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「……話があるんだけど」
俺の雰囲気から空気を察してか、レオは俺の言葉を静かに待ってくれる。
俺は深く息を吸い、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「今まで、隠してたことがあるんだ」
あと一言で全てが変わる。俺を見るレオの表情は、きっと別物になるのだろう。
レオの思いに応える事は出来ないというのに、それがなくなると思うと寂しくなるなんて、本当に最低だな俺。
「………………実は俺、男、なんだ」
ついに言ってしまった。レオがどんな反応をするのか見るのが怖くて、つい俯いてしまう。
「今まで黙ってて、ごめんなさい」
少しの間沈黙が流れる。ほんの数秒のことなのに、俺にはそれがとても長い時間に思えた。
周りの音が静まり返っていて、心臓の音や息遣いまで聞こえてしまいそうなほどだった。
「……凄いな」
「え?」
予想外の答えにこちらが戸惑う。俯いていた顔を上げると、レオはこちらをまじまじと見つめていた。
「男だなんて疑いもしなかった。正直、今改めて見ても女にしか見えん」
「だよね……ごめん」
俺がそういうと、レオは心底不思議だとばかりに小首を傾げた。
「何故謝る」
「だって、ずっと騙してたんだぜ?」
「別にリョウに騙そうという意思はなかったのだろう? 勝手に俺が勘違いしただけだ」
確かにそうだが、レオの前では努めて一人称を「私」にしたり、言葉遣いを気をつけてなるべくバレないようにしていた。
初めこそ勘違いされただけだったが、それでもその後はどう考えても俺が悪いのだ。
「なんでそんな風に、思ってくれるの?」
「リョウはいつもその姿でいるだろう? 仕事の時もそうだった。なら、俺を騙そうとしたわけじゃないのは分かる」
「それは、そうだけど。でも訂正しなかったのは俺だし」
「確かに、もっと早く教えてくれても良かったとは思うな」
「うっ……」
本当にその通りだ。きっと、あの時すぐに言わなかったのが全ての始まりだった。
「軽蔑したり、怒ったりしないんだね」
「その必要性を全く感じないからな」
「男が女装してるとか、気持ち悪いとは思わないの?」
「リョウはその辺の女よりも何倍も可愛いだろう。気持ち悪いわけがない」
レオはまっすぐとした瞳でそう告げる。
男だと分かった上で、まだ可愛いなんて言ってもらえるとは思っていなかった。
女だと間違われていた時よりも、数倍恥ずかしいな、なんだこれ……。
「男だって分かってても、そんなこと言ってもらえると思わなかった」
「リョウが男だろうが女だろうが、俺がリョウを好きな事は変わらん」
男だとバレたら、この関係は終わると思っていた。レオが好きだと言ったのは女のリョウだ。しかし、それが崩れてもなお好きだと、レオはそう言った。
(嬉しい、かも……いやいやいや、確かに女装とかキモい! って言われなかったのは嬉しいけどさ! 好きとかそういうのは別だし!)
一瞬絆されそうになった気持ちに慌てて蓋をする。
「リョウが男だろうと、俺はお前を嫁にする」
「ま、まだ俺レオを好きだなんて言ってないから!」
「ふっ……そうだな、まだ口説き落としているところだった」
そう言ったレオは、今までと何一つ変わらない笑みを浮かべた。
◆◇◆◇◆◇◆
「もうここで大丈夫。ありがと」
男だから大丈夫だと言ったが聞き入れてもらえず、結局今まで通りレオに家の近くまで送られてしまった。
お礼を言い歩き出そうとすると、レオに手を握られた。突然のことに足を止め、レオの方を向くと、するり、と指を絡められる。
「ちょっと……!」
離してもらおうとレオを見上げると、目の前にレオの顔があり目を見張る。
間近にあるイケメンの顔がそのままゆっくりと迫ってきて、つい反射でギュッと目を閉じてしまう。
チュッ
唇に温かいものが触れる。
軽く触れるだけの優しいそれは、ほんと数秒で離れていった。
(キ、キスされた!!?)
ほんの少し触れ合っただけなのに、触れた場所は熱いくらいに熱をもっていた。頰が熱くなるどころか、顔全体が真っ赤に染まるのを感じる。
(お、俺今普通にキス受け入れた!!? ちょ、まじか俺!!! 拒否しろよ!!)
