお怒りの様だ。
「外出するのは構いません。ですが、せめて護衛の者を付けて下さい」
「ああ、悪かったよ。ごめんな、心配かけて」
その言葉を聞いて、男性は溜飲を下げたようだった。
落ち着きを取り戻した男性の視線は、王子の横にいる私へと向けられた。
「それで、そちらのご令嬢は、どちら様ですかな?」
「ああ、アルベロというのだ。さっき知り合ったんだが、本日からメイドとして俺の世話をして貰うことになったから」
目を僅かに、見開いた男性だったが、直ぐに元に戻った。
「そうですか。貴方様が決めた事でしたら、私には何も言えません」
そして、私の方へ身体を向けると丁寧に挨拶をして下さった。
「初めまして、アルベロ。私はクラウスだ。このお屋敷で執事をしている」
遅れて私も、挨拶をする。
「初めまして。アルベロと申します。クラウス様、本日より、どうぞ宜しくお願い申し上げます」
「ふむ。それでは、君の部屋の紹介と、仕事の流れなどを伝えないといけませんな」
クラウスさんが、懐から取り出した小さな鐘を鳴らすと、一人のメイドさんがやってきた。
「何でしょう?クラウスさん」
凄く、綺麗な人だなと思わず見つめてしまう。
「ああ。こちらは、アルベロだ。本日よりメイドとして、お屋敷で働くことになった。すまないが、空き部屋へ、彼女を案内してやってくれ。それと、本格的には明日より働いて貰うことになる。簡単にで構わんから、仕事の流れについても教えてあげて欲しい」
「あら、急ですわね。まあ、人手も丁度足りていなかったので、助かりましたわ」
ふわっと、スカートを靡かせて、メイドさんは私へと視線を向けた。
「初めまして、アルベロさん。私は、ミーアと申します。どうぞ宜しくお願いします」
思わず、感心してしまった。何て優美な挨拶だろう。私のいたお屋敷のメイドさん達とは、言い方は悪いがレベルが違うと、挨拶一つで分かってしまった。
同時に緊張した。私も、このレベルを求められるのかと思うと、胃がキリキリした。でも、大丈夫。厳しい先生のレッスンにも耐えたのだから、と自分を奮い立たせた。
「初めまして、ミーア様。ご紹介に預かった、アルベロと申します。ご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い致します」
どうだろう?とミーア様の表情を伺うが、先ほどから、ニコニコとした表情を浮かべているだけで、感情が読めない。
「ええ、分からないことがあったら、私に何でも聞いてくださいね」
全く、表情が変わらないミーア様。
え、なにこれ、怖い。
こうして、私はお屋敷の一員として認められたのだった?
なにせ、ルーカスさんによって案内された場所には、国の代表を表す家紋が、門をはじめ、至る所に見受けられた。
「…あのルーカスさん。貴方、若しかして国王の熱狂的な信者だったりします?」
うーん、と唸るルーカスさん。
「そうだなぁ。まあ、尊敬はしているが、別に親父の信者というわけでは無いかな」
うん?国の代表の息子さん。という事は、
「ルーカスさんは若しかして、王子様だったりします?」
「そうだなぁ。兄貴がいるから、第2王子、とか呼ばれているな。因みに、弟もいるが」
予想外の展開に、頭が追い付かない。
「ここは所謂、別邸の一つなんだ。俺の目が良くなるまで、ここで療養しろ、という父上からの指示が出てな」
小さいだろ?この屋敷。と私に同意を求めている。
お城に比べれば大分小さいのは確かだ。しかし、捨てた我が家と比較すれば、とても大きいと言わざるを得ない。
「よし、それでは入ろうか」
ルーカスさん、いえ、ルーカス王子に促されて、一緒にお屋敷の門をくぐった。
「ただいま。戻ったぞ!」
「ルーカス王子!今まで何処に行かれていたのですか?」
初老の男性が、勢いよくルーカスさんの元へと走ってくる。
「うん。少し散歩に出ていた」
「さ、散歩って。私がどれだけ心配したと思っているのですか?!」
男性は、酷くお怒りの様だ。
「外出するのは構いません。ですが、せめて護衛の者を付けて下さい」
「ああ、悪かったよ。ごめんな、心配かけて」
その言葉を聞いて、男性は溜飲を下げたようだった。
落ち着きを取り戻した男性の視線は、王子の横にいる私へと向けられた。
「それで、そちらのご令嬢は、どちら様ですかな?」
「ああ、アルベロというのだ。さっき知り合ったんだが、本日からメイドとして俺の世話をして貰うことになったから」
目を僅かに、見開いた男性だったが、直ぐに元に戻った。
「そうですか。貴方様が決めた事でしたら、私には何も言えません」
そして、私の方へ身体を向けると丁寧に挨拶をして下さった。
「初めまして、アルベロ。私はクラウスだ。このお屋敷で執事をしている」
遅れて私も、挨拶をする。
「初めまして。アルベロと申します。クラウス様、本日より、どうぞ宜しくお願い申し上げます」
「ふむ。それでは、君の部屋の紹介と、仕事の流れなどを伝えないといけませんな」
クラウスさんが、懐から取り出した小さな鐘を鳴らすと、一人のメイドさんがやってきた。
「何でしょう?クラウスさん」
凄く、綺麗な人だなと思わず見つめてしまう。
「ああ。こちらは、アルベロだ。本日よりメイドとして、お屋敷で働くことになった。すまないが、空き部屋へ、彼女を案内してやってくれ。それと、本格的には明日より働いて貰うことになる。簡単にで構わんから、仕事の流れについても教えてあげて欲しい」
「あら、急ですわね。まあ、人手も丁度足りていなかったので、助かりましたわ」
ふわっと、スカートを靡かせて、メイドさんは私へと視線を向けた。
「初めまして、アルベロさん。私は、ミーアと申します。どうぞ宜しくお願いします」
思わず、感心してしまった。何て優美な挨拶だろう。私のいたお屋敷のメイドさん達とは、言い方は悪いがレベルが違うと、挨拶一つで分かってしまった。
同時に緊張した。私も、このレベルを求められるのかと思うと、胃がキリキリした。でも、大丈夫。厳しい先生のレッスンにも耐えたのだから、と自分を奮い立たせた。
「初めまして、ミーア様。ご紹介に預かった、アルベロと申します。ご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い致します」
どうだろう?とミーア様の表情を伺うが、先ほどから、ニコニコとした表情を浮かべているだけで、感情が読めない。
「ええ、分からないことがあったら、私に何でも聞いてくださいね」
全く、表情が変わらないミーア様。
え、なにこれ、怖い。
こうして、私はお屋敷の一員として認められたのだった?
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