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「レオ兄様おかえりなさい」
向かいに座るアンリ様が、俺の後ろへ視線を向ける。俺が振り向こうとすると、アンリ様がにこりと笑いながら口を開いた。
「やだなあ、レオ兄様。そんなに睨まなくても何もしてないよ。レオ兄様を待つ間、ちょっとお話ししてただけ」
アンリ様の言葉に慌ててレオの方を見ると、レオは鋭い視線をアンリ様に向けていた。
「俺を待つ?」
「リョウさん、レオ兄様に会いにきたんだってさ」
アンリ様がそう言うと、レオは驚いたようにこちらを見た。
「リョウが、俺に会いに?」
「う、うん。レオと話したくて」
もしかして、迷惑だっただろうかと不安になり、レオの顔色を伺うように言う。
「そうか」
俺の予想に反し、レオは嬉しそうにふわりと微笑んだ。
「レオ兄様がそんな風に笑うなんて知らなかったなあ、僕」
「アンリ黙れ」
「あははっ、レオ兄様ったら照れちゃって~」
アンリ様は茶化すようにそう言うと、立ち上がり「またね」と俺に声をかけて部屋を出て行った。
残された俺とレオは、お互いに見つめ合う。
「……話、だったか。ちょうど良い、俺も渡したいものがある。こっちだ」
「え、ちょっと待って!」
レオはそれだけ言うと扉の方へ歩き出す。
俺は慌てて立ち上がり、レオの後を追った。
◆◇◆◇◆◇◆
階段を上がり、廊下を歩く。俺は、迷いなく進むレオの後ろを歩く。
レオはいくつ目かの扉の前で立ち止まり、扉を開けた。
レオの後に続き部屋に入ると、はじめに広々とした空間の真ん中で存在感を放つキングサイズのベッドが目に入る。
(うわすご……)
他にも、ソファーやテーブル、ドレッサーなど家具一つ一つがシンプルながらに高級感を漂わせている。
「レオの部屋?」
そう尋ねると、レオは「ああ」と一言返事をしながら、引き出しの中から小さな箱を取り出した。
「こっちに来い」
あまりの場違い感に、視線を彷徨わせながら入り口付近に突っ立っていると、こちらを見たレオに手招きさせる。
レオのそばに行くと、先ほどの小さな箱を手渡される。
「これは?」
「開けてみろ」
そう言われ箱を開けると、中には花の形をしたイヤリングが入っていた。
花びらを模った宝石がキラキラと輝いている。
(か、可愛い……)
「イヤリング?」
「ああ。これを見た時、お前に似合うと思った」
「こ、こんな高そうなの貰えない!」
いくら可愛くても、どう見ても高そうなそれを簡単に受け取るわけにはいかない。
「俺が送りたいんだ。受け取ってくれ」
返そうとしても、頑なに受け取ろうとしないレオに困り果てる。
恋人なら分かる。でも、今の俺はものすごく中途半端だ。こんなんじゃ、イヤリングを受け取ることは出来ない。
(せっかくここまで来たんだ。ちゃんと答えを出さなきゃ)
チャレンジあるのみと言っていたアンリ様の言葉を思い出し、覚悟を決める。
「話したくて来たって、言ったよね」
「ああ」
レオから視線を外し、部屋の奥にあるベッドの方へ向かう。レオは不思議そうな顔をしながらも、後ろをついてきてくれた。
ベッドサイドにある小さなテーブルに受け取った箱を置く。
「今の俺には、受け取れない。だから……」
そう言って、俺はベッドに腰掛けた。俯いて、小さく息を吐く。
覚悟が揺らがないうちに勢いよく顔を上げ、目の前にいるレオを見つめて口を開いた。
「俺を抱いて!」
向かいに座るアンリ様が、俺の後ろへ視線を向ける。俺が振り向こうとすると、アンリ様がにこりと笑いながら口を開いた。
「やだなあ、レオ兄様。そんなに睨まなくても何もしてないよ。レオ兄様を待つ間、ちょっとお話ししてただけ」
アンリ様の言葉に慌ててレオの方を見ると、レオは鋭い視線をアンリ様に向けていた。
「俺を待つ?」
「リョウさん、レオ兄様に会いにきたんだってさ」
アンリ様がそう言うと、レオは驚いたようにこちらを見た。
「リョウが、俺に会いに?」
「う、うん。レオと話したくて」
もしかして、迷惑だっただろうかと不安になり、レオの顔色を伺うように言う。
「そうか」
俺の予想に反し、レオは嬉しそうにふわりと微笑んだ。
「レオ兄様がそんな風に笑うなんて知らなかったなあ、僕」
「アンリ黙れ」
「あははっ、レオ兄様ったら照れちゃって~」
アンリ様は茶化すようにそう言うと、立ち上がり「またね」と俺に声をかけて部屋を出て行った。
残された俺とレオは、お互いに見つめ合う。
「……話、だったか。ちょうど良い、俺も渡したいものがある。こっちだ」
「え、ちょっと待って!」
レオはそれだけ言うと扉の方へ歩き出す。
俺は慌てて立ち上がり、レオの後を追った。
◆◇◆◇◆◇◆
階段を上がり、廊下を歩く。俺は、迷いなく進むレオの後ろを歩く。
レオはいくつ目かの扉の前で立ち止まり、扉を開けた。
レオの後に続き部屋に入ると、はじめに広々とした空間の真ん中で存在感を放つキングサイズのベッドが目に入る。
(うわすご……)
他にも、ソファーやテーブル、ドレッサーなど家具一つ一つがシンプルながらに高級感を漂わせている。
「レオの部屋?」
そう尋ねると、レオは「ああ」と一言返事をしながら、引き出しの中から小さな箱を取り出した。
「こっちに来い」
あまりの場違い感に、視線を彷徨わせながら入り口付近に突っ立っていると、こちらを見たレオに手招きさせる。
レオのそばに行くと、先ほどの小さな箱を手渡される。
「これは?」
「開けてみろ」
そう言われ箱を開けると、中には花の形をしたイヤリングが入っていた。
花びらを模った宝石がキラキラと輝いている。
(か、可愛い……)
「イヤリング?」
「ああ。これを見た時、お前に似合うと思った」
「こ、こんな高そうなの貰えない!」
いくら可愛くても、どう見ても高そうなそれを簡単に受け取るわけにはいかない。
「俺が送りたいんだ。受け取ってくれ」
返そうとしても、頑なに受け取ろうとしないレオに困り果てる。
恋人なら分かる。でも、今の俺はものすごく中途半端だ。こんなんじゃ、イヤリングを受け取ることは出来ない。
(せっかくここまで来たんだ。ちゃんと答えを出さなきゃ)
チャレンジあるのみと言っていたアンリ様の言葉を思い出し、覚悟を決める。
「話したくて来たって、言ったよね」
「ああ」
レオから視線を外し、部屋の奥にあるベッドの方へ向かう。レオは不思議そうな顔をしながらも、後ろをついてきてくれた。
ベッドサイドにある小さなテーブルに受け取った箱を置く。
「今の俺には、受け取れない。だから……」
そう言って、俺はベッドに腰掛けた。俯いて、小さく息を吐く。
覚悟が揺らがないうちに勢いよく顔を上げ、目の前にいるレオを見つめて口を開いた。
「俺を抱いて!」
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