テンパっている俺を他所に、レオは額にもう一度キスを落とし「またな」と言って去っていってしまう。
置いていかれた俺は、突然の出来事にキャパオーバーした頭を抑えてその場にうずくまる事しかできなかった。
俺の雰囲気から空気を察してか、レオは俺の言葉を静かに待ってくれる。
俺は深く息を吸い、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「今まで、隠してたことがあるんだ」
あと一言で全てが変わる。俺を見るレオの表情は、きっと別物になるのだろう。
レオの思いに応える事は出来ないというのに、それがなくなると思うと寂しくなるなんて、本当に最低だな俺。
「………………実は俺、男、なんだ」
ついに言ってしまった。レオがどんな反応をするのか見るのが怖くて、つい俯いてしまう。
「今まで黙ってて、ごめんなさい」
少しの間沈黙が流れる。ほんの数秒のことなのに、俺にはそれがとても長い時間に思えた。
周りの音が静まり返っていて、心臓の音や息遣いまで聞こえてしまいそうなほどだった。
「……凄いな」
「え?」
予想外の答えにこちらが戸惑う。俯いていた顔を上げると、レオはこちらをまじまじと見つめていた。
「男だなんて疑いもしなかった。正直、今改めて見ても女にしか見えん」
「だよね……ごめん」
俺がそういうと、レオは心底不思議だとばかりに小首を傾げた。
「何故謝る」
「だって、ずっと騙してたんだぜ?」
「別にリョウに騙そうという意思はなかったのだろう? 勝手に俺が勘違いしただけだ」
確かにそうだが、レオの前では努めて一人称を「私」にしたり、言葉遣いを気をつけてなるべくバレないようにしていた。
初めこそ勘違いされただけだったが、それでもその後はどう考えても俺が悪いのだ。
「なんでそんな風に、思ってくれるの?」
「リョウはいつもその姿でいるだろう? 仕事の時もそうだった。なら、俺を騙そうとしたわけじゃないのは分かる」
「それは、そうだけど。でも訂正しなかったのは俺だし」
「確かに、もっと早く教えてくれても良かったとは思うな」
「うっ……」
本当にその通りだ。きっと、あの時すぐに言わなかったのが全ての始まりだった。
「軽蔑したり、怒ったりしないんだね」
「その必要性を全く感じないからな」
「男が女装してるとか、気持ち悪いとは思わないの?」
「リョウはその辺の女よりも何倍も可愛いだろう。気持ち悪いわけがない」
レオはまっすぐとした瞳でそう告げる。
男だと分かった上で、まだ可愛いなんて言ってもらえるとは思っていなかった。
女だと間違われていた時よりも、数倍恥ずかしいな、なんだこれ……。
「男だって分かってても、そんなこと言ってもらえると思わなかった」
「リョウが男だろうが女だろうが、俺がリョウを好きな事は変わらん」
男だとバレたら、この関係は終わると思っていた。レオが好きだと言ったのは女のリョウだ。しかし、それが崩れてもなお好きだと、レオはそう言った。
(嬉しい、かも……いやいやいや、確かに女装とかキモい! って言われなかったのは嬉しいけどさ! 好きとかそういうのは別だし!)
一瞬絆されそうになった気持ちに慌てて蓋をする。
「リョウが男だろうと、俺はお前を嫁にする」
「ま、まだ俺レオを好きだなんて言ってないから!」
「ふっ……そうだな、まだ口説き落としているところだった」
そう言ったレオは、今までと何一つ変わらない笑みを浮かべた。
◆◇◆◇◆◇◆
「もうここで大丈夫。ありがと」
男だから大丈夫だと言ったが聞き入れてもらえず、結局今まで通りレオに家の近くまで送られてしまった。
お礼を言い歩き出そうとすると、レオに手を握られた。突然のことに足を止め、レオの方を向くと、するり、と指を絡められる。
「ちょっと……!」
離してもらおうとレオを見上げると、目の前にレオの顔があり目を見張る。
間近にあるイケメンの顔がそのままゆっくりと迫ってきて、つい反射でギュッと目を閉じてしまう。
チュッ
唇に温かいものが触れる。
軽く触れるだけの優しいそれは、ほんと数秒で離れていった。
(キ、キスされた!!?)
ほんの少し触れ合っただけなのに、触れた場所は熱いくらいに熱をもっていた。頰が熱くなるどころか、顔全体が真っ赤に染まるのを感じる。
(お、俺今普通にキス受け入れた!!? ちょ、まじか俺!!! 拒否しろよ!!)
テンパっている俺を他所に、レオは額にもう一度キスを落とし「またな」と言って去っていってしまう。
置いていかれた俺は、突然の出来事にキャパオーバーした頭を抑えてその場にうずくまる事しかできなかった。
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