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一幕
※陀話
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―翌日―
すっかり身体の痛みは消えて、仕事に向かった。
いつも通り仕事に集中し、お昼を過ぎた頃、上司に呼び止められる。
「青葉さん。明日の出張研修の事だけど……」
「え、研修……?」
「あぁ、明日、明後日と行く予定だったが」
しっかり予定を把握していたはずなのに、すっかり頭から抜けてしまっていた。
宿泊という言葉を聞き一瞬固まってしまう。彼を一人にさせてしまう。
琥珀さんの祈りはどうすればいいのか。
「何?何かまずいことでもあるの?」
「い、いえ……大丈夫です。頑張ってきます」
曜日をしっかり把握出ていなかった事に呆れながら、明日の為の行程を確認し、宿泊先も手配した。
会社からの帰り道、泊まり道具を買い、足早に家に戻った。
アパートに着き、部屋を開けると白蛇の彼の姿が見えた。
『鈴。お帰り』
「琥珀さん、ただいまです」
自分の元にするりと近づくと、足元に絡みつき上へと這う。
「……」
『どうした?元気がないな』
「いえ……」
つんと耳元に口先が当たる。
チロリと舌が舐める感触に身が強張ったが、今は明日の出張のことで頭がいっぱいだった。
白蛇は暫しじっとした後、人型に顕現する。
「鈴、ほんとにどうした?」
いつものように大きな手に包まれる。
「琥珀さん……」
「具合悪いのか?」
心配するように、背中を撫でられると、一日離れなくてはならないことに、不安になった。
「っ……あの、実は」
「何……?」
「明日出張になってるの忘れてまして。琥珀さんを一人にします」
「……」
そう言うと、彼は無言のまま、私を力強く抱きしめた。
無事に終えられるかという不安が襲うのと、彼と離れなければならないことに寂しくなる。
涙が込み上げそうになるのをじっと耐える。
「それで元気なかったのか。そうか……」
「琥珀さんに、一日だけ祈ってあげられません……」
「そんなの気にするな、一日くらい何もなくても倒れないさ。まぁ、寂しいけどな」
琥珀の言葉に、彼自身も寂しいと思ってくれるのかと思い、抱きしめ返した。
「鈴、俺と離れるの寂しいと思ってくれるのか?」
「はい……」
そう言うと、彼はあやす様に、私の背を叩き呟く。
「なら、鈴の為に何とかしよう」
じっと耐えていたつもりが、嬉しさと共に涙が零れた。
琥珀はそっと鈴の顔を持ち上げると、潤んだ瞳に軽く舌を当て涙を掬った。
「琥珀さ……」
「やっぱこの姿の方がいいな。お前を抱きしめられるし、表情がよく見える」
頭を抱えられ、軽く唇が当てられると、顔を擽るように、啄むような口づけをされていく。
「ん、可愛い…‥」
「擽ったい……」
「やっと笑った。さぁ、ご飯食べようか。明日は早いだろ?支度して直ぐに休まないと」
「はい……」
琥珀さんは不思議だ。不安を拭い去るようにいつも私に真剣になってくれる。
でも顕現をたくさんさせてしまったら、彼の負担になってしまう。
自分の我儘で、彼を困らせてはいけない。
「鈴、変な悩みは考えるなよ。俺のことは気にするな」
見透かされたように返答され驚いたが、彼はそれ以上何も言うことはなく、机に着いたのだった。
それから、変わらぬ食事をし、入浴を済ませた後、明日のために早めに就寝した。
その夜の彼は、人の姿ではなく蛇の姿で眠りについていた。
翌朝、早くから家を出て出張先へ向かう。起きると彼の姿は見えなかった。
望むなら何とかすると言っていたが、あれは私を落ち着かせる為の嘘だったに違いないと思い、駅に向かう。
電車に乗り継ぎ現地へと向かうと、研修先の会社の人と合流し、社内へ入った。
彼は大人しく留守番をしてくれるだろうかと考えながら、研修をしていった。
緊張感がすごかったが、無事に一日を終えて安堵する。
終わった後。軽く仲間とカフェをして過ごしホテルに入った。
疲れた為、そのまま部屋の寝間着に身を包むと身体をベッドの上に倒れこんだ。
「疲れた……」
ふかふかのベッドの感触に高級感を感じた。
睡魔が襲い、湯を溜めたのも忘れ、そのまま深い眠りに就いた。
暫くして、衣服のポケットから白い蛇が飛び出した。
蛇はゆっくりと大きさを変え彼女の傍へと、這ってゆく。
『疲れたみたいだな。お疲れ様……』
じっと彼女の顔を見つめながら、彼はじわりと己の身を彼女の身に絡めていく。
混沌とした意識の中で、ふと手にひんやりとした感触がした。
これは夢と思いながら、眠たい身体を起こすことはなく、そのまま眠っていると、まだひんやりとした感触がするりと動くのがわかった。
「琥珀さん……?」
ぽつり呟くと声がする。
『鈴……』
ねっとりと首筋に絡むように、纏わりつき、耳朶を舌でつつかれるのがわかる。
『無防備だな……』
寝間着から覗く白い肌に欲情する。
起きない鈴を傍で見ながら、香りが身体から醸し出され、悪戯したい気分になった。
するりと胴体を彼女の肢体に移動し、胸元へと這う。
下着の隙間に辿っていくと、乳房に軽く噛みつく。
「ん……んっ……」
声を漏らしたが起きることがない為、更に乳房の頂に舌を当て口に食んだ。
「んんっ。あ……何っ」
目を覚ますと胸元に蛇がいるのに気づき驚く。
「琥珀さ……!」
『起きたか、残念……あまり力使えないから、この姿のまま楽しもうとしたんだけど』
「駄目です!」
『鈴の肌柔らかくて、俺好きだな……』
「いやっ、噛まないで……」
口に胸の頂が含まれているのがわかる。ぬるりとした感触に熱を帯びていき、身体が反応していく。
こんな姿で彼に襲われるなんて……。
「琥珀さん、嫌っ……」
じっとしていられなくなり、琥珀をその場から払おうとするが、ショーツの中へ彼の頭が伸びていく感覚がし、秘所へと顔が埋められるのがわかった。
「あっ、っ!!」
一度彼によって開かれた花芯は熱を帯び、受け入れようと反応する。
蛇のままの彼に、食べられてしまう感覚に怖くなる。
指先で開かれるものとは違う、舌の感触に恐怖と快楽が同時に襲う。
『鈴……全部脱いで』
頭に声が響いてきたが、秘所の刺激が一向に止まず身が震える。
「や、恥ずかしい……」
『俺しか見てないよ…‥ね、気持ちよくしてやる』
「んっ、はぁ……」
誘われるまま、胸元のホックを外しブラを外す、そしてショーツへと手を掛ける。
ゆっくりと脱ぐと、彼は笑って両足に身を絡めて囁く。
『ほら、鈴……見て。甘い蜜が溢れてきてるよ』
「そんなこと……なっ」
チロチロと舌が中に押し込まれている感触に身もだえてしまう。
彼の口元が蜜により艶めいているのがわかった。まさか、こんな姿で犯されるなんて。
「蛇じゃ嫌です……」
もっと触れてほしい。奥から熱い熱が溢れるような感覚に涙目で懇願する。
『ん……わかった』
ゆるりと白い巳の頭が離れると、ゆっくりと人に変わっていく。
藤の濃厚な香りが広がり、彼の顔が足の間から現れる。
「ふふっ、ちゃんと付いてきたよ鈴」
「琥珀さん……っ」
「こっそりポケットの中にいたんだ。それにしても…‥鈴がこんなに俺を受け入れてくれるなんて……最高だ」
声音が色気を帯び、琥珀の瞳が私を捉える。
「よく見ていてごらん……」
膝の裏を抱えられ左右に広げられると秘所が彼の前に露わになる。
見られているという感じに羞恥心で目を背けてしまう。
「今日もたっぷり可愛がってやる……」
ぬるりと熱い舌が花芯をなぞり、口に含まれる。それと同時に激しい水音が漂い出す。
「あっ、琥珀さん……駄目!」
先程までと感覚が違うように、彼の熱い吐息がかかり、器用な舌が中を抉るように捻じ込まれ動く。
「気持ちいい?鈴の身体厭らしい……」
「言わないで……」
秘所から離れたと思えば、抱き起され耳朶をねっとりと舐められる。
「可愛いな鈴は、ちゃんと俺に反応してくれる」
胸を包み込むように揉み解され、口づけを交わし溶かされていく感覚に陥いる。
暫くの間、彼は器用に私の身体を愛でながら、熱の塊を抑えていた。
「あ……」
彼は熱を帯びながらも、私の内に楔を捻じ込ませようとする動きはなく、ただ私の身体に触れ続けた。
「本当はしたいが。お前が明日起き上がれないのはまずい」
「っ……」
「なぁ、鈴の手で触って」
導くようにその箇所へ触れさせられると、熱い熱が伝わる。
彼の楔に触れていることに、恥ずかしくてたまらないが、彼が熱に浮かされながら耐えている様子が妖艶に映る。
「駄目だな……勝手についてきて。こんなことするなんて……歯止めが効かない」
琥珀さんの熱塊が脈を打ち手の中で硬度を増していく。
「鈴、イきそうだ……」
荒々しい吐息を交えながら口づけ合うと、手の中で熱が爆ぜた。
呻くように篭った声が妖艶さを醸し出し、彼は倒れた。
荒い息遣いをしながら、汗ばんだ額からは雫が零れ、一層妖しく映る。
「琥珀さん……」
「ふっ、ちょっと熱が上がりすぎたか。汚れたな風呂に入ろう。」
湯の入った浴槽まで抱えられていくと、昂っているのか私を捉えて離さなかった。
明日も仕事だというのに、今夜の彼は、私の身体を蕩けさせてゆく。
「甘い声、もっと聞きたいな……」
「琥珀さん、明日も仕事……」
「うん、でももう少し……こうさせて」
耳元にたくさん口づけられながら、背後から身体を抱えられ、丁寧に愛撫されていく。
「擽ったい……っ」
隣の部屋にわかってしまうという思いで、恥ずかしさでいっぱいになる。
彼の艶めく声音は、私の気持ちを高揚していくから不思議だ。
「こんなんじゃ、ただの盛りのある雄と変わらないな……」
動物的な本能がそうさせるのか、一度捕らわれてしまうと放し難くなってしまう。
手に入れたものを逃さないように。
少しの間触れ合った後、彼はそっと私を抱き上げ、立ち上がった。
「上がるか……」
「はい……」
その後ベッドに運ばれると、彼は顕現を解き、本来の姿になり机の上に蹲った。
「おやすみなさい……」
『あぁ、おやすみ……』
鈴が眠るのを確認した後、じっとしていると……声が聞こえた。
―琥珀、琥珀よ―
女の声がする。
その声は聞き覚えのある声。
主の声だ。
『其方の神気が腐っていなければ我が声が聞こえるだろう』
『……貴女にはもう関係ありません』
そう言うと頭の中に貫かれるような衝撃が走った。
『この私に逆らうか』
『何故。私を……』
『この贄の女がどうなってもいいのか?』
『!!!』
狂気な声は、鈴の周りに黒い瘴気を生む。
「……うっ」
彼女の顔が微かに息苦しそうになる。
『この人間の、どこがいいというのか……』
『鈴に、手を出さないでくれ……』
声を上げると、笑い交じりに、その女はこう告げた。
『ならば、久しぶりに相手をしてくれるな?』
『いくらでも、変わりはいるではありませんか……瑪瑙や翡翠など貴女を愛しく思う者はいくらでも……』
この主は、どうしてか俺にばかり執着する。
最初の頃から何も変わってはいない。
『他の者では物足りぬ……ましてや人間も好かぬ。お前のその毛嫌いする目がたまらぬのだ』
『っ……』
『追放すれば、簡単に許しを請うてくると思ったが……』
じわりじわり、頭に響いてくる声に恐怖を感じ、身が強張る。
『なぁ、琥珀……お前は人間の贄と幸せにはなれぬ。今までずっとそうであっただろう……?』
『やめろ……』
『お前の宿命は、このまま消えるか、私に喰われるしかない……』
声だけだというのに、身体を撫でられるような感覚に捕らわれる。
『人の身など捨てて、あの高貴で白い蛇神として……』
幸せになれない―その言葉に心を抉られそうになる。
『其方と私は一対……決して離れることはできない』
『おやめください!私は……主である貴女とは』
『其方の事をいずれこの女も捨てる。何年かしたらお前を恐れ手放すだろう。化け物と呼ばれるぞ』
『……』
『フフッ、鈴を傷つけられたくなければ明日、我の元へ来い。さもなくば、この女の命を喰らう』
『!!……』
これから先も、彼女から逃げられぬというのか。
やっと安息を得たと思ったのに……
『待っておるぞ。翡翠たちも、再び会いたがっている……』
そう言い残し声は消えた。
身体への不快感が消え、その場でぐったりとする。
もし彼女の元へ行ってしまったら、戻れないかもしれない。
だが、行かなければ鈴が危険な目に合う。
それだけは避けなければならない。
「俺は、必ず帰るよ鈴……お前のいるところが俺の帰る場所」
人の姿になり鈴の身を起こさないように抱きしめる。
鈴の香りをその身に感じ、余韻に浸った。
「俺の心にいるのは、お前だけだ……」
追い出された以上、二度と踏み入れたくはないと思ったが、鈴の為、琥珀は暗いあの聖域へ向かう決意をした。
すっかり身体の痛みは消えて、仕事に向かった。
いつも通り仕事に集中し、お昼を過ぎた頃、上司に呼び止められる。
「青葉さん。明日の出張研修の事だけど……」
「え、研修……?」
「あぁ、明日、明後日と行く予定だったが」
しっかり予定を把握していたはずなのに、すっかり頭から抜けてしまっていた。
宿泊という言葉を聞き一瞬固まってしまう。彼を一人にさせてしまう。
琥珀さんの祈りはどうすればいいのか。
「何?何かまずいことでもあるの?」
「い、いえ……大丈夫です。頑張ってきます」
曜日をしっかり把握出ていなかった事に呆れながら、明日の為の行程を確認し、宿泊先も手配した。
会社からの帰り道、泊まり道具を買い、足早に家に戻った。
アパートに着き、部屋を開けると白蛇の彼の姿が見えた。
『鈴。お帰り』
「琥珀さん、ただいまです」
自分の元にするりと近づくと、足元に絡みつき上へと這う。
「……」
『どうした?元気がないな』
「いえ……」
つんと耳元に口先が当たる。
チロリと舌が舐める感触に身が強張ったが、今は明日の出張のことで頭がいっぱいだった。
白蛇は暫しじっとした後、人型に顕現する。
「鈴、ほんとにどうした?」
いつものように大きな手に包まれる。
「琥珀さん……」
「具合悪いのか?」
心配するように、背中を撫でられると、一日離れなくてはならないことに、不安になった。
「っ……あの、実は」
「何……?」
「明日出張になってるの忘れてまして。琥珀さんを一人にします」
「……」
そう言うと、彼は無言のまま、私を力強く抱きしめた。
無事に終えられるかという不安が襲うのと、彼と離れなければならないことに寂しくなる。
涙が込み上げそうになるのをじっと耐える。
「それで元気なかったのか。そうか……」
「琥珀さんに、一日だけ祈ってあげられません……」
「そんなの気にするな、一日くらい何もなくても倒れないさ。まぁ、寂しいけどな」
琥珀の言葉に、彼自身も寂しいと思ってくれるのかと思い、抱きしめ返した。
「鈴、俺と離れるの寂しいと思ってくれるのか?」
「はい……」
そう言うと、彼はあやす様に、私の背を叩き呟く。
「なら、鈴の為に何とかしよう」
じっと耐えていたつもりが、嬉しさと共に涙が零れた。
琥珀はそっと鈴の顔を持ち上げると、潤んだ瞳に軽く舌を当て涙を掬った。
「琥珀さ……」
「やっぱこの姿の方がいいな。お前を抱きしめられるし、表情がよく見える」
頭を抱えられ、軽く唇が当てられると、顔を擽るように、啄むような口づけをされていく。
「ん、可愛い…‥」
「擽ったい……」
「やっと笑った。さぁ、ご飯食べようか。明日は早いだろ?支度して直ぐに休まないと」
「はい……」
琥珀さんは不思議だ。不安を拭い去るようにいつも私に真剣になってくれる。
でも顕現をたくさんさせてしまったら、彼の負担になってしまう。
自分の我儘で、彼を困らせてはいけない。
「鈴、変な悩みは考えるなよ。俺のことは気にするな」
見透かされたように返答され驚いたが、彼はそれ以上何も言うことはなく、机に着いたのだった。
それから、変わらぬ食事をし、入浴を済ませた後、明日のために早めに就寝した。
その夜の彼は、人の姿ではなく蛇の姿で眠りについていた。
翌朝、早くから家を出て出張先へ向かう。起きると彼の姿は見えなかった。
望むなら何とかすると言っていたが、あれは私を落ち着かせる為の嘘だったに違いないと思い、駅に向かう。
電車に乗り継ぎ現地へと向かうと、研修先の会社の人と合流し、社内へ入った。
彼は大人しく留守番をしてくれるだろうかと考えながら、研修をしていった。
緊張感がすごかったが、無事に一日を終えて安堵する。
終わった後。軽く仲間とカフェをして過ごしホテルに入った。
疲れた為、そのまま部屋の寝間着に身を包むと身体をベッドの上に倒れこんだ。
「疲れた……」
ふかふかのベッドの感触に高級感を感じた。
睡魔が襲い、湯を溜めたのも忘れ、そのまま深い眠りに就いた。
暫くして、衣服のポケットから白い蛇が飛び出した。
蛇はゆっくりと大きさを変え彼女の傍へと、這ってゆく。
『疲れたみたいだな。お疲れ様……』
じっと彼女の顔を見つめながら、彼はじわりと己の身を彼女の身に絡めていく。
混沌とした意識の中で、ふと手にひんやりとした感触がした。
これは夢と思いながら、眠たい身体を起こすことはなく、そのまま眠っていると、まだひんやりとした感触がするりと動くのがわかった。
「琥珀さん……?」
ぽつり呟くと声がする。
『鈴……』
ねっとりと首筋に絡むように、纏わりつき、耳朶を舌でつつかれるのがわかる。
『無防備だな……』
寝間着から覗く白い肌に欲情する。
起きない鈴を傍で見ながら、香りが身体から醸し出され、悪戯したい気分になった。
するりと胴体を彼女の肢体に移動し、胸元へと這う。
下着の隙間に辿っていくと、乳房に軽く噛みつく。
「ん……んっ……」
声を漏らしたが起きることがない為、更に乳房の頂に舌を当て口に食んだ。
「んんっ。あ……何っ」
目を覚ますと胸元に蛇がいるのに気づき驚く。
「琥珀さ……!」
『起きたか、残念……あまり力使えないから、この姿のまま楽しもうとしたんだけど』
「駄目です!」
『鈴の肌柔らかくて、俺好きだな……』
「いやっ、噛まないで……」
口に胸の頂が含まれているのがわかる。ぬるりとした感触に熱を帯びていき、身体が反応していく。
こんな姿で彼に襲われるなんて……。
「琥珀さん、嫌っ……」
じっとしていられなくなり、琥珀をその場から払おうとするが、ショーツの中へ彼の頭が伸びていく感覚がし、秘所へと顔が埋められるのがわかった。
「あっ、っ!!」
一度彼によって開かれた花芯は熱を帯び、受け入れようと反応する。
蛇のままの彼に、食べられてしまう感覚に怖くなる。
指先で開かれるものとは違う、舌の感触に恐怖と快楽が同時に襲う。
『鈴……全部脱いで』
頭に声が響いてきたが、秘所の刺激が一向に止まず身が震える。
「や、恥ずかしい……」
『俺しか見てないよ…‥ね、気持ちよくしてやる』
「んっ、はぁ……」
誘われるまま、胸元のホックを外しブラを外す、そしてショーツへと手を掛ける。
ゆっくりと脱ぐと、彼は笑って両足に身を絡めて囁く。
『ほら、鈴……見て。甘い蜜が溢れてきてるよ』
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チロチロと舌が中に押し込まれている感触に身もだえてしまう。
彼の口元が蜜により艶めいているのがわかった。まさか、こんな姿で犯されるなんて。
「蛇じゃ嫌です……」
もっと触れてほしい。奥から熱い熱が溢れるような感覚に涙目で懇願する。
『ん……わかった』
ゆるりと白い巳の頭が離れると、ゆっくりと人に変わっていく。
藤の濃厚な香りが広がり、彼の顔が足の間から現れる。
「ふふっ、ちゃんと付いてきたよ鈴」
「琥珀さん……っ」
「こっそりポケットの中にいたんだ。それにしても…‥鈴がこんなに俺を受け入れてくれるなんて……最高だ」
声音が色気を帯び、琥珀の瞳が私を捉える。
「よく見ていてごらん……」
膝の裏を抱えられ左右に広げられると秘所が彼の前に露わになる。
見られているという感じに羞恥心で目を背けてしまう。
「今日もたっぷり可愛がってやる……」
ぬるりと熱い舌が花芯をなぞり、口に含まれる。それと同時に激しい水音が漂い出す。
「あっ、琥珀さん……駄目!」
先程までと感覚が違うように、彼の熱い吐息がかかり、器用な舌が中を抉るように捻じ込まれ動く。
「気持ちいい?鈴の身体厭らしい……」
「言わないで……」
秘所から離れたと思えば、抱き起され耳朶をねっとりと舐められる。
「可愛いな鈴は、ちゃんと俺に反応してくれる」
胸を包み込むように揉み解され、口づけを交わし溶かされていく感覚に陥いる。
暫くの間、彼は器用に私の身体を愛でながら、熱の塊を抑えていた。
「あ……」
彼は熱を帯びながらも、私の内に楔を捻じ込ませようとする動きはなく、ただ私の身体に触れ続けた。
「本当はしたいが。お前が明日起き上がれないのはまずい」
「っ……」
「なぁ、鈴の手で触って」
導くようにその箇所へ触れさせられると、熱い熱が伝わる。
彼の楔に触れていることに、恥ずかしくてたまらないが、彼が熱に浮かされながら耐えている様子が妖艶に映る。
「駄目だな……勝手についてきて。こんなことするなんて……歯止めが効かない」
琥珀さんの熱塊が脈を打ち手の中で硬度を増していく。
「鈴、イきそうだ……」
荒々しい吐息を交えながら口づけ合うと、手の中で熱が爆ぜた。
呻くように篭った声が妖艶さを醸し出し、彼は倒れた。
荒い息遣いをしながら、汗ばんだ額からは雫が零れ、一層妖しく映る。
「琥珀さん……」
「ふっ、ちょっと熱が上がりすぎたか。汚れたな風呂に入ろう。」
湯の入った浴槽まで抱えられていくと、昂っているのか私を捉えて離さなかった。
明日も仕事だというのに、今夜の彼は、私の身体を蕩けさせてゆく。
「甘い声、もっと聞きたいな……」
「琥珀さん、明日も仕事……」
「うん、でももう少し……こうさせて」
耳元にたくさん口づけられながら、背後から身体を抱えられ、丁寧に愛撫されていく。
「擽ったい……っ」
隣の部屋にわかってしまうという思いで、恥ずかしさでいっぱいになる。
彼の艶めく声音は、私の気持ちを高揚していくから不思議だ。
「こんなんじゃ、ただの盛りのある雄と変わらないな……」
動物的な本能がそうさせるのか、一度捕らわれてしまうと放し難くなってしまう。
手に入れたものを逃さないように。
少しの間触れ合った後、彼はそっと私を抱き上げ、立ち上がった。
「上がるか……」
「はい……」
その後ベッドに運ばれると、彼は顕現を解き、本来の姿になり机の上に蹲った。
「おやすみなさい……」
『あぁ、おやすみ……』
鈴が眠るのを確認した後、じっとしていると……声が聞こえた。
―琥珀、琥珀よ―
女の声がする。
その声は聞き覚えのある声。
主の声だ。
『其方の神気が腐っていなければ我が声が聞こえるだろう』
『……貴女にはもう関係ありません』
そう言うと頭の中に貫かれるような衝撃が走った。
『この私に逆らうか』
『何故。私を……』
『この贄の女がどうなってもいいのか?』
『!!!』
狂気な声は、鈴の周りに黒い瘴気を生む。
「……うっ」
彼女の顔が微かに息苦しそうになる。
『この人間の、どこがいいというのか……』
『鈴に、手を出さないでくれ……』
声を上げると、笑い交じりに、その女はこう告げた。
『ならば、久しぶりに相手をしてくれるな?』
『いくらでも、変わりはいるではありませんか……瑪瑙や翡翠など貴女を愛しく思う者はいくらでも……』
この主は、どうしてか俺にばかり執着する。
最初の頃から何も変わってはいない。
『他の者では物足りぬ……ましてや人間も好かぬ。お前のその毛嫌いする目がたまらぬのだ』
『っ……』
『追放すれば、簡単に許しを請うてくると思ったが……』
じわりじわり、頭に響いてくる声に恐怖を感じ、身が強張る。
『なぁ、琥珀……お前は人間の贄と幸せにはなれぬ。今までずっとそうであっただろう……?』
『やめろ……』
『お前の宿命は、このまま消えるか、私に喰われるしかない……』
声だけだというのに、身体を撫でられるような感覚に捕らわれる。
『人の身など捨てて、あの高貴で白い蛇神として……』
幸せになれない―その言葉に心を抉られそうになる。
『其方と私は一対……決して離れることはできない』
『おやめください!私は……主である貴女とは』
『其方の事をいずれこの女も捨てる。何年かしたらお前を恐れ手放すだろう。化け物と呼ばれるぞ』
『……』
『フフッ、鈴を傷つけられたくなければ明日、我の元へ来い。さもなくば、この女の命を喰らう』
『!!……』
これから先も、彼女から逃げられぬというのか。
やっと安息を得たと思ったのに……
『待っておるぞ。翡翠たちも、再び会いたがっている……』
そう言い残し声は消えた。
身体への不快感が消え、その場でぐったりとする。
もし彼女の元へ行ってしまったら、戻れないかもしれない。
だが、行かなければ鈴が危険な目に合う。
それだけは避けなければならない。
「俺は、必ず帰るよ鈴……お前のいるところが俺の帰る場所」
人の姿になり鈴の身を起こさないように抱きしめる。
鈴の香りをその身に感じ、余韻に浸った。
「俺の心にいるのは、お前だけだ……」
追い出された以上、二度と踏み入れたくはないと思ったが、鈴の為、琥珀は暗いあの聖域へ向かう決意をした。
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「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
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