17 / 35
二幕
伍話
しおりを挟む広く薄暗い倉庫の中、大勢の男達が、ぐるりと何かをとり囲むように立っていた。
その中心で、脱力しきった美しい男が1人、椅子にくくりつけられている。
動けない彼のそばには心配そうな面持ちで寄り添っている、これまた綺麗な男が1人。白い首元には革製の、紅色の首輪がつけられている。
「お前、あいつの犬?ちょーっと俺らと遊ぼうか。」
首輪をつけた男性の方に、ニタニタと下品に笑う男たちが寄ってきた。
「主人が脱力しきって目隠しされてる状態だもんなぁ?いくらDomのトップとはいえglareさえ封じれば何もできないだろ?」
「主人に危害を加えられたくなければ大人しくしてな。」
「◯◯社の跡取りが、妹ごときのためにこのざまか。笑える。」
周りを囲む男たちは楽しそうだった。
数々の罵詈雑言がとめどなく浴びせられる。
Dom性のトップと謳われる愛染紅司は、ここに来てからずっと黙って、男たちの言うことに従っていた。
妹を人質にとられ、薬を飲めば助けてやると言われたから、目隠しをされ、薬を飲んだ。
妹が解放された後も、縄で手を縛られても、椅子にくくりつけられても、何も言わずに。
しかし。
「お利口にしなよ、わんちゃん。」
周りを囲む男の1人がいやらしい手つきで愛染のSub、一葉に触れた。
その瞬間、愛染の口角が自信たっぷりげに美しく吊り上げられて。
「おいおいどうした、とうとう頭でもおかしくなったか?」
「喋る以外になーんもできないくせにな!」
何を言われても、愛染の口角が下がることはない。やがて妖艶に濡れた真っ赤な唇が艶やかに開かれて。
「行け、一葉。」
凛とした中性的な声が、その場に響き渡る。
「かしこまりました。」
深呼吸とともに愛染のとなりに寄り添っていた一葉の目つきが一変した。
刹那、大勢の男たちの口元から笑みが消え、彼らは揃ってピタリと動けなくなってしまう。
何が起こったと言うのだろう。場内は動揺に溢れていた。
たしかに愛染には目隠しがされている。ではこのglareは一葉から放たれたとでも言うのだろうか。
この場全員のDomを圧倒するほどの強烈なglare。それをなぜ、Subが。
一葉は周りに目を光らせつつ主人の縄を丁寧にほどき、そして脱力しきった身体を支えると、ゆっくりと椅子に座らせた。
「俺の一葉に触れるとは、いい度胸をしているな?」
目隠しが外れた瞬間、放たれたglareは先ほど一葉が放ったものを大きく凌駕する。その場にいた全員が失禁し、立てなくなってしまうほどにそれは強烈だった。
そのまま一葉が男共全員の手足を動かないよう拘束していき、
そして。
「よくやった、一葉。kneel。」
椅子に座った愛染は、目の前の一葉に柔らかな声でそう告げた。
ふるふると一葉の足が小刻みに震える。彼の目はじっと主人を見つめ、恍惚としていて。
ぺたん。
震えながら、ゆっくりと床に膝を預けた。
愛染の足元で、一葉はおすわりの体勢になり、再び主人を見上げ、静かに褒美を待つ。
「いいこだ。」
だらりと垂らされた力ない腕が、震えながら一葉の顔の近くまで持っていかれて。
一葉の首の付け根を、くの字に曲げられた愛染の人差し指が猫を扱うようにゆっくりと擦っていった。
「ふぅ…、あっ…ぁ… 」
たっぷりと色香を纏った声が甘ったるい吐息とともに一葉の口から放たれる。それこそにゃあとでもいいそうな勢いだ。
先ほど場の全員を圧巻するほどのglareを放っていたのは誰だったか。
拘束された大勢の男たちは、その異様な光景を前にただ呆然と口を開けていた。
その中心で、脱力しきった美しい男が1人、椅子にくくりつけられている。
動けない彼のそばには心配そうな面持ちで寄り添っている、これまた綺麗な男が1人。白い首元には革製の、紅色の首輪がつけられている。
