【完結】転生して女装男子になった俺は王子様に口説かれてます

紫乃

文字の大きさ
上 下
18 / 31

17

しおりを挟む
「レオ兄様おかえりなさい」

 向かいに座るアンリ様が、俺の後ろへ視線を向ける。俺が振り向こうとすると、アンリ様がにこりと笑いながら口を開いた。

「やだなあ、レオ兄様。そんなに睨まなくても何もしてないよ。レオ兄様を待つ間、ちょっとお話ししてただけ」

 アンリ様の言葉に慌ててレオの方を見ると、レオは鋭い視線をアンリ様に向けていた。

「俺を待つ?」
「リョウさん、レオ兄様に会いにきたんだってさ」

 アンリ様がそう言うと、レオは驚いたようにこちらを見た。

「リョウが、俺に会いに?」
「う、うん。レオと話したくて」

 もしかして、迷惑だっただろうかと不安になり、レオの顔色を伺うように言う。

「そうか」

 俺の予想に反し、レオは嬉しそうにふわりと微笑んだ。

「レオ兄様がそんな風に笑うなんて知らなかったなあ、僕」
「アンリ黙れ」
「あははっ、レオ兄様ったら照れちゃって~」

 アンリ様は茶化すようにそう言うと、立ち上がり「またね」と俺に声をかけて部屋を出て行った。
 残された俺とレオは、お互いに見つめ合う。

「……話、だったか。ちょうど良い、俺も渡したいものがある。こっちだ」
「え、ちょっと待って!」

 レオはそれだけ言うと扉の方へ歩き出す。
 俺は慌てて立ち上がり、レオの後を追った。


◆◇◆◇◆◇◆


 階段を上がり、廊下を歩く。俺は、迷いなく進むレオの後ろを歩く。
 レオはいくつ目かの扉の前で立ち止まり、扉を開けた。
 レオの後に続き部屋に入ると、はじめに広々とした空間の真ん中で存在感を放つキングサイズのベッドが目に入る。

(うわすご……)

 他にも、ソファーやテーブル、ドレッサーなど家具一つ一つがシンプルながらに高級感を漂わせている。

「レオの部屋?」

 そう尋ねると、レオは「ああ」と一言返事をしながら、引き出しの中から小さな箱を取り出した。

「こっちに来い」

 あまりの場違い感に、視線を彷徨わせながら入り口付近に突っ立っていると、こちらを見たレオに手招きさせる。
 レオのそばに行くと、先ほどの小さな箱を手渡される。

「これは?」
「開けてみろ」

 そう言われ箱を開けると、中には花の形をしたイヤリングが入っていた。
 花びらを模った宝石がキラキラと輝いている。

(か、可愛い……)

「イヤリング?」
「ああ。これを見た時、お前に似合うと思った」
「こ、こんな高そうなの貰えない!」

 いくら可愛くても、どう見ても高そうなそれを簡単に受け取るわけにはいかない。

「俺が送りたいんだ。受け取ってくれ」

 返そうとしても、頑なに受け取ろうとしないレオに困り果てる。
 恋人なら分かる。でも、今の俺はものすごく中途半端だ。こんなんじゃ、イヤリングを受け取ることは出来ない。

(せっかくここまで来たんだ。ちゃんと答えを出さなきゃ)

 チャレンジあるのみと言っていたアンリ様の言葉を思い出し、覚悟を決める。

「話したくて来たって、言ったよね」
「ああ」

 レオから視線を外し、部屋の奥にあるベッドの方へ向かう。レオは不思議そうな顔をしながらも、後ろをついてきてくれた。
 ベッドサイドにある小さなテーブルに受け取った箱を置く。

「今の俺には、受け取れない。だから……」

 そう言って、俺はベッドに腰掛けた。俯いて、小さく息を吐く。
 覚悟が揺らがないうちに勢いよく顔を上げ、目の前にいるレオを見つめて口を開いた。


「俺を抱いて!」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

転生したら親指王子?小さな僕を助けてくれたのは可愛いものが好きな強面騎士様だった。

音無野ウサギ
BL
目覚めたら親指姫サイズになっていた僕。親切なチョウチョさんに助けられたけど童話の世界みたいな展開についていけない。 親切なチョウチョを食べたヒキガエルに攫われてこのままヒキガエルのもとでシンデレラのようにこき使われるの?と思ったらヒキガエルの飼い主である悪い魔法使いを倒した強面騎士様に拾われて人形用のお家に住まわせてもらうことになった。夜の間に元のサイズに戻れるんだけど騎士様に幽霊と思われて…… 可愛いもの好きの強面騎士様と異世界転生して親指姫サイズになった僕のほのぼの日常BL

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

処理中です...