「お前、あいつの犬?ちょーっと俺らと遊ぼうか。」
首輪をつけた男性の方に、ニタニタと下品に笑う男たちが寄ってきた。
「主人が脱力しきって目隠しされてる状態だもんなぁ?いくらDomのトップとはいえglareさえ封じれば何もできないだろ?」
「主人に危害を加えられたくなければ大人しくしてな。」
「◯◯社の跡取りが、妹ごときのためにこのざまか。笑える。」
周りを囲む男たちは楽しそうだった。
数々の罵詈雑言がとめどなく浴びせられる。
Dom性のトップと謳われる愛染紅司は、ここに来てからずっと黙って、男たちの言うことに従っていた。
妹を人質にとられ、薬を飲めば助けてやると言われたから、目隠しをされ、薬を飲んだ。
妹が解放された後も、縄で手を縛られても、椅子にくくりつけられても、何も言わずに。
しかし。
「お利口にしなよ、わんちゃん。」
周りを囲む男の1人がいやらしい手つきで愛染のSub、一葉に触れた。
その瞬間、愛染の口角が自信たっぷりげに美しく吊り上げられて。
「おいおいどうした、とうとう頭でもおかしくなったか?」
「喋る以外になーんもできないくせにな!」
何を言われても、愛染の口角が下がることはない。やがて妖艶に濡れた真っ赤な唇が艶やかに開かれて。
「行け、一葉。」
凛とした中性的な声が、その場に響き渡る。
「かしこまりました。」
深呼吸とともに愛染のとなりに寄り添っていた一葉の目つきが一変した。
刹那、大勢の男たちの口元から笑みが消え、彼らは揃ってピタリと動けなくなってしまう。
何が起こったと言うのだろう。場内は動揺に溢れていた。
たしかに愛染には目隠しがされている。ではこのglareは一葉から放たれたとでも言うのだろうか。
この場全員のDomを圧倒するほどの強烈なglare。それをなぜ、Subが。
一葉は周りに目を光らせつつ主人の縄を丁寧にほどき、そして脱力しきった身体を支えると、ゆっくりと椅子に座らせた。
「俺の一葉に触れるとは、いい度胸をしているな?」
目隠しが外れた瞬間、放たれたglareは先ほど一葉が放ったものを大きく凌駕する。その場にいた全員が失禁し、立てなくなってしまうほどにそれは強烈だった。
そのまま一葉が男共全員の手足を動かないよう拘束していき、
そして。
「よくやった、一葉。kneel。」
椅子に座った愛染は、目の前の一葉に柔らかな声でそう告げた。
ふるふると一葉の足が小刻みに震える。彼の目はじっと主人を見つめ、恍惚としていて。
ぺたん。
震えながら、ゆっくりと床に膝を預けた。
愛染の足元で、一葉はおすわりの体勢になり、再び主人を見上げ、静かに褒美を待つ。
「いいこだ。」
だらりと垂らされた力ない腕が、震えながら一葉の顔の近くまで持っていかれて。
一葉の首の付け根を、くの字に曲げられた愛染の人差し指が猫を扱うようにゆっくりと擦っていった。
「ふぅ…、あっ…ぁ… 」
たっぷりと色香を纏った声が甘ったるい吐息とともに一葉の口から放たれる。それこそにゃあとでもいいそうな勢いだ。
先ほど場の全員を圧巻するほどのglareを放っていたのは誰だったか。
拘束された大勢の男たちは、その異様な光景を前にただ呆然と口を開けていた。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
あやかしの花嫁~白の執心~
永久(時永)めぐる
恋愛
山で道に迷った鈴花は、夏々地(かがち)と名乗る美貌の青年に助けられる。
一晩、彼の家で厄介になるはずが……?
※性描写のある回はタイトルに◆がついています。
※ムーンライトノベルズさんにも投稿しています。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる